第二十話 リスペクト3

-夜分に電話で申し訳ない。フィールド技術と営業の部門長から君の採用を直訴され

 たよ。少し話をしたいがいいだろうか。


-はい。


-君の採用に条件をつけた・・・。

 そして、これはどうでもいい話なんだが、聞いてほしい。


 息子を・・・二十代の息子を・・・亡くした。


 競争に勝つために必要なことを小さいときからやらせてきた。息子も親の期待に

 応えてきたから安心していた・・・よくできた息子だった。


 苦しんでいたことを知らなかった。


 本当に人生で大事に思う大切なことを何も教えてなかった・・・・・


 君を初めて見た時、息子が会いに来てくれたのかと思った。

  

-・・・・・



-エネルギー市場は世界で数百兆円になる。化石燃料だ。しかし、日本が生みだすこ

 とができるエネルギーは君も知っているとおりほんの少しだ。

 再生エネルギーを拡大することはまだまだ不安定で資金力もない。しかも利権の

 温床だ。それをやりたいという君は貴重な人材だ。しかし、勧めたくなかった。

 

 息子のときと同じだ。


 だから君の採用に条件をつけた・・・、こんな個人的な判断は許されないだろうが、 

 本当に大事に思うことを伝えたかった。だから充分に考えて欲しい。


-・・・・・わかりました。ありがとうございます。





涙をこらえて返事をした。父の‥・天国の父からの声だと思った。僕は生まれて初めて父親の愛情を感じていた。





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