第一話 チャレンジ


【2次面接選考結果につきまして】■■■■■株式会社


メールには、入社を志望したことへの謝意と残念ながらご期待にそえないことが丁重に書かれていた。


短期間ながらもインターンとして素晴らしい体験をさせてもらった会社だった。ある役員の中核事業である再生エネルギーへの取り組みと自然環境と共存する事業目標や縄文から続く日本人の持続可能な循環社会への深い見識にも共感をおぼえていた。 しかしなにより心に強く感じたのは父親のような匂いのする厳しくも優しいリーダーシップにあふれたその役員の指導だった。


大学は推薦枠で進学し奨学金を得てアルバイトをしながらも学業に専念した。決して不採用にされるようなことはないと思っていた。一方友人に誘われて一緒に面接にいった関西系の総合商社はとんとん拍子だった。


どうしてだめなんだ・・・


理由が知りたいと思った。インターンでお世話になった営業部の若手の方に連絡をすると本当なのかどうしてなのか上司も驚いていたという。いちどそちらに行きたいと言うとわかった社内にあたってみると言ってくれた。


数日後に電話がかかってきた。その役員だった。残念だが不採用だ。しかし君は、優秀だからたぶんうちなんかじゃなくもっと大手の企業に採用されるだろうと言われた。

このときこの人のもとで仕事がしたいことを確信した。



商社からは内々定の連絡があった。友人に連絡すると喜んでくれたがどうしても腹落ちできず今すぐにでもその人に会いに行きたいと思った。一方その商社には辞退する旨を伝えた。人事担当者からわかりましたと事務的な返答があった。


そのとき九州のとある街で過ごしたときの豊かな自然の風景が心に浮かんだ。ほっとしながらも今まで感じたことがない勇気が奮い立つような気がした。

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