第十九話 ディスラプション

親が勧める通信制の高校に転学した。父が社会との接点を持つことは決して悪くはないということで母は反対したが週数日スーパーのアルバイトも始めた。なにも考える必要がなかった。要所でのスクーリングと適当な科目のレポートの提出をすることだけだった。勉強へのプレッシャーと競争がないことが快適だった。そしてソーシャルゲームとネットへの批判コメントに時間を潰す毎日だった。



そのまま半年はんとしがたったころ高卒認定試験(大学検定)を受けることを母から勧められ学校に問い合わせた。学校からの連絡では単位が満たされていることで試験に必要な教科は3教科だった。高校一年までにあらかたの授業範囲は終えていた。




国立H大学の試験会場に向かった。17歳になっていた。校門を入るとアルバイトとおぼしき学生が誘導してくれたが自分たちを見下すような感じを受けた。


試験は、拍子抜けするほど簡単で学校の授業で学んでいたこととのレベルの違いに愕然がくぜんとした。



帰り際の校門付近でチャパツと身体の大きな受験生同士がめていた。誘導の学生たちがニヤニヤしたりあきれた様子で遠巻きに見ていたがつかみみ合いになるとひとりの学生が大声をあげて飛び込んできた。


おまえたちなにやってんだー・・・! やめろー!


割って入って二人を引き離しながらチャパツの受験生に落ち着くように優しくさとしていた。


さほど年齢が変わらないかもしれないその誘導員の行動を目の当たりにしてこの大学の学生でもこれ程までに人格の違いがあることに衝撃を受けた。遠巻きに見るしかなかった自分に腹が立った。漠然とした大人になることや社会に出ることへの不安が吹き飛んだ。そして自分が何者でもないどころかどれだけ空っぽなのかを思い知った。


自分が何をするべきかを真剣に考え始めた。


セイジが大島でのキャンプでくれた本のことを思い出した。父からのプレゼントだと言っていた。


-なかむら・・・あまつ・・・かぜ?・・・かな?


一気に読みあげた。今の自分の年齢から始まる冒険に満ちた自叙伝だった。人生は冒 険なんだということを初めて知った。アルバイトのお金でヒマラヤの夜空を見上げることを決心した。


日本の果てから世界の果てに行ってみたかった。





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