突入
第三のカメロケラスを撃退した僕の後方に、第四、第五、第六が接近しつつあった。高性能レーダーに匹敵…いや、凌駕する「ルシファーの瞳」が彼らの行動を的確に捉えていた。
体を反転させたカメロたちは、ランス(騎槍)状の甲殻の先端を僕に向けて、まっしぐらに突き進んでくる。三カメロは「空飛ぶ大ランス」と化していた。単純な攻撃だが、それゆえに恐ろしいとも云える。まともに浴びたら、さしもの戦闘天使もただでは済むまい。だが僕は、敢えて動かず、その場で彼らの襲来を待ち受けた。無防備な背中をさらした状態で。
一番槍の栄光を得たのは、第四カメロと第五カメロを追い抜くようにして僕に迫った第六カメロであった。続いて、第四が、少し遅れて、第五が殺到してきた。彼らの脳裏に「串刺しにされるルシファー」の想像映像が浮かんだかどうかは、さすがの僕にもわからない。
ずがっ。べきょっ。ばきっ。ばきばきばき。ばきばきばきばきばきばき。
三つの甲殻が砕け散る音が、無限空間の隅々にまで響いた。三カメロの突撃は、最善のタイミングで現れた「サイコシールド」に阻まれていた。ルシファーの特殊能力のひとつ。あらゆる攻撃を弾き返す透明の盾だ。
盾の出現が、一秒遅くても、あるいは、一秒早くても、作戦は失敗しただろう。僕は防御と攻撃を同時に行った。天才のみに許される離れ業であった。だから、そうではない者は真似をしない方が無難である。それで怪我をしたり、もっと酷い目に遭ったりしたとしても、責任は持てません。
サイコシールドに激突した三カメロを凄まじい衝撃が襲った。標的を粉砕する筈だった攻撃が、自らに跳ね返ってきたのだ。致命的損傷を被った三つの甲殻が、無数の破片となって、虚空にばら撒かれた。
貝なしの三カメロには、苦悶の波動を発する余裕さえなかった。夥しい量の体液を波濤同然に噴き散らしながら、空間の底へ落ち始めた。
「……」
カメロたちの墜落を眺めながら、僕は勝利を確信した。まさかの逆襲に対しては、右手のメイスで応じるつもりだったが、その出番はなかった。
いつの間にか、闇塚を飲み込んだ妖雲がスケールを増し、空の大半を覆っていた。好きなようにすればいい。どこに隠れようが、必ず見つけ出してやる。何者も、ルシファーの怒りから逃れることはできない。
こう云ってはなんだけど、ゴーレム戦とカメロケラス戦が、準備体操の役割を果たしてくれたようだ。なにしろ「パーフェクション・ルシファーへの変身」は今回が初めてであり、さしもの僕も、いささかぎこちない部分があった。しかし、それも解消された。抜群の適応力。自分の才能に自分で驚きながら、僕は雲の中に躍り込んだ。
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