第七話 『日課』

「··········ふぁ〜!」


零士は深い眠りから目覚めた

重いまぶたをゆっくりと開ける

あれからどれくらい 寝たのだろう

窓を見ると日が差し登っていた

窓から照らされる日の光がとても眩しい

窓から目を逸らし辺りを確認するが

白の姿は部屋のどこにもいない


どこいったんだー?白のやつ

置き手紙くらい書けっての!


そんなことを思ったその時だった


ガチャ


ドアの開く音がした

反射的に音がした方へ顔を向けると

白がドアを閉め、こっちに歩いてきて―

「あっ零士おきた〜? おはよ〜!」

と右手を振りながら言う


「おはよ〜·····どこ行ってたんだ?」


「少し散歩してたんだ〜

これからの日課にしようと思って!」

と笑いながら話す白


日課で散歩か〜

俺そういう日課とかまったく続かなくて

気がつけば辞めちゃってるってこと

日常茶飯事だったからな〜

唯一続いたことと言えば

ゲームのログインくらいだろうか

魔石の為だけに毎朝早く起きて

ログイン欠かさすしてたからな〜

·····忘れようあんな廃人時代の思い出·····

俺もこっちの世界で日課ってやつやってみるか


「日課か〜·····俺も作ってみるかー」


「どんなことを日課にするの?」

白が首を傾げながら聞く


「あーそうだなー·····剣の特訓·····とか?」


頬を人差し指で書きながら苦笑いする

まあそれくらいしかしたいことないし·····


「お〜いいねー!剣の特訓!

特別に僕が相手になってあげるよ!」


白が剣の特訓の相手?最初は冗談だと思った

あの白が剣を振るなんて想像もつかないからだ


「いや〜剣の特訓なんて

いつぶりだろ〜楽しみだなー!」



··········ん?·····どゆこと?···············



朝食を食べ終わり、零士と白は

エルニカ王国のとある高原へ向かった

そんな自然豊かな広々とした高原にて―


「零士!こんなものかい?君の攻撃は!」


そう言いながら零士を攻撃していたのは

あの大きな虫のモンスターを嫌がり

怖がっていた少女·····もとい白だった

白の攻撃の隙を見て攻撃しようとするが

ほとんどと言って良いほど隙がない

偶然攻撃出来たとしても当たり前かのように

全ての攻撃が綺麗に防がれてしまう

本当にいつものあの白なのかと

何度も疑ってしまう程に·····強い····

そして凄まじい剣技だ

全然戦ったことのない初心者の俺でもわかる

技能の武器操作があるから

強くても少しは平気だと思ったのに

まったく歯が立たない!

なら·····これならどうだ!


白との距離を少し離して刀を構える

「くらえ!飛影斬ひえいざん!」


魔力を込めて刀の波を作る技

その波動は強風を作り、相手を斬り付ける

まあバトルアニメで言う所の

·····飛ぶ斬撃の強化版である!

飛影斬を放った零士·····そんな彼が見たものは

何も動じずに波を待ち、剣を構える白の姿

その姿と威圧はいつもの少女ではなく··········

そして見えない速度で剣を振るう


雷霆らいてい!!」


刹那·····落雷の音が怒号の如く鳴り響き

剣を振るうと同時に稲妻が勢いよく走る

その衝撃で土埃は舞い、白が見えなくなった

土埃が消えると白が少しずつ現れる

飛影斬は跡形もなく消滅していた


斬撃を消すってどんだけ強いんだよ

これからも特訓付き合ってもらおうかな


「は〜!久しぶりに斬撃斬ったな〜!」


発言がチートキャラなんですが·····

白のそんな発言に驚く零士

白を背後に特訓で疲れたので

休憩に入ろうとしたその時

白から衝撃の言葉を聞くことになる


「体も温まってきたし!もう一戦しよう!」

耳を疑った

そして思わず白のいる方へ振り返る


「··········え?今なんて·····?」

苦笑いをしながら聞き返す零士

思わず顔が引き


まだ戦うの!?もういいでしょ!

たぶんもう一時間くらい戦ってるぞ?


しかもこの白とかいう

チートキャラ色々とおかしいのだ!

朝食を食べた後に即特訓!

一時間ぶっ通しでの戦闘!

凄まじいチート全開の剣技!

底知れぬ体力!!

こんなの性能的にアウトだろ!

たぶんこの調子だと魔法も強いんだろうし·····

ゲームだったらチートで即通報されるなこれ


「え?だからもう一回·····」

そう言いかけた白の言葉をさえぎり零士は―


「今日は疲れたからもうやめる

午後から予定があるし·····やるなら明日だな」

零士はそう言いながら刀を腰にあるさやに収め、

ゆっくりと宿のある方向に向かう

疲れたので一刻も早く横になりたかったのだ

体が汚れたので風呂にも入りたい·····


俺まず運動とかあっちの世界で

あんましなかったし、

学校の日と遊ぶ日以外ずっとネットだったし

唯一の運動って体育の授業と

学校の登下校だけだったし·····

さすがに一時間連続の運動は

元ニート(仮)にはキツい

こっちではしっかりと体力付けないとな

てかなんであいつあんなに素早く動けるんだ?

あれも白の技術なんだろうか

まあ数千年生きてるなら納得はいくか


そんなことを思っているとも知らず

白は後から走って零士を追いながら叫ぶ


「え〜!まってよー!零士ー!!」


こうして零士は日課として

剣の特訓を手伝ってもらい

剣術を白に教えてもらうことになった

白の声は何も無い広い高原に

どこまでも果てしなく響き渡る

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