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 帰り道はあたしが運転させてもらうことになった。あたしはペーパードライバーなので、智子も恵子もおののいていたが、むりやり恵子からハンドルを奪った。

「……マニュアル車やで。ほんまに運転できんの?」

 後部座席から恵子が話しかけてくる。しっかりとシートベルトをかけて身体を堅くしているのがルームミラーに見える。

「あたしはマリオカートでババアに勝ったことがあるんですよ」

 ゴーストだけど。あたしの前には、確かにババアのゴーストが見える。ずっとそれを追いかけていた。これからも追いかけていく。追いつけてないから、追いつけるまで、あたしは走り続ける。生き続ける。

「ヒアウィゴー!」

 あたしは思い切りアクセルを踏んだ。クラッチのタイミングが合わなくて、思い切りエンストした。ギアが焦げ、草の匂いがする。揺れなくても人生の意味は分かる。エンジン音が消えて、まわりはとても静かだった。青い海のうえをましろいカモメが弧を描いて飛んでいった。やがて車内には熱がこもりはじめた。このクソ夏を、あたしはパーフェクトワールドだと思った。智子が笑っていた。恵子が泣いていた。あたしは、祈っていた。

 夏は去る、秋はまだ来ない。そのまんなかでつぶやく。バイバイ、パーフェクトワールド。ババアが望んだ「つおいこ」を、どうか、愛してください。

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