第50話 自由の身
「公表すれば、君も晴れて自由の身だよ。デュラー家の者にでも、生き残りの者にでも会いにいけばいい。まだ取調べ中だがもうすぐ終わるから、父親へも会いに行けるだろう。ああ、ただし、自由に行動できるのは、原則この神殿内だけだがね」
外へは出られない。
父親との生活を取り戻すことは、もうできなくなる。
でも、それ以前に――。
「イルマルガリータ様は」
そう、失踪した本当の神妃はどうなるのだろうか?
少なくともフィルメラルナは、彼女が生きていると信じている。
あの衣装棚から出てきた紙切れだって、彼女が自分に宛てて、どこからか差し出してくれたものに違いないと思っているのだ。
「そう……本当に、まったく、こんなことは初めてでね。私たちも、この失踪はイルマルガリータのいつもの
「それは、わたしが……わたしの額に聖痕が現れたからなの?」
「いやいや。まぁ、それだけでは信じられなかった。さすがに痣の一つや二つ、東国では刺青なんて技術もあるようだし。イルマルガリータが失踪して神脈が乱れ出してから、その影響が少しずつ世界に起こり始めていたんだよ」
西の国境では雨が止まず橋が流され、村落が一つ丸ごと流された。
ずっと北のスノーリア帝国では、流氷被害が各地沿岸に起こり多大な損害を被っていたり、様々な影響が出はじめていた。
神妃を預かるこの神王国ロードスは、その責務から神妃の失踪の事実を公表できず、他国からの圧力に悩んでいたのだ。
「で、まぁ、今は結局、それらはすべて収まっているわけだけど。君の祈りが神脈を正したからだろう。そしてさらに先日、ハプスギェル塔の鍵を苦もなく開けてしまったわけで。さすがにもう、君を神妃と認めないわけにはいかなくなった。正直、あまりにもこの長い歴史の中で突飛な現象だったから、反対する者も少なからずいるんだけどねぇ」
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