第2話 流浪の蛇

部屋の中は消毒薬の匂いで満たされていた。

「はい、これでお仕舞」

奈尾はゆっくりと男を寝かせるとそのまま隣に腰を下ろす。

「お前、名前は?」

「……………灯白」

目を閉じたままボソリと答えた。

「灯白ね。で、家は?今日はそれじゃ帰れないだろうから伝達必要なら出すけど」

「……ねえよ。」

「え?」

「家もねえし家族なんかもいねえよ」

灯白と名乗る男は溜め息混じりに言う。

「…この森ん中でテキトーに寝てる。家がいらねえ訳じゃねえけど、無くても死にゃしねえ」

「じゃあ今夜はここで寝て行けばいい。俺も一人だし、好きなだけいてくれてかまわないよ」

「ふん」と小さく鼻を鳴らした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る