第2話真壁真
「おい」と低いがハッキリした声が満員電車のなかでした。175cmの目つきの悪い高校生がその体格にものいわせて満員の車内をかきわけて真壁真に向かってきた。
と、同時にサラリーマン風の若い男が知らんふりして満員のなかに自負の身体をおしこんで隠れて行く。
「たく、大丈夫か」と真の手を握り車内の壁側へ連れて行き真を壁ドンした。
「これなら大丈夫だ」
俯いて「ありがとう」と小さく小さく言うのが精一杯の真だった、顔がみるみる赤くなるのを隠せない。(お礼の声聞こえたかな、後でちゃんと言わなきゃ)
駅を出てさっさと歩きだす壁ドンしてくれた学生に真は追い付き広い背中に「さっきはありがとう」と思い切って言った。
「ごめん委員長、手握ったりして」と振り向く男の子。
「え、高橋くん」
「名前、覚えてもらってたんだ」と笑顔になる。その瞳が優しい朝日に照らされてキラリと光る。
真壁真は六月の第一日目、夏服に替わって
電車に載った日、触られてると感じた。いやだ、でも声が出ない、嫌だ嫌だと思いながも俯くしか出来ない、涙がこぼれそうになったとき「おい」と言う声とあっと言う間に壁ドンして守ってくれた高橋僚。
男子に奥手な真の恋の始まりだった。
身長こそ低いが可愛い顔だち、おかっぱ頭、そして低い身長に対しての胸の大きさがアンバランスにひきたてる。
性格は真面目で四月の委員長を決めるとき、
中学からの真を知る同級生たちが推薦した。
まあ、委員長を早く決めて自分たちは自由にしたいと思う者が殆どだったが・・・
「高橋くん本当、ありがとう」
「僚でいいよ、それにさ迷惑じゃなかったら毎日電車のなかで守ろうか」
さりげななく、自然に高橋くんは言う。
ええーまいにち、まいにち壁ドン・・・
まあ、このときの真は恋に恋する乙女だったのだが。
「やっぱ、目つきの悪い男じゃいやか委員長」
「ううん、お願いする」
コクコクと頷く真だった。
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