第十二話 ペーパーチェイス2
週明けに学年末考査を控えた日曜日は寮がもっとも静かな一日だ。皆夕食を終えるとそそくさとそれぞれの学習室や個室での机に向かう。誰もが集中している静けさのなかに張り詰めた緊張感が夜遅くまで続いていく。
翌朝教室に向かう途中であるクラスの教室が騒がしいのでガラス窓越しに覗いてみた。
-なんだ!?
黒板一面が文字で埋め尽くされている。・・・自分が何ものなのかがどうたらこうたらと書かれている・・・
先生がやってきて黒板を消すとみんな落ち着いて考査に備えるようにと言って戻っていった。
最初の考査が終わると戸口でセイジが目くばせしてきた。トイレにいくふりをして教室をでるとサブローがいないんだと耳打ちしてきた。セイジはそのまま教室に戻っていったが胸騒ぎが収まらなかった。
セイジと寮に戻ると中入からの連中が僕たちに目を向ける。ダイスケとオージが声をかけてきた。
-どうしたんだ。サブローが学校に来てなかったって?
-そうらしい。何やってんだよ・・・サブロー・・・ったく!
-心配だな、探しにでるか?
-そうやな。
ワタル・・・、残橋方面を頼む。セイジは、図書館を頼むわ。俺は駅向こうに行く
から・・・ オージは、川沿いでいいか・・・。
結局徒労に終わり夕食後は翌日の考査に向けてそれぞれ学習室で机に向かい始めると寮先生から個室にくるよう呼び出しがあった。
-おまえら午後は出かけとったそうばい。どけー行っとったんだ。
-集中力を高めるのにランニングをしてきました。
寮部長の先生が入ってきた。
-最近○○君に変わったことはなかったかな。ちょっとしたことでもいいから教えて
ほしい。
-特に変わりはなかったです。
-みんなもそうか。
-はい。
-はい。
-そうか・・・明日のこともあるから居室に戻るように。
-はい。
廊下を歩きながら皆不安な顔つきで思いを巡らせていた。学習室に入る前にダイスケがとにかくそれぞれ
なにを・・・あんなに明るいやつが何をそんなに悩んでたのか・・・?
そんなサブローのことを気づけないでいた自分に腹が立って仕方がなかった。
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