第六話 『お風呂』

恋愛アニメ

·····それは男の子と女の子があることを

キッカケに恋をして付き合ったり

キャッキャウフフなことをする

とても男の子が羨まs―ゲフンゲフン

けしからんアニメである


そんな恋愛アニメを

見たことがある男子であったら

一度は見たことがあり!憧れるものがある!

そう!それこそ『ラッキースケベ!』

偶然にエッチなシチュエーションに

なることを指すこの言葉だが

この現象がアニメや漫画で起きた時

一度はこんなことを思ったことはないだろうか

『いや絶対こんなこと起きないだろ』·····と

当たり前である 現実で起きるはずがない

これはアニメや漫画·····

言わば創作物だから成り立つもの

仮にこれが現実で起きたら奇跡だ

誰もがそいつを羨むだろう·····幸運ラッキーだなと

ではこれが現実に起きてしまったら

一体どうなってしまうのだろうか

これはそんなラッキーが起きてしまった

一人の幸運児ひがいしゃのお話である



長旅が終わり、念願の宿を見つけ

部屋で "ほっ" と一息つく零士と白

白は疲れきってベッドの上で

横になってうずくまって眠ってしまい

零士は今までの旅の汚れを落とすために

風呂場の横にある脱衣場へ向かっていた

何日も前からずっとお風呂へ

入りたかったから地味に嬉しい零士

さすがに何日も入ってないと

体もかゆいし臭いだろうし·····


「早くお風呂入ろう·····」

は〜!やっとお風呂に入れる!

汗とかもかいて気持ち悪かったし

この宿が風呂付きで本当に良かった

しかもこの宿専用の寝巻きもあるし·····

もうホテルとか旅館のたぐいだなここ


そんなことを思っていると脱衣場へついた

靴を脱ぎ、靴下 ズボン 上着 Tシャツ·····と

次々と脱いでいく零士

肌の見える部分が徐々に増えていく

最後の下着パンツを脱ぎ、

それを奥のカゴにいれ

横にある風呂場の電気をつけ扉を開ける


中に入ってみると浴室はカビ一つもなく、

隅々まで掃除がされており

文字の通りピカピカだった

床のタイルが輝いて見える


どこまで綺麗に掃除をしているんだこの宿は·····建物の外装以外····


掃除をしている人に感謝の一言しかなかった

汚れているのは生理的に嫌だからだ

だから正直言うと洞窟とかも早く出たかった


「は〜気持ち〜!!」

シャワーで浴びているお湯がとても温かい

久しぶりのお風呂だったせいか、

とても気持ち良く感じた


体の汚れがどんどん落ちていく

そしてシャワーで浴びている間に

浴槽にお湯を溜めておく

湯船に入るためだ


そういえばこのお湯を出す機械?

ここでは魔道具って言ったらいいのかな?

なんて言う名前なんだろ

あっちの世界でも考えたこと無かったな

まずどういう原理なんだ?


そんなことを考えていると

お湯が溜まり終わった

それと同時にシャワーも浴び終わった


バシャーン

湯船に入り一息つく零士


「は〜最高〜!」


全身を温かさと気持ち良さが包み込む

体が気持ち良さで脱力してしまう

思わず声を出してしまった

浴室は等間隔の滴の音以外何も聞こえなかった


気持ち良さにひたっていること五分

浴室は滴の音一つない静かな空間だった

おっとこれ以上浸かっているとのぼせちゃう


バシャーン

そう思い湯船からゆっくりと出る零士

それと同時にお湯の揺れる音が浴室に響く


それと同時に浴室の扉を開けると

そこには『えっ?』という顔で

こちらを見ている白の姿があった

零士は今まで考えたことが消え、思考が止まる

零士と白の時間は止まった

浴室から脱衣場へと白い湯気が立ち上る·····


零士が白の方を見ると

いつも着ているパーカーは脱いでおり

下着ブラジャーはもう既に脱いだのか無く上裸

アレが·····角度的に·····見えない·····

そして今まさに下着パンツを脱ごうとしていた

白は氷のように固まっていたが

やっと状況を理解出来たのか

瞬時に顔を赤らめ、大きな声を言った


「いつまで見てるんだー!!!!!」


浴室に響き渡る白の声

そして言われた瞬間零士も正気に戻り

浴室に急いで戻り勢いよく扉を閉める

腰が抜け、扉にもたれながら座る

白と同じく顔を赤らめる零士

未だに状況が掴めない二人だった



時はさかのぼること十数分前·····


零士が風呂に入って十分程が過ぎ

静かに湯船に浸かっている頃

白は軽い眠りから覚めていた

重いまぶたを開いて

寝起きの体を起こし、辺りを見回す

·····零士の姿はどこにもない


「零士〜? どこ〜?」


·····返事がない·····

それだけじゃない

返事どころか物音一つしなかったのだ

白にとってその空間はとても不気味に感じた

そして零士はどこに行ってしまったのだろうか

そんな疑問が頭に浮かぶ


「なんか零士も居ないみたいだし·····

体も汚れてるからお風呂に入ろうかな〜」


"よく寝たな〜" と思いつつ立ち上がり

白は脱衣場へゆっくりと向かう

脱衣場へ着くと、風呂場の光が

少し漏れていることに気がついた


"なぜついているんだろう?"


そんな疑問を抱きながらも

風呂場に耳をすませてみる

·····が、風呂場からは音はしない

零士が入っているかもとも思ったが

零士が来ていた服は

部屋を軽く見る感じ見当たらない


体も汚いし、零士も居ないし·····

このままお風呂に入っちゃおうかな〜


そんなことを思ってしまった白·····

·····だが白は知らない·····

脱衣場の奥のカゴに零士の服があることに·····

そんなことも知らずに白は服を脱ぎ続ける

お気に入りのパーカーを脱ぎ、

インナーを脱ぎ、下着ブラジャーを脱ぎ·····

残りは下着《パンツ》だけになった

それを脱ごうと下着パンツに手にかけたその時


バシャーン

貯める水が何かによって動いた音がした


その瞬間、白の思考と動作が全て止まる

まるで時が止まったかのように·····

だが一瞬で意識が戻り、

この状況が色んな意味で危ないことに気づく

すぐに服を着ようとしたが、時すでに遅し

驚いた顔をしながらも少し顔を赤くして

こちらを見ている零士とご対面してしまう

これがこの事件の全貌である


そして·····現在いまに戻る


零士は浴室で、白は脱衣場で

扉を壁にしてもたれながら座り

顔を真っ赤にしていた

音が何もしない空間で彼らは体を丸める

そして零士は白の裸を

少し見てしまったことに罪悪感を覚えてしまう


顔を上げ、零士は―


「し、白····· ごめん·····悪気はなかったんだ!」


ドア越しではあるが、冷静に·····真剣に·····謝る

座っている床がさっきよりも

とても冷たく·····とても固く感じた

少し間が開き·····白が答える


「·····大丈夫だよ!気にしないで!

それに·····ほら!お互い様じゃない!」

気を使いながら『大丈夫』と言ってくれる白

そう言ってくれるのはありがたいが心が痛む

まさか女の子にこんなことを言われるなんて!


「本当にごめんな·····白·····気をつけるよ

お詫びと言ってはなんだけど·····

今度一つ言うことをなんでも聞くよ!

どんなことでも一つ聞いてやる!·····なんて」


もう一度謝った零士

少しでも恥ずかしさと罪悪感を忘れたかった

ので笑いながらさっきまでのことを誤魔化した


自分ながらこんなことをするのは情けない

·····このまま引きずっててもしょうがない!

切り替えて前を向いていこう!


そんなことを心の中で決意すると白は―


「じゃあいつか零士にお願いを聞いて

もらおうかな〜! 楽しみに待っておくね!」


笑いながら····楽しそうに答える白

それに『おう!』と答える零士

本当に白は優しいんだな〜

俺もあいつみたいにもっと優しくならなければ

そう感心していると白は―


「じゃあ僕は部屋で待ってるから

着替え終わったら来てね〜!」


そう言って脱衣場から出る白

少し足音が早かったな

小走りで出たのだろう·····着替えるか·····


体をタオルで念入りに拭き

ドライヤーらしきもので髪を乾かす

これも生活魔法か·····便利だな


というかこれって絶対俺と同じ世界から

来たやつが作ったやつだろこれ

絶対チート能力持ってるじゃん!


そんなことを思いながらも

無言ですぐに着替える零士

脱衣場から出て部屋へ向かう

部屋に着くと白がベッドに座って待っていた

足を前後にぶらぶらさせ、ボーっとしている

遠くを見つめており、何かを考えてる様だった


「白〜上がったぞ〜!入ってこ〜い」


零士が大きな声でそう言うと

白が"ビクッ"っと反応し、こちらを向いて―


「もーびっくりさせないでよ〜!」

と驚いた表情でこちらをみて言う白

あっ意外と怒ってらっしゃる


「ごめんごめん」

笑いながら謝る零士

まさかそんなに驚くとは·····


ベッドから立ち上がって白は―

「じゃあ行ってくるね〜!」

と元気よく言い、脱衣場へ向かう


零士は窓際へ向かい 窓から外を見ていた

日はとうの昔に沈んでおり

街の光が暗闇を照らしていた

その光景はとても幻想的で

まるで異世界にいるようだった

·····あっ異世界だったわここ


夜景を見たあとにベッドに腰掛ける零士

白が浴びているシャワーの音が聞こえると

体の力を抜いて倒れ込み

後ろのベッドに仰向けで大の字に寝転んだ


これから二人で生活するのか〜

住むと決めたとはいえ、

さっきのはやっぱり恥ずかしい

しっかりと生活できるのだろうか

あんなことはもう無いようにしないと·····


そんなことを思っているとまぶたが重くなり·····

いつの間にか零士は深い眠りについていた

小さな寝息を部屋に漏らす


風呂から上がって体を拭き、新しい服に着替え

綺麗な白髪はくはつを乾かして

ゆっくりと部屋に戻った

するとそこには静かに寝ている零士かいた

零士の寝顔を覗き込む白


そしてそんな零士に一言·····

白は微笑みながら目を輝かせて言う


「おやすみ·····零士」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る