第10話 荷解き作業

 部屋でずっと胡坐をかいて座る俺。

 次々と部屋に運ばれてくる段ボール箱。


「総ちゃんも手伝ってよぉ」


 姫川はせっせと自分の荷物を運んでいる。


「俺は納得してないからなっ」

「一人より絶対に楽しいって」

「……」

「良い事、いーっぱいしてあげるよぉ?」

「ちっ、うるさいっ」


 そう言いながらも姫川から荷物を受け取り、手伝い始める。甘やかし過ぎだろうな。


 一通りの荷物を運び終え、これから荷解きが始まる。もうすぐ夕飯時だというのに。


「なあ、疲れたから飯にしないか?」

「あっ、そうだね。何でも食べたいもの言って?」


 昨日のカレーは旨かったが、二日連続となると。

 荷解き作業を残している為、手早く作れる物を言う。


「卵かけご飯で良い」

「……それ料理って言えるの?」

「ご飯を炊いて卵を落とすんだから料理だろ」

「親子丼にしますっ」

「えっ」


 姫川の意見が通された。まあ、俺は親子丼の方が嬉しかったが。


 料理を作っている間に、運ばれた段ボールの個数を数える。合計四つ。

 多い方か少ない方か分からない。

 段ボールの外面には何の文字も明記されていない為、中身が何なのか想定できない。恐らくは衣類や電気モノだろう。

 まあ、俺の側の衣類が少ない為、収納スペースには困らない。


「出来たよぉ~」


 二人分の親子丼が運ばれてくる。


「おおっ。店で出てくるヤツみたいだな」

「褒められてますっ。私、褒められてますっ」

「……。じゃあ、食って良いか?」

「どうぞ」


 いただきますと唱え、口に頬張る。やはり、見た目通りの絶品だ。

 姫川と同居するのは不本意だが、食事には困る事はなさそうだ。今の言い方では家政婦のように聞こえて申し訳ないが。


「やっぱ、お前は凄いよ」

「もっと褒めてぇ~。褒めたらいっぱい何か出るからぁ~」

「何が出るんだよ?」

「愛っ!」

「……」


 目をキラキラさせて言ってくる姫川を前にして、怒鳴る気は失せた。良く馬鹿正直に本音を言えるな、と感心する。


 夕飯を食べ終え、荷解きの作業に入る。


「あっ、総ちゃんはそっちの段ボールを整理して」

「おう」


 姫川から指示された段ボールを体の前面に持って来て、ガムテープを外す。

 中を見ると、上着やスカートが入っていた。


「俺の押し入れにスペースがあるから、そこに入れるぞ?」

「はーい」


 上から順に取り出し、押し入れへ運ぶ。途中の服を持ち上げた時、


「――ッ!」


 服の下から下着が顔を覗かせた。


「おっ、そっちは下着の入った方だったねぇ~」

「お前っ。知ってて渡しただろっ」

「てへっ」

「てへっ、じゃねえよっ。これは自分で仕舞えっ」

「はーい」


 段ボールの中からどんどん下着が出されていく。俺の男部屋が下着で埋め尽くされようとしている。


「おいっ。どんだけあんだよっ」

「ちっ、ちっ、ちっ。女の子は下着が命」

「歯が命、みてえに言うんじゃねえっ」

「ねえ、これなんてどう? レースが付いてて可愛いでしょ?」

「……」

「こっちは透けてるんだあ」

「さっさと仕舞えよっ」


 笑顔で仕舞っていく姫川。


 そんなこんなで、ようやく作業は終わり、部屋が綺麗になった。

 ふと見ると、テーブルの上にノートパソコンが置かれている。


「お前、パソコンできるのか?」

「うん。ネットショッピングするから」

「へえ、ハイテクだな。俺は苦手だ」

「えっ、男の子の日はどうするの?」

「はあ!? なんだそりゃ?」


 手を口に当ててムフフな笑顔で、


「あんまり溜めると体に毒だよ?」

「はっ。うるせえっ!」


 それが、そっち系の事を意味している事に気付く俺であった。

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