リーシアが究極の白魔法を覚える
勇者の残した塔に入ったエルク達であった。
「前の時と同じようですね」
「ええ」
五人は螺旋の階段を昇り一番上のフロアまでたどり着く。
そして水晶を操作した。前の時と同じく勇者アレクの姿が立体映像で映し出される。
「アレク様! バハムートですぞっ! お久しぶりでございますっ!」
バハムートのテンションがあがっていた。
「立体映像なんだから会話できるわけないじゃないですかっ」
リーネが冷ややかに言う。
「わかっておるわっ。初恋の人を目の前にしたら誰でもテンションがあがるであろう」
「勇者アレク様とはその後どうなったのですか?」
「勇者アレクはある国の王女様と結婚し、その後子供を残した。その血筋が今も残っている事であろう」
「へぇ……初恋は実らないって言いますしね」
「リーネの初恋は?」
「勿論先生です!」
リーネは胸を張って答えた。
「ぷすすっ。初恋は実らないって……リーネ」
「確かに、実る気配ないですねっ。一向に」
イシスとリーシアは笑っていた。
「う、うるさいですっ! 余計なお世話ですっ! 実る初恋もあるかもしれないじゃないですかっ!」
リーネは顔を真っ赤にする。
「勇者アレクだ。この塔にも勇者パーティーの力を残してある。ここに来たという事はそれだけ世界は混沌に満ちてきたという事だろう。僕は世界の平和を祈っているよ。恐らくその時僕はこの世にはいないだろう。天国からという事になるだろうが。これは細やかな贈り物だ。勇者パーティーの一人、大神官ソフィアの白魔法を封じ込めた魔石だ」
宙から魔法の力で魔石が落ちてくる。その魔石はリーシアの手に止まった。
「その魔石には大神官ソフィアの力が報じ込められているようです。やはりそこはリーシアさんが使うのが好ましいでしょう」
「はい」
リーシアは魔石を使用した。身体が白い光で包まれる。
「これは……すごい力を感じます」
「おめでとうございます。リーシアさん」
「これでやっと私も戦えます。勿論、戦うのは皆さんです。私は白魔導士ですから。きっと、もっとお役に立つ事ができます。私、嬉しいです。ずっと足手まといでしたから」
リーシアは涙を流す。
「そんな事はありません。リーシアさん、あなたはあなたなりに役立ってきました」
「よくわかりませんが、リーシアさんも強くなったって事ですよね」
「リーシアは白魔導士。回復や補助が主だから、強くなったっていうのは語弊がある。役立つようになったが正しいけど概ねその通り」
イシスはそう言っていた。
「……って! じゃあ! 役立たずはもう私一人じゃないですかっ!」
「……それを否定する言葉を持ち合わせていないのが辛いですね」
エルクは苦笑した。
「先生! 早く私にも力を手に入れてください! 勇者パーティーの力が欲しいんですっ!」
「落ち着いてください。リーネさん。急いては事を仕損じます。いずれはその機会もありますから。戦闘以外で役立ってください」
「はい。でしたら先生が疲れた時に、お背中を流したり、膝枕をしたり、耳掃除をしてあげたり、そういう内助の功で役立とうと思います!」
「いえ。遠慮します」
「えええええええ! なんでですか! 遠慮しないでくださいよおおおおおおおお! 私の存在意義ってなんなんですかあああああああああああ!」
「「「……………………」」」
「黙らないでくださいよおおおおおおおおお! 悲しくなるじゃないですかああああああああああ!」
「賑やかになる」イシスは苦笑いしていた。
「場の空気が明るくなる」リーシアも苦笑いをしていた。
「うるさい雌犬でも一匹いると寂しさを紛らわせるものよのう」バハムートはうんうん唸っていた。
「これほど答えるのに難しい問いに私は初めて直面しました」
「ひどいですううううううううううう! 先生えええええええええ! 何もないんですかっ! 私の良いところって!」
「そうですねぇ……」
「なんですか!? 先生!? 私の良い所って! 先生の口から聞きたいです」
「…………」
「…………」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………さて。皆さんお腹も空いた事でしょう。どこかの国へ行ってご飯でも食べましょうか。幸いバハムートさんという足も出来ましたし」
「わしは乗り物か!?」
「否定する要素はありません。残念ながら」
「あっあああああああああああああああああ! 流しましたああああああああああああ! 今あっさりと流しましたあああああああああああああああ! ひどいですうううううううううううう!」
リーネは涙を流した。
「必死に考えたんですが思い浮かばなかったんですよ。人生でもっとも難問でしたよ」
「どこかあるはずです! どこか! 私にも良い所あるはずですううううう! 皆の役に立ってるはずですううううううううう!」
「また考えておきますから。リーネさん落ち着いてください」
「落ち着いていられませえええええええええええん!」
己の存在価値に疑問を持ったリーネは泣き喚いていた。
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