人という生き物とは




 水溜りの残る雨上がりの路地を、男が息を切らしながら走る。その後ろを■■■■■の女が歩いて追う。

「なんでだよ!昔はよかったんだろ!俺はただ……」

 壁に追い詰められた男は半べそをかきながら女を見る。

 女は逃げ場などないと言わんばかりに、男の右脇腹辺りの壁に足を立てる。

「昔は昔、今は今。ダメなものは……」

 男の右肩に棒が押し当てられ、男の顔が引きつる。

「ダメなんだよ」

 押し当てられた棒から光が放たれると同時に、男の悲鳴が響いた。


 二●●●年 医療技術の進歩により人工子宮による発育、誕生に成功。


 二●●●年 人工子宮の安全性がほぼ確実とされた。これにより、■■■■■による感染症、■■■■■への負担軽減の為、人工子宮が推奨された。


 二●●●年 ■■■■■の抑制、■■■■■の安全面、健康増進など様々な理由が重なり、■■■■■、手や機器などを使った■■■■■を除く、

■■■■■が法律により全面禁止とされた。


 同年 経歴、犯罪行為は勿論、■■■■■の有無などを管理する為、出生時に記録チップの埋め込みが義務化された。これに伴い、駅や役所、■■■■■や店などあらゆる公共施設の出入り口にスキャナが設置された。

 これらを管理、運用する為、内閣府において【管理庁】が創設された。


「お疲れ様です」

 支部の事務局に相棒である東海林(しょうじ)さんと戻れば、みんな外に出ているのか人は疎らだ。まぁ、この時間なら当然か。


「思ったより早く終わったな」

 そう言って東海林さんは自分の席の椅子にジェケットを掛けて、どかりと座った。

 五〇代の中頃と聞いているが、多少髪がグレーがかってる程度で、同年代の人に比べれば体も大きくてガッシリしている。見る人によってはイケオジ、という部類なのだろう。

「お疲れさん」

 そう言って部屋の中央、窓際に座る課長が手を振る。

 課長は最近お腹が気になるお年頃らしい。

「おう」と手を上げて挨拶をする東海林さんとは同い年で同期だった筈だ。こうも違うのか、なんて思っていないぞ。

 東海林さんの隣の自分の席に座り、折り畳まれていたパソコンを起動させる。

 少し待てば、立ち上がったそれを目的の画面にする。

 その最中、後ろから衝撃を感じた。

 いつもの事だが。

「六郷(ろくごう)ちゃん、おっかえり♪」

 そう言って後ろから抱き付いてきた軽そうな男は一応、先輩である。

「お疲れ様です、仁村(にむら)さん。暑いので即刻離れてください」

「六郷ちゃん、最近対応が女王様に似てきてない?」

 そんなもの知らない。四年も付き合っていれば、当然慣れる。多少、仁村さんの相棒である女王様――水木(みなき)さんのアドバイスもあるが。

「千護(ちさね)、俺の分の……」

「はい、東海林さん分も書いときます」

「えぇ!いいなぁ。六郷ちゃん、俺の分の報告書も……」

「知りませんから、出来ませんよ。そういうのは、水木さんに言ってください」

「そうね、やらないけど」

 その言葉と同時に、仁村さんの頭を片手で鷲掴み、私の後ろの席に引き摺って座らせたのは、■■■■■、水木さんだ。仕事の出来るカッコいい女性って感じに実は憧れている。




【サンプルここまで】

※作品は検閲されている状態です。巻末に未検閲の完全版を収録しております


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