竜人の王バハムートとの面会
「……どうしたんだ? フィルとフィア。んっ? 後ろに連れているのは人間か?」
竜人の国に入ると何人もの人がいた。とはいえ竜人の国にいるのだから普通の人間ではなく、竜人であるのは確かだ。
見た目は完全に同じはずなのになぜ普通の人間とわかるのか。やはり匂いなのだろうか。
「うん。そう。人間」
「餌に捕まえてきたのか?」
「うう……やっぱり私達食べられちゃうんですか」
リーネは怯えた。
「違うの。何でも竜人の国に用があるらしいの。何でもまおーが何とかかんとかで、何とかかんとかなの」
「フィア、説明になってない。この人達はお肉食べさせてくれるから連れてきたの」
「訂正した内容は間違いなく正しいのですが恐ろしく馬鹿っぽいです」
エルクは嘆いた。
「そうか。よくわからんけど。わかった」
「竜人の人達って頭が弱いんでしょうか?」
リーネは聞いた。
「リーネにそれ言われると屈辱だと思う」
イシスは嘆く。
「なんですかそれって! 私にすっごい失礼ですっ!」
リーネは怒った。
「それでは竜王様のところへ案内します」
「竜王様?」
「はい。竜王様です。こちらが竜城になります」
「言わば竜の王様でしょう。アポイントメントもなくて大丈夫ですか?」
「「あぽいんとめんと?」」
だめだった。この子達は頭が弱いのだ。
「すみません。難しい言葉を使ってしまいました。要するに約束の取り付けです」
「あー。大丈夫じゃないかな」
「多分大丈夫!!」
「多分って……不安になってきました」
竜王の逆鱗を買ってしまわないか不安に思った。だがもはやここまで来てしまえば仕方ない。後は鬼が出るか蛇が出るかだ。
「竜王様ーーーーーーーーーーーーー!」
「お客様連れてきましたよーーーーー!」
竜城の扉を開けて、竜人の双子姉妹は叫ぶ。
「そんな叫んでいいもんですか?」
「それでお客人、お礼」
「お肉、お肉よこせ」
二人は涎を流している。
「色々使命とか関係なく食欲が優先してますね。はい、あげます」
エルクはこんがり肉を数本差し出す。二人はがっつき始めた。
「だ、だめっ! フィル! それあたしの!」
「だめよっ! フィア! あたしのなんだから、横取りしないで!」
餓鬼の喧嘩であった。醜い。姉妹の愛など微塵もなかった。竜人はやはり食事量が半端ないのか。大きい身体を維持する為にはそれ相応のエネルギーが必要という事なのだろう。
「なんじゃ? フィルとフィア……人間か? わしの餌を持ってきたというわけか?」
少女が話しかけてくる。玉座にいたのは全身を黒色の少女だった。黒髪をした少女。10代の少女にしか見えないがその放っているプレッシャーは竜を相手にしている時と同じであった。間違いなく普通の少女ではない。
「違います。私達は冒険者です。この竜人の国を抜ける許可を頂にきました」
「ほう……冒険者か? 名を名乗る事を許そう」
「私の名はエルクと申します。錬金術師をやっています」
「錬金術師か。面妖な術を使う人間の事だの。私の名はバハムートと呼ぶ。全ての竜人を統べる竜人の中の王だ」
黒髪の少女ーーバハムートは凄みのある笑みを浮かべた。
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