第65話 妖刀、北谷菜切
「ナビー!」
「ヒンプンシールド・
ナビーは
「よかったさー。まだやられていないみたいだね。外で首里軍の兵がやられていたから、もしかしてと思って戻ってきたわけよ。それより……」
ナビーは白虎から降りると、俺が落とした模造刀を拾い上げて何度か上下させ始めた。
「やっぱり、
「恥ずかしいから、説明するのはやめてくれ! 相手は義本なんだぞ。ふざけている場合じゃないだろ」
ナビーは白虎の背中に模造刀を乗せて、琉美の元に走らせた。
その時、閉じ込められていた義本がヒンプンを破壊して、俺たちを警戒しながら距離をとった。
「ナビーだと? なんでこの世界に……あいつ、しくじったのか!?」
義本はナビーがきたことで、さっきまでの余裕がなくなっていた。
……あいつって、あの鬼面の奴の事か?
「シバ、まだ戦えるよね? ここでこいつを倒しておくよ!」
俺は自分の状態を確認するために、ステータスを見ることにした。
Lv.61
HP 750/750 SP 593/630
攻撃力 690 守備力 900 セジ攻撃力 495 セジ守備力 810 素早さ 710
特殊能力 中二病
身代わり
特技
ヒンプンシールド Lv.10 セジオーラ Lv.9
俺とナビーは戦闘態勢をとっていたが、義本は警戒を解いてしまう。
「ああ! お前、ナビーと一緒にいるということは、
「逃がすわけないだろ!」
「はぁ? 逃げるとは一言も言ってないだろ。王は殺していくつもりだ」
義本は握っていた刀を
俺が持っている刀キーホルダーにもある、
ナビーは焦りながらも、テレパシーで俺に話しかけてきた。
「刀の展示場で言った、
「たしか、妖刀って言ってたっけ?」
「うん。振る真似だけで首が切れる妖刀って書いていたさー。あの説明が本当なら、義本は
しかし、俺とナビーが妖刀の効果を知っているとは思ってもいないはずなので、それを利用できればいいと考えた。
「ナビー。ここは、尚巴志王がやられない事だけに全力を注ぐぞ。今、普通に戦ったところで、俺たち自身も危ない相手だから、義本にはなるべく撤退してもらう方向でいくよ」
琉美が自分にできることがないかをテレパシーを通じてきいてきた。
義本は力をためているのか、
「そんな危ないことできるわけないさー! 死ぬつもりか?」
「俺が死なないためにも、全力でお願い!」
「シバ! 後でビンタ一発ね!」
琉美は俺の作戦に激怒しており、いつもの冗談ではないみたいだ。
その時、義本が動き出す気配がしたので、俺たちは作戦を実行していく。
『
2人のヒンプンシールドを合わせて、出せるだけの石垣で義本を閉じ込めた。
「
ナビーはすぐに俺の首を両手でつかみ、義本が出てくるギリギリまで俺の首の守備力を上げまくった。
石垣の塊がガラッと崩れると、石垣を壊した義本が2刀流で立っていた。
「何がしたいんだよ? 閉じ込めるだけで僕がどうこうなると思っているのか?」
「死ねーーーー!」
叫ぶ迫力とは真逆に、両手で握った
俺はセジオーラをレベル9にして、狙われている尚巴志の前ではなく、琉美の前に移動した。
そして、俺の特殊能力【身代わり】が発動して、尚巴志に向けられた見えない首切り攻撃を自分が代わりに受けることになった。
何も見えていないのに首に衝撃が走り、踏ん張り切れずに背中から倒れそうになったが、後ろから琉美の龍のムチがうなじをかじって支えてくれた。
「
琉美が何度も回復をしてくれているが、鉄パイプで首をグイグイ押されている感覚が10秒程続いた。
耐え抜くことはできたが、意識を保つのがやっとだった。
「何でお前が苦しんでいるんだよ!? それに、何で首と体がまだつながっているんだ……」
義本は意表を突かれたように目を丸くして固まっている。
「ゴホッ! ハーフー……
俺は気合を入れなおし、ポケットから
「セジ刀、
俺は、不敵な笑みを浮かべて刀を抜き、義本に向けて刀身を見せつける。
「何でそれを? そうか、お前も持っていたから妖刀のことを知っていたんだな! ネタがばれているなら僕の勝ち目はないじゃないか。それを僕に向けるな!」
「
義本がこちらに背中を向けようとした時、
そして、警備兵から刀を奪い取ると、両手で持って地面に突き刺した。
「
地鳴りが起こる。
不穏な気配を感じたのか、義本は持ち前の速さを活かして全力で逃げていく。
俺たちは事の
地中から湧き上がるように出てきた琉球石灰岩が、城壁を超えて逃げて行く義本に向かって次々と飛んでいく。
義本は避けることがやっとで、逃げ切ることができなかったが、そこを歩いていた野生のシーサーを目にすると、全身に
そのままシーサーに近寄ると、
「ふー。やっと追い出せたな」
屋根から降りて
「アッガ……」
俺は自分が悪いと知っていたので、黙ることしかできなかった。
「シバ! 私の命を救った人が、自殺まがいのことをしていいと思っているの!? 今度こういう戦い方をしたら、ビンタでは済まさないからね!」
「だからよ! 私を追ってこの世界に来たシバに死なれたら、私はどうしたらいいかわからなくなるさー。こんな戦い方するなら、シバにはおとなしくしてもらうことにしようかね」
琉美とナビーは瞳を潤し、眉間にしわを寄せながら怒っている。
今回の作戦は成功したが、他にもやりようはあっただろう。
死にたくて考えた作戦ではないが、確かに自分を犠牲にしすぎたと、ジンジンする
「ごめん。これからは気を付ける。それと……ありがとう」
今度はナビーが手から水を出して、俺の顔にかけてきた。
「えー! 何で叩かれたのに、
「はぁ? 笑ってないし……」
どうやら、2人が俺のためにこんなに怒ってくれることに対して嬉しくなり、無意識に顔がにやけていたようだ。
……我ながら気持ち悪い。
「
「わかりました。ありがとうございます」
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