神様ReLIFE⑥




公衆トイレで用を済まし手を洗う。 だが、手を拭こうとしたところで困った。 ここには手を乾かす手段がなかったのだ。


―――ハンカチ、あるかな・・・。


塗れた手で右ポケットに手を突っ込んだ。 すると中に、身に覚えのないものが入っている。 明らかにハンカチではなかったため、手を自然乾燥させ改めた。 

入っていたのは小さなメモ紙、逆のポケットには有難いことにこの地域で使えるお金が入っていた。


―――これ、神様が入れてくれたのかな?


お金をしまい、メモを開く。


『エイト エイミ 6歳 死亡』


とだけ、書かれてあった。


―――“エイミ”っていう文字がなければ、僕のことにピッタリだけど・・・。


公園のベンチに座り、一人考える。 神様が残してくれたメッセージだと思うと、気になって仕方がなかった。 “エイミ”という人の名前のような文字。 

そう思うと自然と思い浮かぶのが、入院している少女だ。


―――彼女の名前が、エイミ・・・?


確証は全くない。 ただ神様が入れてくれたのだとしたら、意味がないはずがない。 容姿と入院しているという情報しかないため、それを頼りに探してみるしかなかった。


―――エイミという名を当たり、病院を探してみよう。


まずは一番近い病院を目指す。 受け付けにて、少し戸惑いもしたが尋ねてみた。


「あの、すみません。 ここに、小さな女の子って入院していませんか?」


それを聞いた受け付けの女性は、難しそうな顔を浮かべる。


「流石にその情報だけだと探せないかな。 もう少し詳しく分からない?」

「えっと、6歳の子です。 名前はエイミ」


お姉さんは資料を漁り探してくれた。


「・・・ごめんなさい。 エイミっていう子は、入院していないようね」

「あ、そうですか。 分かりました、ありがとうございます」


次の病院へ行こうと足を動かすと、お姉さんは気になることを教えてくれた。


「あ、ちょっと待って。 20年前だけど、エイミという女の子がここで入院してたみたいよ。 6歳で亡くなっているんだけど、流石に同名の別人かしら」

「え!? それって、亡くなった原因とか分かりますか?」

「・・・えっと、産まれた時から身体が弱かったみたい」


―――・・・僕と一緒だ。

―――産まれた時から身体が弱くて、6歳で死んだ。


そこでメモに、自分の名前が書かれていたことも思い出す。 エイミの名前があれば、自分の名前もあるのかもしれない。 自分が死んだのは10年前のはずだが、念のためにだ。


「あの、お姉さん。 他に“エイト”っていう人は、ここにいました?」

「えぇ、確かにいるわ。 でもこれは80年前の情報よ?」

「その人は退院しましたか?」

「・・・いいえ、ここで亡くなっているみたい。 6歳の時にね。 これも偶然なのかしら。 さっきのエイミと同様、このエイトも産まれた時から身体が弱いらしいの」


―――ッ、なるほど、そういうことだったのか・・・!

―――じゃあ僕と話したあの神様も、きっと・・・。


「ありがとうございました!」


お姉さんに向かって深くお辞儀をし、この病院を去った。 行く先は、泉で見た少女が入院している病院。 おそらく彼女の名前はエイミで、歳は6歳のはずだ。 その少女は今も、この街のどこかにいる。

ポケットに入っていたお金を上手く使いながら、たくさんの病院に足を運び探した。



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