第八話 ペーパーチェイス

二学期の中間考査で先生たちをはじめ学年に激震が走った。常連のワタルや俺を尻目に転入したてのオージだけでなくセイジがベストスコアラーとして名前が貼りだされた。




俺たちは学校に馴染まないグループとしてなんとなく距離を置かれていた。特に高入生からは時におさなく甘えていることを指摘することもあって反感を買っていた。それでも俺たち以外と気軽に話すことがないオージが仲間に加わったことで同級生たちの耳目じもくを集めていた。唯一ゆいいつ気にかけてくれる先生がおまえたち一体全体どげんしたとオージがかえってきて勉強ば教わったんかと冷やかし半分で声をかけてくれていた。  


セイジは射程外ともくされていたらしく成績中間層の驚きややっかみは半端でなかった。高校は転学させられるだろうと噂されていたことも吹聴されたが確か中学最後の冬休みから帰ってくるなり中二の数学の参考書をいつも持ち歩くようになった。


食事中も通学中も休み時間も・・・・・・


たまに質問してくるがトンチンカンなうえに問題の意図もままならなかったのでどうしたのかと聞くとおとうさんと約束したんだと言う・・・確かその年に父親を亡くしたはずだったのに。



それからも目の色が変わったようにワタルや俺にチャートの解法なんかについて質問してくるのだった。


-英語は、遠い星の言葉と思っていたが数学はもっと遠いなぁ~。留学してできるよ

 うになるわけでもないから銀河系の外だよなぁ~。


溜息をつきながらウンザリするような表情を見せていた。




そしていつしかワタルがいつも過ごす西の浜の残橋に連れだって行くようになった。夕陽を見るのが好きだったオージとワタルのお気に入りの場所だ。夕暮れに染まる遠くの島々を眺めながら二人で明星が夜空にのぼりはじめるまでいつまでも話が尽きないようだった。

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