第6話 国王失態に気付く ※ざまぁ回始まります

 アーガスの国王は呑気に生活をしていた。ただ飯くらいの穀潰しを追い出して経費の節約を出来たのだ。それ故に気分爽快であった。

 国王は鼻歌すら歌いたい気分だった。


「こ、国王陛下!」

「なんだ? わしは今気分が良いのじゃ。邪魔をするな」

 

 そんな時だった。一人の使用人が国王のところへ来たのだった。


「ほ、報告があるのです」

「なんじゃ。言って見ろ」

「実はあのエルク殿の住んでいた部屋を片付けていたところ、部屋の隅からこのようなものが出てきました」

 

 使用人が差し出したのは一振りの剣だった。この国に代々伝わる聖剣エクスカリバーである。


「な、なんだと! それは我が王国に代々伝わる聖剣ではないか! あの盗人め! まさか宝物庫から盗み出したのか! 何とも卑しい奴め!」


 国王は激怒した。


「ですが疑問があります。盗んだのでしたらなぜ、自分の部屋にそのまま放置しているのでしょうか」


 使用人は苦言を呈した。


「それもそうだの。大体つい先ほど宝物庫に行ったところ、聖剣は確かにその場に存在していたというのに」

「不思議ですね」

「鑑定士を読んでこい。少し気になる」

「はっ!」


 こうして鑑定士をよんできて、聖剣が本物か偽物かを判別する事に国王はしたのである。



「どうだ? わかったか?」


 呼ばれてきた鑑定士は二つの聖剣を鑑定する。一つは宝物庫のもの。そしてもう一つはエルクの住んでいた部屋に放置されていたものだ。


「宝物庫に残っていたものは本物で、そしてこのエルクさんの部屋に放置されていた剣は聖剣に良く似た偽物です」

「そ、それは一体どういう事なのじゃ?」

「私に聞かれましても」


 呼ばれた鑑定士は顔を顰める。


「そういえば奴が宮廷に来た時に宝物庫に案内した時、我が国に伝わる聖剣を案内した事があったの。その時、なぜか奴がその聖剣を見て渋い顔をした事をわしは覚えておる」

「あの、少しよろしいでしょうか」

「なんじゃ?」


 女の使用人ーーメイドが声を出す。


「実は夜遅くにエルクさんが宝物庫に入っていたのを見たんです。私はその様子を物影から伺っていたんです。エルクさんは聖剣を手に持って宝物庫に入っていきました」

「……聖剣を手に持って? それで、宝物庫から出てきた時、奴は何を持っていた?」

「同じように聖剣を手に持っていました。そしてそのまま部屋に帰って行かれた事を覚えております」

「聖剣を手に持って宝物庫に入って、聖剣を手に持って帰ってくる。そして宝物庫にあった聖剣は本物であり、エルクの自室にあった聖剣は偽物。これは一体何を示すのじゃ」


 国王は考える。


「まさか」


 そしてひとつの回答に思い到った。


「宝物庫の聖剣は偽物で、エルクは本物の聖剣を作りだし、こっそりとすり替えたとでもいうのか」


 国王はもしかしたら自身が失態を犯したのではないかと気づき、わなわなと震え出す。

 自室に閉じこもっている引きこもりの穀潰しだと思っていたが、まさか奴はとんでもない錬金術師なのではないか。


「これは少し調査をする必要がありそうじゃの。エルクに対する情報を集めよ」

「は、はい。わかりました」


 使用人は答える。

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