第五話 チャレンジ2

商社の人事から連絡があった。大変申し訳ないが辞退の経緯を教えてほしいとのことだった。理由如何によっては考慮したいとのことだった。


大手町の大きなビルにつくと受付に来訪を告げた。ロビーで待っているとほどなく女性が現れた。ご案内しますと一礼をされて驚いた。大部屋での面接のときと大違いだ。エレベーターに乗ると役員専用のものらしくその階につくと大きなフロアの一角の女性たちが立ち上がって一礼をする。廊下の奥の一室に案内されると皇居が一望できる広い部屋だった。


確か最終面接で質問された取締役だった。ソファに座るよう促されると意を決した。


-今日は、わざわざ来てくれてありがとう。早速だが辞退した理由を教えてほしい。



-・・・ すみません、自分でもよくわからないんですがいきたい会社があります。

-どんな会社かね。

-再生エネルギーの会社でインターンでお世話になったところです。


-そこの会社に決まったのかね。


-・・・実は、まだです。


-・・・・・・そうか、世の中は、変わってきているんだな。


その後学生時代のことに触れ卒論研究のテーマやエネルギー政策について議論をした。


- 理由は分かった。しかし君と面接したときに可能性を感じたことをよく憶えてい 

 る・・・残念だが君の活躍を祈念しているよ。


ほんの少しの時間だったが僕は立ち上がると思いがけず深々とお辞儀した。本当にりっぱな人だと直感した。こんな一介の学生に対しても誠実さを持つ大人がいる。学生時代はいつも同世代の仲間しか見えなかったが社会にでると教授たちとも違うこんなにも全く次元の違う大人がいることに感動した。


そして父親を亡くしたからかもしれないが今まで知ることのない希望が社会にあることを知った。


しかしこのとき自分が希望する会社がこの商社の系列配下にありこの時のことが後に自分の会社人生を大きく揺るがすことを知る由もなかった。

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