蠢く魔物を古代魔法で瞬殺する
「はぁ……ものすげぇ状況だぜ」
四聖竜の戦士であるゼネガルはそう語った。王国アーガスの内部にはそこら中に蠢く魔物がそびえていた。
はっきり言ってこの世の地獄である。
「前に私もアーガスに来た事がある。けどこんな地獄のような状況じゃなかった。もっと活気に満ちた人間の国だった」
「当然だろうな。ここはもう人間の国じゃねぇ。魔の国だ」
「そうね」
「行こうぜ。こっちが王城だ」
四聖竜の面々が入っていく。王城の入り口での事だった。
うごめく魔物がいた。
「……酷いですよねぇ。私、こうなる前はこの国で統括大臣をやっていたんですよ」
蠢く魔物が言う。もはや人間の形をとどめてはいなかった。
「それがこんなになっちゃって。他の五人の大臣もそうです。他の大臣達はもはや話もできませんよ」
「「「「ウゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ」」」
魔物がうごめいている。
「くっ。なんだこいつ等!」
「危険よ。魔王の力の影響を受けているわ。理性を失っているけど、その存在は2000年前に死滅したとされる魔人に近い」
四聖竜の面々は身構えた。
「この理不尽な怒り! 人間にぶつけるしかない! そう! 恨めしい! 人間である連中が! しねえええええええええええええええええええええええ!」
蠢く魔物が襲い掛かってきた。
「くるぞ!」
「おう!」
「食らえ! 化物! 黒竜剣! 連続斬撃!」
「ぬう!」
ゼネガルは黒竜剣による連続攻撃を放った。剣が走り、ダメージを与える。Sランク相当の攻撃。
「へっ! どうだっ!」
「油断しないで!」
「ぐふっふっふっふ! 効きませんぞ! そんな攻撃。ふはあああああああああああ!」
「なにっ! ぐわっ!」
「ゼネガル!」
ゼネガルは吹き飛んだ。すぐに傷が再生して、蠢く魔物は襲い掛かってきたのである。
「なんだ! 効いてないのか!」
「自動回復(オートリジェネ―ター)よ。魔物は根本を絶たなければすぐに回復してしまう。即死クラスの大ダメージを与えないと、魔王の力の恩恵によりすぐ回復してしまうの」
「んだと! なんだよそりゃ! じゃあ、こいつ等を倒せないっていうのか!」
「それだけ強力な攻撃ならいいのよ。あいつ等が再生する間もないくらいの攻撃」
「それだけの強力な攻撃をどうやって繰り出せっていうんだ!」
「お待たせしましたね。四聖竜の皆さま」
「エルクさん! それに嬢ちゃんたち!」
「頼んだぜ! エルクさん! 残念ながら俺達じゃこの魔物の相手はできそうにねぇ! あんたの錬金術でズバっとやってくれ!」
「……いえ。ここは私の頼もしい元教え子、そして仲間に相手をしてもらいましょう」
「なんだって!? 嬢ちゃんが!」
「この魔物を相手にするっていうの?」
イシスが前に出る。
「不満ですか?」
「できるのか? 嬢ちゃんに」
「見ていてください」
イシスは魔法を発動させる。その魔法は力の根源が今の魔法とは異なっていた。強力な魔法の波動は周囲の者も感じていた。
「なに? この魔法の力は。こんな凄まじい力、感じた事がないわ」
「この魔法はただの魔法ではありません。2000年前の魔法。古代魔法です」
「古代魔法! そんな魔法をいつの間に覚えたっていうの!」
「つい最近です」
イシスは答える。
「小娘! 貴様のような矮小な存在が! 我等に通用するというのか!」
「哀れな魔物よ。私がお前たちに終わりを与えてやる!」
イシスは魔法を放つ。
「ヘブンズレイ!」
イシスの背後から幾多もの光球が現れる。そして放たれる無数の光。その光ひとつひとつが魔を絶命しうるだけの強大な力があった。天国へといざなう魔を滅する光。ヘブンズレイが魔物に襲い掛かる。
「なに、そんな馬鹿なあああああああああああああああああああああああああああああ!」
「「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
元統括大臣及び大臣達は古代魔法ヘブンズレイにより消失していった。
「可哀想ですがああなってしまえばもとに戻す事はできません。安らかに眠らせてあげるのがせめてもの情けでしょう」
「すげぇ、魔法だ。長い事冒険者をやってきたがあんな魔法見た事がねぇ」
「古代魔法、すごい威力ね」
「行きましょう! 皆さん! 大元の敵はすぐ目の前です!」
イシスの姿が様になっていた。
「ああああああああああああああああああああああ! イシスさん! 私より目立たないでくださああああああああああああい! 先生の好感度を稼がないでえええええええええええええ!」
リーネは騒ぐ。
「うるさいですよ。リーネさん。私は仲間の成長を好ましく思っているだけです。なんでも色恋沙汰に結び付けるのはあなたの悪い癖ですよ」
「じゃあ、先生、弱い私でも嫌いにならないんですか?」
「別に嫌いにはなりませんよ」
「じゃあ、先生。弱い私を守ってくださるという事ですか?」
「なんでそうなるんですか。あなたも弱い自分を嘆いて泣いていたじゃないですか。強くなってください。私に守られる事のないように」
「はい! そうですね!」
「それでは行きましょうか」
「エルクさん! 俺達もお供させてもらうぜ」
「ええ。邪魔にならないように見ているだけかもしれないですけど」
「良いですけど、自分の命は自分で守ってください。死にそうになっても助けを求めないことが戦場でのマナーですよ」
「へへっ! わかってますよ! これでも俺達一応、Sランクの冒険者パーティーですよ」
「では行きましょう。この先から強い波動を感じます。そこに恐らくは大元の敵となる魔物がいるのでしょう」
エルクは推察する。聡明なエルクは何となくその人物が誰かを理解できていた。間違いない。魔王の宝玉を解き放ち、力を得た愚かな人物。そんな人物などエルクは一人しか思い浮かばなかったのだ。
恐らくはあの日以来の再会となるその人物。
不思議なものだった。リーネ達と再会し冒険者となってからそう時間は経っていないというのに。随分と時間が経っているかのようにエルクは感じていた。
エルク達は向かう。ともかくこの因縁に終止符を打たなければならなかった。
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