「納得したかい、あんちゃん。組を乗り換えるなら、今だぜ。兜を土産に忠誠を誓えば、虻沼狂山だって、おめえをぞんざいに扱うことはしねえだろうよ。それともおめえ、長谷川もろとも狂山に潰されてえのか」

 コガネマンが、生徒に説教をする教師の口調で喋っていた。頭が悪い割には、口の回る男である。

「なんなら、俺が仲介してやってもいい。虻沼組に入れば、まず安泰だ。銭に困ることもなくなる。野郎にどんな義理があるのかは知らねえが、長谷川組なんて、とっととやめちまえ。これは、親切心で云ってやっているんだぜ。俺はな、こう見えて、性根が優しいんだ。けけけけけけけけけ」

「……」

「明日の昼1時、ここで落ち合おう。礼金は兜と引き換えに渡す。それでいいな、あんちゃん」

「せっかくですが、お断りします」

「なにっ」

「と云うか、あんたの役目は終わったよ、

 頃合いと判断し、俺は態度と口調を伝法なものに改めることにした。俺も俳優の端くれ、これぐらいのギア・チェンジはお手の物である。

「てめえ、誰に向かって口をきいてやがるっ。それに、コガねんとはなんだ!」

「あんたの仲介は要らない。虻沼邸には俺一人で行くことにするよ。そっちの方が話が早そうだ」

「正気か、てめえ。長谷川の足軽ごときを狂山が相手にするわけがないだろうがっ。思い上がるのも大概にしろ!」

「相手にされるされないは、行ってみなきゃわからんさ。ともあれ、あんたの助けを借りるつもりはない。俺は忙しい。もういい、消えてくれ」

「てめえ……」

 コガネマンの双眸が凶暴な輝きを帯び始めていた。

「てめえ、この俺を虚仮(こけ)にして、ただで済むと思うなよ……」

 俺はコガネマンの奇襲(このモンスターは複数の爆発物を所持しているのだ)を警戒しつつ、

「虚仮になんてしてないさ。貴重な情報を教えてくれたことに関しては、むしろ感謝している。それとも、幾らか包もうか?提供料として」

「ふざけるねえ!」

 吠えざまに、コガネマンが斬りつけてきた。だが、こいつの太刀筋は大体読めている。俺はコガネマンの剣を軽くかわし、擦れ違いざまに足払いを仕掛けた。次の瞬間、コガネマンは「ぎょわっ」と喚きながら、無様に転倒した。

「やめよう、コガネマン。ハンター同士の紛争は御法度の筈だぜ」

 反応はなかった。コガネマンは無言でその場に立ち上がり、不気味な眼つきで俺の顔を見ていた。口辺に得体の知れぬ笑いが浮かんでいた。

「情報はもうひとつあるんだ、あんちゃん」

「へえ。そうなんだ」

「長谷川の兵隊…おめえたちソードマンには賞金が懸かっている」

「賞金?」

「ソードマンをぶち殺せば、報酬が出るのよ。当面、遊んで暮らせるほどの額がな。おめえの首と兜、どちらも、俺がもらう」

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