決裂
「待てい、シオール」
僕の背中に魔神闇塚の怒声が迫ってきた。
「どこに行くつもりだ。ここは俺の結界だぞ。いかなうぬでも脱け出ることはできぬ」
僕は「無限空間の出口」を探しながら、魔神の台詞に応じた。
「できるか、できないか、そこで眺めていればいいでしょう」
「愚かな。そんなに痛い目に遭いたいのか。それとも『永遠の檻』に閉じ込めてやろうか」
「うるさいな。大体、あなたは卑怯だ。僕を罠にかけて、ここにおもむくように仕組んだのだ。それが神様のやることですか。せっかく気持ち好く役を演じていたのに」
「そうであろうよ。あれはうぬの理想郷だからな。全てがうぬの都合のいいようにできている。確かに、うぬ自身は気持ちが好かろうさ。だが、読む者の共感が得られるとは限らんぞ。むしろ、不快に思う者が多い筈だ」
「……」
「強情を張るな、シオール。あちらの始末は俺がつけておいてやる。うぬは安心して、俺の作った世界へ行くがいい。活躍を期待しておるぞ」
「読者の共感を得る方法がわかりました」
「なにっ」
「あなたを倒すことです」
僕は決然たる口調でそう云った。前髪の奥に光る「正義の瞳」が、虚空に浮かぶ魔神…否、邪神闇塚を捕捉していた。
「狂ったか、シオール!完全覚醒を遂げたこの俺に勝てると思うか」
「僕は帰(還)る。あなたの傲慢を打ち砕き、自分の世界に還ってみせる」
「たわけがっ。増長小僧め。その鼻、へし折ってくれるわ!」
邪神が咆哮した。次の瞬間、闇塚の周辺に濃厚な黒雲が大量に湧き出した。雷鳴が轟き、雷光が閃き始めた。闇塚の視認が困難になっていた。雲の奥にダンクレオステウスの巨体が消えようとしていた。
「……」
その時、僕は背後に不気味な気配を感じた。腰の愛剣を抜きざまに振り返ると、そこに、牛頭人身の怪物、ミノタウロスが立っていた。怪物は足軽風の鎧を着用し、右手に大型の戦斧を握っていた。邪神の尖兵だ。
ミノタウロスが猛烈な突進を仕掛けてきた。僕がそれをかわすと、今度は肉厚の刃が繰り出された。恐ろしい攻撃である。だが、当たらなければ意味がない。次の瞬間、よけざまに放った僕のレイピアが、怪物の急所を正確に貫いていた。
「!!!!!!」
ミノタウロスは断末魔の波動を響かせながら、空間から消滅した。僕の勝ちだ。直後、稲妻がきらめき、一帯をまばゆい光が包み込んだ。それがおさまると、僕を取り囲むようにして、複数の怪物が出現していた。
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