第4話頑張ってる人が
二学期の中間テストも明けてクラスもひと息ついた雰囲気が漂っていた。まあ、すぐに文化祭やらいらいろと行事が控えているのだが。
留美子はいつ中間テストのときのお礼を言おうかと高橋くんの様子をうかがっていた。
ありがとう、高橋くん。あのあと張り詰めていた気持ちがほぐれて中間テスト乗り切れたわ。でもなんてお礼言ったらいいのかしらと。
高橋くんを観察していると、委員長の真壁真とよく話している。時々楽しく笑っている。
二人仲いいんだな、私も仲間に入れたらなあと。
それは留美子が掃除当番のときだった。
当番の子たちは知らないふりをしていつの間にか教室から消えていた。
ありゃ、みんな要領がいいわ。私だけ残して。それなら私も簡単にモッブ駆けして部活に行こうと、しんとした教室内で留美子はため息をついたとき教室の戸が開き「青井さん」と低い声がした。続けて「どうしたの僚」と可愛い声は真壁真だ。
留美子は突然に現れた高橋くんを意識しながら「みんな掃除当番さぼり」とポツンと言った。「じゃ、三人でさっさとすませよう」と静かな教室に真壁真の声がふわっと響く。
「え、いいの」
「早くすませようぜ、青井さんは部活なんだろう」と机を片づけはじめる高橋くん。
真壁真もモッブ駆けしはじめた。
「あのさ」と留美子はおずおずと二人に尋ねた、「二人仲いいんだ」と続けて言うと
真壁真は顔を真っ赤にして俯く。
高橋くんも黙々と机を片づける。
ありゃりゃ委員長、顔が真っ赤なんですけどと留美子の瞳はキラリと光った、高橋くんも黙ってるし、こりゃじゃましたかな。
でも高橋くんにはお礼言わなきゃ。
「二人仲よくどこへ行ってたのかしら」と留美子は続ける。
「職員室、学級日誌もっていってた」低い声で自然に答える高橋くん。
「それでさ」
「何」
「テストのとき」
「何、テストのときって」
留美子と高橋くんが会話し始めると俯きながらも聞き耳をたててる真壁真。
わかりやすい子と留美子は思いながらも話しを続ける、「消しゴム落ちたとき」「ああ、あのときか」「カンニングなんて言われて少し困ってたんだ」と言いながら少しと言った自分を後悔した、プライド高い系かな自分て
、本当は泣きそだったんだけどと胸のうちで自分に言った。
「そんなこと気にしなくても良いのに」
「でも、高橋くんがああ言ってくれたおかげで私嬉しかったんだ」と留美子は答えながらジト目で見てくる真壁真の視線を感じた。
「俺さ、頑張ってる人好きなんだ」とさらりと答える高橋くん。
「委員長もクラスのことで頑張ってるし、青井さんも夏休み頑張って部活してたんだろ」
いつもむっつりとしている顔を笑顔にしキラリと光る真っ直ぐな瞳で留美子を見つめる。
「そ、そう」と答えるが一瞬教室内を沈黙が支配する。「もうモップ駆け終わったわ」と真壁真の声に留美子はわれに帰った。
「じゃ、机もとにもどしてと」黙々と机を運ぶ高橋くん。その横で小さくて可愛い委員長も手伝う。不思議だ、なんかほっとする、二人の仲間になりたいと留美子は感じた。
「あの、あのさ、私頑張ってるよね」
「ああ、頑張ってるねテニス部」
「私もり、りょうて呼んでいい」
「ああ、頑張ってる人は好きだから僚てよんで」
委員長だけが黙々と机を運んでいた。
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