神様ReLIFE③
エイトの今の仕事は、天界へと昇ってきた人の魂を家族と巡り合わせること。 魂には色があり、同色で固めていた方が色々と都合がいい。 それの選別に必要な作業のうちの一つだ。
エイトは天使にはなったが、周りで仕事をする天使と同じ立場ではない。 人間としての性質をそのまま生かしつつ、天使としてここにいる。 つまり、特別何か変化があったりはしなかった。
アランはここへ来て、16歳になり最初に仲よくなった天使だ。 見た目年齢も同程度で、打ち解けるのに問題はなかった。
「じゃあエイト、また後で」
「うん」
だが、あと半年もすると離れなくてはならない。 これまでの成長具合から考えると、もう緩やかになったとは思うが、自分の中で半年で移動というルールを決めて守ってきた。
レモネの泉から離れ、呼ばれた仕事を終えて二人は別れた。 エイトにも抱えた仕事があり、それをこなしていく。
「こんにちは。 君、お名前は? 歳はいくつかな?」
エイトが担当するのは、主に小さな子供だった。 決められた場所に、一定の間隔で人がやってくる。 死者は死んだその時の姿でここへ来るため、やはり見た目年齢が近い方が接しやすいらしい。
「君の家族の中で、既に亡くなっている方はいる?」
赤いリボンを付けた少女は、ぬいぐるみを抱きながら立っている。 思い入れの強かったものは、ここへ一緒に持ってくることが多い。
「ふむ、エドワードさんのところか。 ちょっとここで待っててね」
エイトの仕事は話をして、情報を聞き出すこと。 あとは魂の仕分けを担当している天使にそれを照合してもらい、家族を見つけ出す。 しばらく待って情報を受け取ると、担当している子のもとへ戻った。
おそらくは魂の色のためだと思うが、エイトのところへ来る人間は大人しい子が多い。 今もその場から一歩も動かず、ひたすら帰りを待っていたようだ。
「お待たせ。 こっちにおいで」
今度は別の天使に、担当している子を調べてもらった情報と共に引き渡す。 家族とその子を会わせるのは別の天使の役目で、今の少女に対するエイトの仕事はとりあえず終わりだ。
もちろん、家族に引き合わすのは絶対ではない。 話を聞き、できないと判断するのもエイトの役割だ。
数十人程相手をし、休憩の時間が来る。 天使は疲れることはないが、それでも交代制をとっていた。
―――もう一度行くかな。
レモネの泉まで行くと、指定の場所を映し出す。 少女はベッドの上で、静かに読書をしている最中だった。 窓から入ってくる風に、ライトブラウンの長髪が靡く。
本のページが捲れたのを見て、慌てて窓を閉めていた。
「綺麗だなぁ・・・」
「まーた彼女を見ていたのか。 本当に好きなんだな」
気付けばアランが後ろに立っていた。 どうにも気配を隠して、近付いてくるのが得意のようだ。
「彼女はずっと病院にいるけど、どこか悪いのか?」
「そんなこと僕も知らないよ。 ここから見ているだけで、会ったことはないんだから」
「そりゃそうか。 でもまぁ、まだ小さいのにずっと病院だなんて大変だろうな」
再度、泉へ目を向けようとしたところで、また別の天使に呼ばれた。 というより、神様が呼んでいるらしい。 普段神様に呼ばれることはないため、珍しいと思った。
「え、僕、何かしたかな?」
「したした。 神様は力を使えないって、侮辱していたから」
「侮辱じゃないし! 逆にアランは、神様が本当に力を使えるって信じているの?」
「もちろん」
「じゃあ力を使っているところを、見たことは?」
「・・・? 言われてみれば、ないな」
「どうしてそれで、信じることができるんだか」
「俺は神様の力がどうのこうのっていうよりも、どうしてエイトがあんなに彼女に執着しているのかが気になるけどな」
「・・・」
アランの言葉には何も返さず、エイトはこの場から立ち去った。
―――どうして彼女に固執するのか、ね。
―――それは、彼女が僕の生まれ変わりだからだよ。
―――・・・多分だけど、ね。
そこに何ら確証はない。 だが、エイトは何となく“そうなんだ”と感じていた。 彼女を一目見た時から、他人のような気がしなかった。
もちろん、一目惚れだとかナンパしようだとか思っているわけでなく、だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます