第66話 ナビーの幼馴染
琉美が白虎にのせている模造刀を手に持って、今の俺が一番触れてほしくないことで精神攻撃をしてきた。。
「うわ、これってこんなに重かったんだ! でも、身軽になった後に刀で戦わなかったね。あの演出って前から考えていたんでしょ? 続きができなくて残念だったね」
「だからよー! 私も続きが見たかったさー」
「それ以上はやめてくれ。ビンタだけでは物足りなかったのか? このドSども!」
すると、ナビーが急に何かを思い出したように大きな声を上げた。
「
「
そして、不思議そうな顔でナビーにきいてきた。
「ナビーは、本当に1人で15人もマブイグミしてきたのか? 異世界に行く前は、1日13人が限界だったじゃろう?」
「あっちの世界で鍛えられたおかげで、今では1日35人くらいはできますよ」
佐司笠は予想以上に成長しているナビーに驚いて、口を開けて固まってしまった。
ナビーの話を聞いていた
「ナビーの事だから戦いばかりで、ノロの鍛錬は
佐司笠以外の人前では、
「ところで、ナビー……
ナビーはため息をついて、めんどくさそうに返答した。
「別に、何でもないです。私を好きだった
「え? 中止しないぞ」
「えー!
「わ、
すると、周りにいる数十人の警備兵たちも次々と頭を下げてきた。
俺たちは3人と1匹で横並びに立ち、さらに深くお辞儀をして了解の意志を示した。
正式に琉球軍に加わることとなったその時、正殿前広場に入る門からシーサーに乗った、俺たちと同じ年代の男が慌てて入ってきた。
周りを確認することもなく、門の近くにいた1人の警備兵を捕まえて必死に問いただしている。
「ナビーが帰ってきたって本当ですか!? 今どこにいるのですか?」
「
警備兵は落ち着きのない青年をシーサーから引きずり下ろし、
男は慌てて頭を垂れたが、隣にナビーがいることに気が付くと、走ってナビーに駆け寄ってきた。
「ナビー! やっと帰ってきたか! 待っていたぞ!」
「あい! ケンボー! あいかわらず、
ケンボーと呼ばれた青年を間近で見ると、沖縄特有の堀の深い顔と、横にがっしりとした筋骨隆々の体格のせいか、野性味あふれる男だと感じた。
「話は後だ。とりあえず勝負するぞナビー! 異世界とやらでどれほど成長したか、
「はぁ、ケンボーは本当に
ナビーとケンボーの関係性がよくわからなかったので、
そのため、同年代のナビーと接することが多くなり、幼馴染になったそうだ。
ナビーとは幼いころからケンカや模擬戦を繰り返してきたライバルなのだが、少しナビーの方が戦績が良いので、勝ち越すために何度も挑戦しているらしい。
「戦ってやれナビー。義本戦では途中参加で物足りなかっただろ?
みんな2人の戦いを観戦したいようだ。
「
「わかった。勝負は受けることにする。
ナビーは家に
歩きながらケンボーの事を聞きたかったが、なんだか聞きにくい気持ちになっていた時、琉美がナビーに質問してくれた。
「あのケンボーって人、ナビーの幼馴染なんでしょ? 強そうだったけど、勝てそうなの?」
「……琉美、戦いが終わったら、直ぐに回復お願いね。死ぬかもしれないからさー……」
俺は、反射的に前を歩くナビーの肩を掴んでいた。
「死ぬってどういうことだよ!?」
ナビーの表情筋はピクリともせず、虚ろな目になったまま何も返事をしてこない。
初めて見るナビーの異様な雰囲気に、俺と琉美はひるんでしまい、何も言葉が出てこなかった。
……ナビーはこの戦いに、何かをかけて挑むつもりなのか?
俺と琉美は、
強者同士の模擬戦はめったに見られないようで、見物人は期待に胸を膨らませて、今か今かと待ちわびている。
「両者、前へ!」
仕切りの兵の合図で、
ナビーの様子が気になっていたのでよく見てみると、虚ろな目は変わっていなかったが、口角が上がっていて増々不気味な表情をしていた。
俺は思わず、これまでの2人の戦いがどうだったのかを
「ナビーの様子がおかしいのですが、ケンボーさんと戦うときはいつもそうなんですか?」
「いいや。いつもは
そのとき、仕切りの兵がルールの説明を始めた。
「武器あり、
「ちょっと待って。せっかくこれだけの観客がいるから、セジも使った何でもありでやらないか? ケンボーも全力で戦いたいだろ?」
「ナビー、珍しくやる気満々だな! わんも全力で戦いたいので異論はない」
仕切りの兵が振り向くと、
すると、広場に集まっている観客の歓声が指笛と共に響き渡る。
「ナビー。様子が変だけど、大丈夫か?」
「あっ、シバか。大丈夫だよ。ただ、私がこの世界をたつとき、やり残していたことがあったけど、それを今やり遂げることができるから、うれしいわけよ」
振り返るとき横目でケンボーを見ると、
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