03 未柑(みかのん)

「こうやってさ。あと何回。帰れるかな。四人で」


 詩胡しこ。張り切ったような、笑顔で笑う。


 綺麗な顔だと、思う。


「いつでも帰れんだろ。四人でさ」


 逸可いつかが、しこちゃんのパーソナルスペースに踏み込んだ。ばかめ。蹴られるぞ。


「いてえな、おい」


 ほら。蹴られた。


「女子にきやすくさわんな。ころすぞ?」


 詩胡がしこしこ威嚇している。口に出して言いそうになって、言葉を飲み込んだ。思春期の女子にそういうことを言うと。間違いなくきらわれる。


「まあまあ。生理なんでしょ」


 けど、結局生理とか言っちゃう。だめだなあ、あたしは。ほら。ホルモンバランスが人と違うから。


「みかのん。だめでしょ。女の子がそういうこと言っちゃあ」


 まあ、女だけども。ホルモンの関係で、わりと男みたいな精神構造してるよ、あたし。


「いいっしょ。この四人なら別に」


 しこちゃん。あなただけが取り残されてるのよ。あたしたちは。もう。一線を越えたから。


これは刺激が強すぎるので言えない。口が割けても言えない。


「友達だよな。あたしたちさあ」


 かわりに。いっちゃんとにいにいの肩に腕を回して、絡み付く。


「俺はそうやって、友達っていちいち口に出して確認するの、あんま好きじゃねえなあ」


 いっちゃん。言外に、友達の関係じゃねえだろって伝えてくる。


「どうせあれだろ。言わずとも分かる、みたいなのが好きなんだろ。にいにいはお見通しだぜ」


 にいにい。肩を組むかわりに、腰に手を回してきた。さては色々溜まってるな。


「なんかさあ。格好つかないじゃん」


 いっちゃん。格好いいよ、あんたは。今は口に出せないけど。


「なんだなんだ。あたしとおともだちじゃ不服かあ?」


 かわりに、いっちゃんの頭をわしわしして、愛情表現。大好きだぞおまえら。


 にいにいは腰に手を回したまま。


「わたし。先帰るっ」


 しこちゃん。走り出した。


「ほら。みかみかが俺たちにボディタッチするからだぞ」


 いっちゃん。いつもの、格好いい表情に戻る。


「にいにい。耐えられる?」


 にいにい。ぎりぎりなのかもしれない。表情が蒼い。


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