72時限目「ドリアの陰謀【タウン壊滅計画】(後編)」
全てが、明かされた。
ドリア・ドライアという男の身勝手。その全貌を。
最終段階として、この街を乗っ取るだけに飽き足らず破壊する……クロードにとっての第二の故郷と全ての人間のつながりをも失わせ、生きる希望すら奪おうというドリアの計画を。
「クソッタレがッ!!」
ソルダは思わず医療施設であることを忘れて大声をあげた。近くにあった壁をもぶん殴ってしまった。
「そんなくだらねぇ理由で……クロードも皆も、そして市長さんもよぉッ……!!」
あまりの理由に怒りを隠せないでいたようだった。
ただ一つの愉悦の為に人の命を玩具のように弄び、そして用無しになれば破壊する。こんなにも不愉快な理不尽があるだろうか。
「この街から異常なほどの魔力が検知されている。あと数分で計画は実行されるはずだ」
ドリアとその部下の面々は既にこの街で仕掛けを施している。もしかすれば、今日中に動き出す危険性だってある。
エージェント達が動いている。それを嗅ぎつけば、証拠隠滅の為に計画を早める。ドリア・ドライアならやりかねないのだ。
「……強力には応じます。ですが」
住民達の避難。この街の危機を打破するべく、エージェント達の協力には答える。ブルーナはそう応答した。
「今、その彼の元に、」
「ああ、話は聞いていた。クロード君達の事もどうにかしてやりたい」
クロード達がその計画の全貌を知ったのかは分からない。だが、彼等があの男達と接触するのは間違いなく危険である。
「俺の話は終わった。街には俺の部下たちが話を通している最中だ。残りの援軍も後に到着する……だから、君は向かってやってくれ」
「……友人の事。御厚意、感謝いたします」
ブルーナは猟銃を握り、走り出す。
「俺も行くが、お前はどうする」
「……パパを裏切って、この街を陥れようとした……あの女がいるかもしれない」
マティーニはソルダと共に一歩踏み出す。
「これ以上、好き勝手にはさせたくない……市長の座は、僕のものだ! この街を護るのは、じき市長の僕の使命だろうが!」
「行くぞ!」
ソルダとマティーニの二人もブルーナの背中を追いかけた。
「これより住民の避難を開始する。それから……」
カルーアは数名の部下へと指示を送る。住民への避難。それともう一つ。
「“ロシェロ・ホワイツビリー”の保護へも向かえ!」
「!!」
聞き慣れた名前。
それに反応を示したのは当然……彼女の旧友であるモカニだ。
「彼女に何かあったんですか……!?」
モカニはカルーアに問う。
「……君は確か、ロシェロちゃんの友人だったっていう」
「モカニです。モカニ・フランネル」
既に、資料で調べていたからその存在は知っていた。かつて、巨兵の研究に加担していた旧友であり、現在は彼女と競い合うライバル的存在であると。
「……この街で増えた魔物の原因。そして、人間の病気に対する脆さ」
何故、モカニがロシェロの研究を妨害するようになったのか。その話は微かにだが、学会の方にも話が流れている。
“魔族側の巨兵の存在。それを公言する女子生徒がいる”と。
「“ゴリアテ”という存在の仕業だ」
事の全ては、モカニの言う通りの結果であったこと。
「それを理由とし、街ぐるみで魔物の研究をしていたとでっち上げ、街側の公言も待たずに計画を実行する……それが、ドリア・ドライアの描いたシナリオだ」
全ては、利用されていた。
ロシェロは評議会に対抗するべく反抗していた。だが実際は、全てを知っていた評議会の手の上でロシェロは転がされていただけ。
魔法研究の最高責任者である評議会。噂はあまり良いものではなかった。
その噂が……本当で。こんなにも卑劣で残酷な計画すらも企てる連中だとは思いもしなかった。
「ロシェロっ……!」
モカニは歯を噛みしめる。
「行っておやりなさい」
市長達の様子を見るべく、待機を指示されていたモカニ。
「君の大切な友達だろう?」
そんなモカニの背中を押したのは……彼女の唯一の理解者であるエキーラ。
この場に代わりに残る。エキーラはモカニにそう告げたのだ。
「先ほど言った通り、治療は行える」
計画の全貌。それと同時、市長達のウイルスを治療できることは既に説明している。
「こちらは気にしなくてもいい」
「……わかりました」
モカニは走り出す。
今まで遠回りながらも守り続けてきた友達の危機を、救うために。
「よし。治療班、避難班の二手に別れ行動を開始。後からやってくるノアールと他数名は、ブルーナ・アイオナス達の援軍へ向かわせる!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
無事、到着したエージェント達。
そして、クロード達の危機にも間に合った。ノアールの元には既に報告が通っている。
アカサの治療が始まったことも。クロード達を保護したことも。既に救いの手が間に合っていることも全て報告が入っている。
あとは、捕縛するだけだ。
目の前で悪事に加担しようとする……“悪党”を。
「ケッヒッヒ……」
サジャックは幹の上で不機嫌そうに笑っていた。
質問に対し、何の回答もしようとしない無礼なエージェント。まだ、年齢は成人にも満たない……大嫌いなクソガキに対して。
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