第十一話 チャレンジ3
海に沈む夕陽に目を戻すとヨットハーバーから沖に滑り出す一艘のヨットが帆を張り始めた。夕陽を受けて徐々に風を孕み力強く脹む大きな帆に文字が見えた。
〇〇〇Repubric
驚きはっとしてさっきの
どこか後輩女子に似ていると感じた。
夢を見た。このところ極度に疲労しているからかもしれない。寝食もままならずにいることが原因だと思うが何かのメッセージなのかもしれないと考えた。
思い出されるのはインターンを過ごした会社でお世話になった役員との約束だった。
あの時・・・
-君は、不採用だが、また会うことができたな。本当にうちで仕事をしたいのか。
その人は、荒っぽさと細やかさを兼ね備えた人だった。短い人生経験の中でもなぜか心惹かれたのは本当の父親の面影を見たような気がしたからだった。
-はい、インターンで接した社員の方々のSDGsの理念だけでない自然や再生エネルギーに賭ける思いと行動に感銘を受けました。
-うちには、そんな上等な人間はいない。SDGsなんてものは嘘っぱちの理念だ。
ただ、食うために黙々と現場に赴くそんな連中ばかりだ。
-そんなことは、ないと思います。
-・・・どうしてそう思う。
-すごく安心して仕事ができました。やさしくて責任感のある職場だと思いました。
一緒にコンビニ弁当を食べながら次の現場仕事の段取りをみんな笑顔で楽しそうに
話してくれました。
-・・・そうか・・・
君は、確か・・・〇〇大学の工学だったな。
君がインターンで来てた時はそんなことは知らなかった。うちにはそんな大学の
出身は親会社の本社にしかいない。
これは、個人の意見として聞いてくれ。
そんな人間がいるとうちの連中が困るかもしれない。新しい産業分野だ・・・
まだ軌道にも乗っていないから雑多な人間の集まりだ。
よく考えてみることだ。それじゃ申し訳ないが失礼するよ。
その日に下宿に戻ると営業部の若手の方から連絡があった。申し訳ないが明日来社して人事部に来てほしいとのことだった。
翌日不思議な気持ちのまま会社の人事部を訪ねると採用の条件を伝えられた。いまからなら新卒の採用期間でないから高卒のキャリアとして採用ができるということだった。
こんな先回りをして人を試すようなそんな人に対して、自分はどうすればよいのか。父に知れたら大変なことになる。そのときに電話があった。その役員だった。
そして夏休み明けに採用通知と赴任地への辞令が届いた。
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