薬屋と用心棒

華野 夏壱

第1話 白蛇





「うわあぁぁぁっ!!!!」


大きな声が、森の中に小ぢんまりと建つ家から響いた。

「ビックリした…なんだよ、いつ入ってきたんだ…」

一人の男が血まみれの蛇を掴み宙ぶらりんにしながら文句を言っていた。栗色の髪をした男の名は奈尾といい、鼠の妖である彼は室内に現れた蛇に驚いたのである。

「驚かせやがって……こいつまだ死んでないよな?怪我してるけど真っ白だ。何の蛇か知らないけど血を拭いて焼酎に漬けてみるか…?」

そんな事を言っていると蛇の体がぐにゃりと歪み、みるみるうちに奈尾を優に越える体格の男へと姿を変える。

「うえっ!?ちょっ…」

急な出来事に尻餅をつく。喰われると思い咄嗟に腕で頭を覆うが、その体に感じたのはずっしりとした重みだけだった。男は痛みに顔を歪めぐったりと奈尾にのし掛かっている。

「お、重!!!」

べしゃりと後ろに倒れ込み男の下敷きになると、その衝撃で体に痛みが走ったのか、男が呻く。

「ぐ……くそ、誰が…焼酎漬けだ……」

「はぁ…!?な、何なんだよ…と、とりあえず手当てしないと……」

モゾモゾと体を捻りどうにか男の下から抜け出すと、奈尾は薬と包帯等を取りに急いだ。

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