第82話 薨去(こうきょ)
チヨは先に
しかし、巨大シーサー化した白虎には全員で乗ることができたので、この場から逃げることができそうだ。
「逃がさんぞ!」
「わうーーーー!」
白虎は自ら
舜天はまたも向かって来ようとしていたが、
「行かせてやれ。どうせ、
「
その時、気絶していた
「ワシなんぞが死んでも、王という地位は国と共に次の世代に引き継がれ、存続し続ける。
「ふん。死にぞこないが」
「白虎、全速で首里城に向かってくれ!」
白虎が全速力で走ると、俺の
「ヤバイ! 俺のセジがだんだん減っている。白虎に吸われているみたいだから、この減り具合だと首里城までもたないかもしれない」
「私たちは
首里城に向かいながら、
そのため、琉美のセジしか頼れるものがない。
「私も1割しか残ってないけど、とりあえずシバにあげればいいんだね」
琉美は俺の背中に手を当ててセジを送ってくれた。
一気に
今の俺は、戦中にSPが切れることがないくらいセジが多くなっていたが、それを簡単に補えた琉美の成長ぶりが気になってしまった。
「そういえば、最近は聞いていなかったけど、最大ドSPってどれくらいになったんだ?」
「い、1万5千とちょっと……」
『ハァ!?』
全員が口を開けたまま琉美を見ている。
そして、カマドおばーが
「あんたは寝てなさい!」
「つい、つられてな……」
回復が効いたようで、
尚巴志の無事を確認できて安心したからか、皆の顔に笑みがこぼれていた。
首里城に到着すると、直ぐに尚巴志を寝室に運び、更に治療を続けるとのことだ。
俺と琉美は少し休んでくるように言われたが、ナビーはもう少し見守ると言って尚巴志の元に残った。
家に帰ると、先に首里城に逃げていたチヨが玄関に座っていた。
俺たちを見て慌てて頭を下げている。
「すみません。勝手に上がらせてもらっています」
「チヨさん。無事だったみたいで良かった。でも、どうしてここに?」
顔を上げたチヨは、台所に置いてある
「私があげたヒヌカン、飾ってくれて嬉しいです。ヒヌカンから力を感じ取れましたので、ここが皆さんの家だとわかりました」
琉美は居間にチヨを上がらせながらお礼をした。
「ヒヌカンありがとうね。安全祈願のために、戦いに行く前には必ずお祈りさせてもらっているよ!」
「ヒヌカンは
チヨは座ると笑みを浮かべながら答えた。
「ナビーさんと琉美さんの2人が祈ってくれているのですから、問題ありません。きっと、皆さんを守ってくれると思います。それよりも、あの……」
急にしおらしくなったチヨの顔を見て、
俺と琉美は簡潔に、首里城まで逃げ帰るまでの出来事をそのまま伝えた。
とりあえず、皆が帰ってこられたのだと知ってチヨは安心していた。
その時、カマドおばーが玄関に入ってきた。
「シバ、琉美。
付きっ切りで看病していたので疲れているのか、カマドおばーの表情に力がない。
尚巴志の様態を聞きたかったが行けば分かる事なので、カマドおばーには直ぐに休んでもらうことにした。
俺と琉美は急いで
ナビーはどこにも見当たらないので佐司笠に尋ねてみる。
「ナビーはいないのですか?」
「ナビーについて2人に頼みたいことがあるので、出て行ってもらったのじゃよ。さあ、
この状況で何を頼まれるのか不安だったが、琉美とうなずき合って尚巴志に顔を近づけた。
「シバ、琉美、ワシの勝手な行動に巻き込んでしまったな。
この場の重い空気を換えるように、琉美が明るい声で答えた。
「
「それなんだが、ワシの余命は数時間と言ったところらしいのだ。命がけで守ってくれたのに
「!? ケガも治ってセジも回復しているのに助からないのですか?」
「寿命を削る技を使った
俺と琉美は何も言葉が出ない。
そして、尚巴志はそのまま本題を続けた。
「頼みというのは、シバと琉美が元の世界に帰る時が来たら、無理矢理にでもナビーを連れて行ってほしいのだよ」
まさかのお願いだったので、驚きながらも理由を聞いてみることにした。
「無理矢理って、どうしてですか?」
「琉球が
このことをナビーに知られたら、意地でもこの世界に残ると言いそうだ。
俺はナビーを連れて帰って、
「すみませんが、無理矢理つれて行くことはしたくありません。本人がいないので正直に言いますが、一緒に帰りたい、連れ戻したいという思いで俺はこの世界に来ました。ですが、ナビーの考えや気持ちを無視をするのはよくないと思います」
「わ、私も同感です! ですが、あっちの世界では言いたくても言えなかった『同じ世界で生きて行こう』と、
琉美も俺と同じ考えで安心したが、
しばらく待っていると、目を閉じながら口を開いた。
「ワシらよりも、シバと琉美の方がナビーの事を考えてくれているのだな。もう、何も言うことはない。
佐司笠と尚忠はうなずき、俺と琉美をみてもう一度うなずいたのを見て、ナビーを任された気がした。
「これで思い残すことは……」
尚巴志は目を閉じてしまったが、まだ息はしているようだった。
佐司笠が残念そうに呟いた。
「
今から白虎に乗って行けば、連れてこられるのではと思ったので、家族がどこにいるのかきいてみることにした。
「俺と琉美が白虎に乗って皆さんを連れて来ます! どこに行けばいいのですか?」
尚忠が腕を組んで、難しそうに答えた。
「
「ま、
……尚巴志王、というか
「2人で行っても警戒されるだろう。面識があるナビーも連れて行きなさい」
俺と琉美が寝室を出る時、後ろを向いていたナビーと護佐丸が立っていた。
話している時間も惜しいので、ナビーを引っ張りながら訳を話したが、表情が硬く感じた。
急いで白虎に乗り、琉球に散らばった王子たちを乗せて首里城に戻った。
そして、2時間後。
家族に囲まれながら、安らかな表情のまま息を引き取った。
琉球王国 初代国王
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