バハムートとの対話

「問おう。人間達。何をしに竜人の国を訪れた?」


 凄みのあるオーラを纏った少女はそう聞いてきた。少女の皮を被っているが彼女は間違いなく竜王バハムートなのだ。とても侮れる相手ではない。


「竜人の国を抜けたところにある搭へと向かわせて頂きたいのです」


「ほう? なぜじゃ?」


「勇者様の残してくれた力がその搭にあるからです」


「なぜに勇者の残した力を求める」


「この世界が混沌に陥ろうとしています。文献でしか知り得ない事ですが、2000年前の時と同じように」


「ほう? 2000年前とな」


「はい」


「2000年前の時の事なら我も覚えておる。なにせ我も2000年前の大戦に参加していたのだからの」


 バハムートは笑った。


「そうですか。竜王様も」


 竜人もエルフと同じく長命で年を取らない種族だ。それ故に大戦以前に生まれ、2000年前から生きていたとしても何の不思議もない。


「そうじゃ。あれは今思い出しても血沸き肉躍るような大戦であった。それに比べて今は少々退屈じゃ。あの時と同じような興奮と高揚感を味わえるのは悪くないの。クックック」


 牙のような犬歯を覗かせる。凄みがあった。その気になれば簡単にこちらを食い破ってしまえるような。


「それで許可を頂けるでしょうか?」


「よいだろう。だが、今日はもう遅い。我が城に泊まっていけ。客室なら空いている」


「ありがたき幸せであります」


「フィルとフィア、肉ばかりくっているな。というかもう肉など残っておらんだろうが。骨だろうがそれは!」


「「ペロペロペロペロ!」」

「まだお肉の味が骨から染み出てくる」

「う、うん。これがまたジューシー」


 二人の竜人姉妹は犬のように骨に食らいついていた。


「全く。こやつ等は阿呆だからの」


「竜王様はそんな感じしないです。竜人の人達皆があんな感じじゃないんですね」


 天然はリーネは無遠慮な発言を平気でする。


「馬鹿! 相手は竜王様よ! リーネ!」


「そ、そう、無遠慮な発言は慎みなさい! 沈黙は金よ!」


「当たり前じゃろうが! わしをあんな阿呆な竜人と一緒にするな! 伊達に2000年生きてないわ!」


「ひいっ! 怒らないでくださいっ! 食べないでっ!」


「まあよい。ゆるしてやろう。10年やそこらしか生きていない小娘の戯言など。わしは寛大なのじゃ」


 余裕のある笑みを浮かべるバハムート。


「その寛大なお心感謝します。私の仲間が失礼な事を」


「錬金術師よ。後で食事を用意するから食べていくがよい。安心するがよい。人肉は出ぬぞ。クックックック」


「ありがたき幸せ」


 エルクは傅いた。こうしてバハムートを含めた竜人数名と食事を取る事になったのである。

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