第五話 『宿探し』
長い洞窟、広い森を抜け
やっとの思いで彼らにとって最初の国
エルニカ王国に着くことが出来た零士と白
そこはたくさんの人々が賑わい
いくつもの出店が連なり
中世のヨーロッパのような建物がある
零士が漫画やアニメなどで憧れた
世界そのものであった
そんな憧れた世界に零士は興味津々
ものすごくテンションが上がっていた
『やっときたー!異世界の国!
やっぱり異世界はこうじゃないと!』
『まずは宿探しだね 何軒か回ろうか!』
元気よく宿探しの提案をする白
零士は頷き、白と共に宿探しへ向かった
にしても俺の気のせいなのだろうか
白も少しテンションが上がっている気がする
まあやっと休めるんだし
テンションも少しは上がるか
一件目の宿に向かう道中
たくさんの人が賑わっている中
俺はあることが気になった
『そういえば白、まさかだと思うけど
この国のお金もってないとかないよな?』
俺は少し疑いながら白に聞いた
そんなあるある展開はごめんだ
ここまで来て、お金がないとか
言われたら本当に萎える
どれくらい萎えるかと言われれば
明日提出の宿題をした後に
何ページか確認したらする範囲が
違った時ぐらい萎える
·····わかるかなこの例え·····
そんなこんなを考えていると
白が少し怒りながら言った
『さすがに僕もそこまで抜けてないよ!
馬鹿にしないでー!お金もないのに
宿探しを提案する僕じゃないよ!』
胸を張って所持金があることを伝える白
おーさすが白 準備万端だな
にしても良かった!本当に良かった!
これで萎えずに済みそうだ
心の中で白を褒めつつ、安心する零士だった
そんなしょうもないことを考えていると
一件目の宿に着いた
三階建てだが少し小さい宿で
外装は古くも新しくもなかった
早く休みたいから早く決めたいなー!
ガチャ
『いらっしゃいませ!』
扉を開けると元気が良い女の人の声がした
声がする方へ顔を向けると
カウンターに二十代くらいだろうか
白い服に茶色のエプロンを着た女性がいた
女性の元に向かう零士と白
零士は向かいながら店内を見ていた
内装はだいぶ丁寧に掃除されている
床や窓がとても綺麗だ
『初めまして!私の名前はエマと申します!
どのような宿をお探しですか?』
自己紹介をしてどんな宿を
探しているのかを丁寧に聞いてくるエマ
『そういえば白、部屋は一つでいいのか?』
零士がそう言ったことを聞いた途端
急に顔が赤くなる白
『えええ!? 部屋一つにするの!?』
震えた声で俺が言ったことに驚く白
ものすごく慌てている
その行動に疑問を持つ零士
『う、うん·····一つにしようかなって思ってる
というかなんでそんなに驚いているんだ?
一つの方がお金もかからないし
そっちの方が良いかなって思ったんだけど
俺と一緒の部屋は嫌だったか?』
ー自分と同じ部屋が嫌だったのではないかー
そう思い始める零士。少し悲しくなった。
だがしかし、それを全力で否定する白
『違う!違うよ!ただ·····』
ただ·····?何かを言いかける白
『ただ·····僕と同じ部屋って
抵抗ないのかなって思って·····
零士が大丈夫なら僕も大丈夫·····だけど』
ものすごく恥ずかしそうに言う白
そっぽを向いて顔を隠してしまった
·····あっ!そうだ!
白は女の子だった!!そうだよ!
俺めっちゃヤバいこと言ってるじゃん!
場合によっちゃセクハラだぜこれ
えーどうしよ·····こうなったら
もう押し通すしかない!
『俺は大丈夫だし·····部屋一つでいいよね?』
冷静を装い、部屋を一つで借りよう!
もう後戻りはできない!
こうなったらこの生活に慣れるしかないのだ!
『う、うん、わかった·····じゃあそれで·····』
まだ恥ずかしそうにしている白
やめてくれ!俺まで恥ずかしくなる!
せっかく冷静を装ってるのに!
『まあということで·····
二人一部屋ってありますかね?』
話を戻してエマに聞く零士
エマの顔を見ると少し気まずそうにしていた
あなたまでそんな顔をしないで!
『·····あっはい!それでしたら·····
こちらの部屋はどうでしょう!』
一瞬遅れて返事をし
部屋の間取り図を見せて提案をするエマ
エマに見せられたのは、
シングルベッドが二つあり
風呂もトイレも完備している
まあまあ広めのワンルームの間取り図
値段は一週間で銀貨五枚だった
おお!これいいんじゃないか?
値段は安い方だと思うし
部屋はそこそこ広い!ベッドも別れてる!
風呂もトイレもある!
というか今更だけどこの世界って
トイレも風呂もあるんだな
これも生活魔法のお陰なのかな?
そんなことをふと思う零士だった
『白 これで良くないか?
俺的にはいい部屋だと思うけど』
ここに決めないかと提案する零士
他にも回ろうと思っていたが
一刻も早く休みたかったのだ
『う、うん!ここにしよう!』
恥ずかしくなくなったのか
慌てることも無く元気に返事をした
良かった·····こっちの方が落ち着く·····
『じゃあここでお願いします!』
『かしこまりました!
滞在はどれ程されますか?』
滞在時間かー·····
·····一ヶ月くらいでいいかな?
『じゃあ一ヶ月で』
まあこの国に長居はしそうだから
とりあえずという気持ちを込めて決めた
『かしこまりました!
·····では金貨二枚を頂きます!』
金貨一枚=銀貨十枚って言ったところか
わかりやすくて助かる!
白が金貨二枚をエマに渡し
零士達は部屋の鍵をエマにもらった
鍵の札には"IV"の番号
四番の部屋に行けばいいのね
りょーかいっ!
『ではごゆっくりどうぞ!』
笑顔と元気の良い声で零士達を見送るエマ
部屋へ向かおうとする零士と白
ふとめに入った案内表を見ると、
零士達の泊まる部屋は
二階の一番奥にあるらしい
カウンターの少し右にある階段を上った
階段の見た目とは裏腹にしっかりとしており
木の軋む音が鳴る事もなかった
二階に着き、奥の部屋へ向かう
部屋に入ると綺麗に掃除された部屋があった
埃が一つも落ちておらず、驚いてしまった
開いた口が塞がらないとは
まさにこの事を言うのだろうと思った
どうやらこの宿は当たりだったようだ
零士は奥のベッド
白は手前のベッドにダイブをして寝転がる
『は〜疲れたー!!』
ため息をつき安堵する零士
やっとベッドで横になることが出来た
『本当にね〜! 疲れたー!!』
零士の発言に共感し、同じく安堵する白
零士はベッドから起き上がり窓から外を見る
日は落ちかけ、夕日がとても美しく見えた
少しの間釘付けになり、ふと我に戻る
振り返って後ろを見ると
白は
長旅で疲れていたのだろう
今は静かに寝かせてあげよう
そう思い静かに立ち上がった
そして零士は向かった·····風呂場に
しなければいけない事があったからだ!
風呂場ですることと言えば一つしかない!
そう·····入浴だ!!
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