夢想

そんな日々の中で私は教師につかず一人でピアノに向かう日々をまた再開していた、習っていた間はまったくわけがわからなかったフランツリストの超絶技巧、何故か弾けるようになっていた。不思議とストレスから解消され、がんじがらめだったピアノの練習から離れて頭がすっきりしていたからかもしれないそのころ精神障害者として生きていくのを決めるのはまだ迷っていた、手帳を取って、もう立派な障害者なのだけれど、まだ福祉に頼っていきていくのを迷っていた。働けるうちは働きたい、そう思っていた。ドビュッシーのベルガマスク組曲をヘンレ版で買い、パシピエを無我夢中で弾いていた。私の持っているCDの美しいピアノの音色とは程遠い、音色だけど

かつては教師から否定された悲しい音色にしか過ぎないけれど、これがきっと私の全力なのだと思い知った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る