第131話 意味深な言葉
「目録士としてもね、蒼玉月期の神妃の様子については調査しているから、密かに君の行動や言動についても報告を受けている。その結果、これまでのところ不穏な情報は特にきていないわけだけど……。しかしだからといって、次の蒼玉月はどうなるのか正直分からない。君が神殿へ来る前、そうだな、子供の頃はどうだったんだい?」
「うーん……今と同じよ。少しだけ気分が悪くなることもあったけれど、困るほどではなかったと思う」
「ふむ……」
腕を顎に押し付け、ヘンデルは難しい顔で考え込んだ。
「これは私の、いや目録士としての勘とでも言うのかな。嫌な予感がするんだよ」
「ヘンデルどの、それは例の不穏な動きのことでしょうか?」
神妃解放党の存在を、エルヴィンは暗に示唆した。
「それもある。しかし、それだけじゃない何かが動いている気配がするんだ。イルマルガリータと彼女の何かを巡る陰謀とでもいうのか……」
ドキッとした。
きっとエルヴィンも、心中穏やかではないだろう。
ヘンデルは、まるでこれからフィルメラルナとエルヴィンがしようとする行動を、感じ取っているように思えてしまったから。
「まぁ、神妃の代替わりはお披露目も含め終わったわけだし、神脈についても問題ない。これから起こる何かに怯えていても始まらないわけだけどね。君たちもくれぐれも気をつけるように。個人の浅はかな行動で、国が揺らいだ歴史かあるのを軽んじないでくれ。自重してくれるのを期待しているよ」
そんな意味深な言葉を残し。
最後の紅茶を飲み干すと、ヘンデルはすっくと立ち上がった。
同時に、午後三時を伝える鐘の音が、聖堂から厳かに鳴り始める。
「さて、私はそろそろ戻らなくては。あとのことはよろしく頼んだからね。神殿騎士卿エルヴィン・サンテスくん」
ポンポンと軽くエルヴィンの肩を叩くと、物憂げな様子でヘンデルは部屋を出て行った。
「肝が冷えました」
「わたしも」
ふぅぅと、二人とも身体中の力が抜け切ったかのように、ディヴァンへと沈みこんだ。
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