第三話 スマイル

その日は青空がどこまでもひろがる秋晴れだった。ダイスケの練習試合の応援にいくため週末の市営球場に向けて川沿いの土手の道をセイジとサブローと歩いた。


JRの鉄橋をくぐり暫く歩きながら陸上競技場に目を向けると競争部の生徒たちが練習している風景が目についた。そして、かろやかに走る女生徒が見えた時 身体からだに電流が走った。セイジとサブローをよそに競技場に土手を下っていくと立ち止まり膝をかがめているその女生徒の日焼けした笑顔から真っ白な歯がこぼれて見えた。目を凝らしていると再び羽がはえたように疾走しはじめた。


-オージ!!!どがんした!?

 いくぞ!


川沿いの道に戻りながらいつかの女生徒の走る姿が昨日のように鮮やかによみがえった。そして身体の芯からき上がる甘酸っぱい不思議な感覚に戸惑いを覚えた。




その後は彼女のことが気になりいつもその姿を探している自分に気がついた。部活の時間帯があわないのか寮の食堂で見かけることはなかった。学校でも中入生とはクラスが分かれているためダイスケたちと同様にすれ違っているようだ。


週末の部活ならきっと競技場にいる。


それからの週末は、部活が終わると自主トレと称して真っ先に川沿いの道を競技場に向けて往復した。そしていつしか彼女が同じ部活の背の高い男子生徒と競技場から一緒に寮に帰ることが分かった。


はかない初恋だったが笑顔からこぼれる白い口元をいつまでも忘れることはなかった。


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