後日談②
寒い。
……寒い。
いくらなんでも寒すぎるのではなかろうか。
冬が、冬が酷いことをしているぅ……っ!!
そんな嘆きを心の内に止めつつ、「放課後休館します」という張り紙の出た図書室の前で、私は眉間に皺を寄せていた。
明日から修学旅行のため、今日は午前授業だった。そんな日にまで授業などしなくてもいいじゃないかと思うのだが、学校の決めた予定には逆らえない。
例の事情で例年と季節外れもいいところの修学旅行。三泊四日。地味に長いような気もする。
一応楽しみではあるものの、心配性な性格が裏目に出て、楽しみ:心配=4:6なのが今の心情である。
図書室でバスが来る時間まで暇を潰そうと思ったのだが、開いていないなら仕方がない。
バス停でひたすら待つか……と、思ってふと、例の蜘蛛を思い出した。
暇なんだ。行ってみるか。
うちの学校の屋上はアニメや漫画で見るような立派なものではなく、最上階の一部だけ屋根を取り払ったような造りなので、屋上の隣に職員室やらトイレなんかがあったりする。
近いところにいたのですぐについた。
雲6割くらいの、微妙な空模様。だが一応「晴れ」という区分に当たる天気だ。差す日は暖かい。
気温は低くて寒いことに変わりはないが。
蜘蛛を殺したところには、干からびた黒い小さな点がふたつへばりついていた。
前に来たのは2週間ほど前だったろうか。
足は無くなり、胴体は明らかに離れ、周りには体液の成分が酸化したような、劣化したような暗い黄色かオレンジのシミができていた。
前は綺麗に残っていたというのに、この変わりよう。
もはや蜘蛛の死骸ではなく正体不明の点ではないか。
ネイルプレートで蜘蛛を殺したときみたいに、とんとん、と突いてみた。
へばりついていて固い。
しばらくぼんやりしながら突いてみた。
——ら。
「あ」
ふたつの点が横にスライドしてしまった。
「…………」
点はスライドしただけでへばりついたままだ。
「…………」
帰ろう。
そんで修学旅行が終わったらまた様子を見に来てやろうか。
うん、とひとつ頷いて、私は踵を返した。
まだ5分くらいしか時間が経ってない。
屋上は日が当たっていたから少しはましだったが、バス停に日は差しているだろうか。日影になっている予感しかしない。
バスを諦めて母さんにでも迎えに来てもらおうか。
いや、どちらにしても待ち時間は変わらないだろうな。
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