おしかけ☆ぶんげいぶ

「ふぅ……」


 溜息を吐きながら手元のインスタントコーヒーに手を伸ばす。進まない作業。面白いとは思えない文章。作業時間と進行度が比例しない。こんなことは今までもあったけど、締切がタイトな分きつい。

 ぬるくなったコーヒーをすする。全体の進行度は半分といったところだろうか。この辺に来てぐっと速度が落ちた。書いても面白くない、修正しても面白くない、そして全部消す。負のループに閉じ込められていた。

 もっと面白くなるはず。けれどもその方法が浮かばない。脳から湧いてくる描写の間欠泉がせき止められた。


「どうすっかなー……」


 打開策もなければ、改善策もない。ただ無為に流れる時間と、目の疲れだけがこの数時間の成果だ。このまま一歩も進まぬまま時計の針が動くのを眺めるのはやめたい。

 コーヒーを淹れ直そうと席を立った瞬間、インターホンが鳴った。なんだろう。どうせ宗教の勧誘か訪問販売だろう。無視することに決め、ポットに水を入れる。

 ――ピーンポーン。ピーンポーンピーンポーンピーンピーンピピピピピ。


「連打するな!」


 僕はカップを置いて勢いよく玄関の扉を開けた。どこのいたずら小僧だ!


「ほう、ここが君の家か」

「……なんでいるんですか」


 扉を開けた先にいたのは見慣れた顔だった。ニコニコと笑った部長がひらひらと手を振っている。思いつく限り最悪の客人だ。


「遊びに来た」

「なぜ事前に連絡をしないんですか? それにどうして僕の住所を?」

「はっはっはー」

「曖昧な笑顔で誤魔化しながら身体を捻じ込んで来ないでください!」


 悪徳セールスマンもびっくりの動きである。まるで悪霊のように扉の隙間に身体を入れ、扉をこじ開けた。


「おいすーでござる」

「来ちゃいました、てへ」

「……てへ」

「待て。他の三人がいるとは聞いていません」

「言ってないから」


 四人が僕の制止も聞かずに部屋に雪崩れ込んで来る。迂闊だった。一人いたら四人いると思えがモットーなのが文芸部じゃないか。


「エロ本やAVはどこに隠しているでござるか?」

「持ってないし、持ってても教えませんよ!」

「……そう言うと思って途中のコンビニで買ってきた。……AVも持ってきたぞ」

「???」


 なんで『お前んちゲームのコントローラーないと思って持ってきたぞ』みたいなノリでエロ本持ってくるの!? 遊ぶのに必須なの!?


「ちょっと次郎殿!? このメイド、ヴィクトリア風の服のくせに髪がロングでござるよ! ヴィクトリア時代に髪を結ってないのは娼婦だけでござる! これはメイド好きとして一言言わなきゃ気が済まないでござる」

「……AV女優なんて娼婦みたいなもの。……だから設定には反していない」

「なるほど。どれだけ外面を取り繕っても所詮は娼婦。そういったメタ的な意味を込めているんでござるな。中の世界に没入させておきながら、結局のところこれはAVなのだと教えてくる。そういった二面性を視聴者に味合わせている……深いでござる」

「人の家の玄関でエロ本鑑賞会を開くな!」

「ガーターベルトがパンツの上を通ってます! これじゃだめですよ!」

「歌子はちょっと黙っててくれる?」


 今僕の部屋が荒らされるかどうかの瀬戸際だから。もうだいぶ手遅れだけど、やるかやらないかは大違いなんだ。


「友樹! エロ本どこに隠してるんだい」

「勝手に家探しを始めないでください」


 くそ、こいつらただの災害だ。台風と一緒で止める方法が無い。


「机の底に六百ドラクマで」

「本棚で別のカバーをかぶせているに三百フランでござる」

「……ベッドと壁の隙間に四百マルク」

「一人暮らしだから隠してないに五百ギルダー」

「人のエロ本の隠し場所で賭けをしないでください。しかもその通貨、今は全部廃止されています」


 僕の家を競馬場か何かだと勘違いしているんじゃないだろうか。


「で、進捗どう? 進んでいるかい?」

「えーと、シナリオに関しては――」

「いえーい! かんぱーい!」

「次郎殿、火貸してほしいでござる」

「……『後輩の家殺風景過ぎて草』と」

「ちょっと待ってください。人の家で家主を無視して酒盛りと煙草とツイートを始める馬鹿どもを殴り倒してくるので」


 常識知らずの先輩三人を殴り飛ばし、全員正座させる。


「勝義先輩」

「メンソールだから大丈夫かと思ったでござる」

「歌子」

「ビールだから大丈夫だと思いました」

「次郎先輩」

「……特定されそうな情報は載せてないから大丈夫だと思った」

「全員吊るす」


 流石の僕も堪忍袋の緒が切れた。この獣たちに躾をしなくては。


「やばいマジでござる!」

「……やめっ、やめろ後輩!」

「ああ!? 次郎さんが捕まりました!」


 引っ越し用のビニール紐が大いに役に立った瞬間だった。




「さて、じゃあ仕切り直して……かんぱーい!」


 グルグル巻きで吊るされていた次郎先輩を尻目に他の先輩たちは床に酒瓶を広げていた。少し目を離した隙に床に掃除機と雑巾がけがされ、酒盛りの準備が整っていたのだから驚きである。ちなみに終わるタイミングを見計らって次郎先輩は脱出していた。


「で、僕のは?」


 家主を差し置いて乾杯している部員たちに一言物申したい。なぜ僕を置いて乾杯している? いじめか? いじめなのか?


「はいお米のジュース。甘口で美味しいよ」

「……麦のジュース」

「これマティーニのジュース。カクテルの王様だ。オリーブが入ってないから実質ノンアルコール」


 つまるところ全部酒である。最後に至ってはまったく誤魔化せていない。


「こうジンとベルモットをシェイカーに入れて、シャカシャカと振るんだ。チャーチル、007と並みいる男たちが愛用した最高の酒だよ」


 床に座ってバーテンダーよろしくカクテルを作り始める部長に溜息を吐く。最初から酒飲む気満々じゃないか。


「うわぁーかっこいい! 香苗さんどこで学んだんですか?」

「趣味だよ。女と酒を知らずに過ごす者は一生を阿保で過ごす、というどっかのことわざに従って、時々フィギュア相手に酒を飲んでいるんだ。ほれ友樹も」

「人を急性アル中にするつもりですか。死にますって」

「酒を飲もうが飲まいが人間いつか死ぬんだ。なら飲んだ方がましだろう」


 僕は長生きしたいんです。早死にしたくないんです。笑って犯罪を犯せるほど陽気な人間でもないんです。


「はい友樹殿。コーラでござる」

「ああ、ありがとうございます……。って酒だこれ!?」

「いや、バカルディのコーラ割りでござる。酒の苦みとコーラの甘みが美味い! って感じでござるな。オールライトでござる」


 何一つオールライトじゃない。未成年飲酒はNGである。


「……アルコールパッチテストを保険の授業でやったことはあるか?」

「ええまあ、ありますけど……」


 高校時代、授業の小ネタとしてやった記憶がある。


「……どうだった?」

「赤くなりませんでした」

「……じゃあ大丈夫だ!」


 違う、そうじゃない。酒に強いとか弱いとかいう問題じゃないんだ。

 そんな僕の指摘はなんのその。先輩たちはポンポンと酒瓶を開けていく。タイムアタックでもしているのかと思うほどの速度だ。ほんの一時間ほどで先輩たちは赤ら顔になり、完全に酔っぱらいと化していた。


「さーて、盛り上がったところであのゲームを始めるでござるか!」

「イエーイ!」


 全員が普段の二割増しで歓声を上げた。そして勝義先輩が紙と鉛筆を配り出す。紙にはいくつかの四角とそれを繋ぐ線がある。その天辺は一つの四角であり、樹形図を思い出させる。


「これは?」

「連絡網でござる。小学生のころ、あったでござろう?」

「ああなるほど」


 これは連絡網か。樹形図のてっぺんから繋がって行く連絡網だ。

 しかしこれがゲーム? 聞いた事も見たこともないゲームだ。


「まず適当なところに自分の名前を書くでござる」

「ふむふむ」

「そしてそこ以外の欄を好きなヒロインの属性、もしくは名前で埋めるでござる」

「そんなこったろうと思ったよ!」


 紙を思い切り床に叩きつける。この人たちが何か面白いゲームをするかもと考えた僕が馬鹿だった。この人たちがボードゲームなんてやるわけないのに。


「真面目にルールを聞こうと思った自分をぶん殴りたい!」

「ではゲームスタートでござる!」


 勝義先輩の合図とともに僕以外の全員が紙に飛びついた。目が血走っていて正直怖い。センター試験を解く高校三年生並みの真剣さだ。


「ふむ、金髪縦ロールお嬢様から連絡を受けて、それを誰に回すべきか……。同級生の、異性の家に電話など掛けたことがなく、それゆえたどたどしくなってしまったお嬢様の連絡。その余韻を持ちながら誰に伝えようか」

「恥ずかしがりの無口系少女に対して「ごめん、電波が悪くて聞こえない」と言って同じことを大きな声で言わせるんです。そのたびに恥ずかしそうに電話の向こうで顔を赤くするんだろうなぁ。楽しみで仕方ないです」

「……しっかり系先輩キャラから受け取った連絡をドジっ子系後輩に回す。いや、逆か……?」

「不思議っ娘から連絡を受け取り、クール系に伝えるでござる。一見相性の悪いこの二つの属性の仲立ちを果たすことこそ拙者の使命!」

「この人たち人生楽しそうだなぁ」


 たった一枚の紙でここまで盛り上がれるのだから、人生楽しくて仕方ないに決まっている。その精神が一ミリたりとも理解できない僕は何一つ楽しくないが。


「君もやってみるべきだ。何事も経験だよ。トライせずに物事を決めつけるのは愚か者のやることさ」

「やらなくても分かることをやるのも愚か者のやることでは?」

「いいからやる! そっちの方が面白いだろう! 日本には騙されたと思ってという便利な言葉があるんだ! 騙されたと思ってやってみることだ!」


 その言葉を言われた人間は大体騙されているんですけど、というツッコミはしない。黙って言葉に従う方が楽なのだ。この人に口喧嘩で勝てるわけがないのだから。

 紙とペンを受け取り、床に広げる。さて、どうするべきか。


「うーむ」


 なんだ? この連絡網の一番上、つまり連絡の最初は教師以外にできる人間はいないのではないだろうか。というわけで一番上に「教師」と書く。


「なるほど、Cパターンか……」

「え!? じゃあAとBはなんですか!?」


 ここに教師以外を書く理由があるのか!? 他に何を!?


「ほら、続けたまえ」

「ちょっと待ってください! AとBのパターンを詳しく!?」

「やかましいな。君がそう思うならそれでいいんだよ。他人を気にするな。エロに解答はあっても正答はない」


 何か良いことを言っている風だが、別に良いことは言っていない。


「というかこれって自分の前後だけ埋めればいいんじゃないですか? なんで一枚全部埋めるんですか?」

「……馬鹿野郎! お前分かってねえよ」

「あ、すんません」

「……連絡網を埋めるってことはクラスメイトに誰がいて、近くに住んでいるか遠くに住んでいるかを全部決めるってことだ。自分の前後だけ埋めるのではリビドーが消化できない」

「死ね。僕の謝罪を返せ」


 僕が馬鹿だった。普段から酔っぱらってるような生き方をしているこの人たちが、酒を飲みながらまともな言葉を発するわけがない。余計酔うだけだ。


「何しに来たんだほんとに」

「私たちは友くんのことが心配なんです。もしかしたら文章が進んでいないかもしれない。それを誰にも言えずに悩んでいるかもしれない。そんな時は仲間である私たちが助けてあげないとと思って」

「歌子――」


 見ると先輩たちが静かに頷いていた。

 そうだ。僕らだって仲間だ。皆助けに来てくれたのだ。これが絆というやつか。


「そのストレスのはけ口として近くの女性を襲うかもしれない! と思いまして」

「――感動を返してくれ」


 一瞬でも友情に近い何かを感じた僕が馬鹿だった。僕らの間に情などというものは存在してはいけないし、存在してほしいとも思わない。


「ここに勝義さんを用意しました。好きに性欲を発散してください」


 勝義先輩がTシャツを脱ぎ、セクシーポーズを決める。目に毒だ。慣用句としてではなくそのままの意味で。


「できるか!」

「先輩として一肌脱ぐでござる。さあ、拙者の腹の脂肪は胸の柔らかさに似てると評判でござるよ。デブの数少ない活躍シーンでござる。デブ専向けエロゲは数が少ないんでござるよ?」

「……歌子から女性向けボディソープを借りて塗り込んでおいたから、匂いの点でもばっちりだ。目を瞑って好きな女の子の姿を思い浮かべろ」

「何がばっちりですか!?」

「おっぱいはつつく派? 吸う派? 揉む派? 撫でる派?」

「どれも嫌だ!」

「……なるほど。勝義!」

「任せるでござる」

「やめろ! ケツをこちらに向けるな! にじりよって来るなぁぁぁぁ!」


 勝義先輩の白桃が僕の心の岩盤に、永遠に記憶を刻んでいった。




「じゃ、私たち帰ります!」

「さよならでござる」

「マジで帰れ!」


 荒らすだけ荒らして台風たちは帰って行った。ふざけないでほしい。せめて片づけはしてから帰れこの野郎。クソ、仕事が無駄に増えた。

 散乱した空き瓶を数えながらゴミ袋に放り込んでいく。ただでさえ時間が無い時になぜこんなことを。本当に邪魔だけしにきたなあの人たち。

 ゴミ袋の口を縛っているとインターホンが鳴った。次は一体なんなんだ。若干イラつきながらもドアを開ける。


「やっほー」


 そこにいたのは部長だった。まるで今日初めて会うみたいに手を振ってくる。

「は? ループしてるんですか?」


 いつから二周目に突入したの? もしくはクイックロード? できない僕が繰り返してるの?


「違う。ただの現実。言い忘れたことがあってね。ボクらもただ君をからかうためにここに来たわけじゃない」

「え? 嫌がらせのために来たんじゃなかったんですか!?」

「ボクらは後輩のことを常に想っているというのに……これが親の心子知らずというやつか」

「勝手に僕の親にならないでくれません? あなたが母親とか勘弁してください」

「まあ他の三人はただ遊びに来ただけなんだけどね」

「間違ってないじゃん……」


 本当に邪魔をしに来ただけだった。とっとと追い返せばよかった。


「言っておこうと思ってね。君、自分の中のエロを知らないんじゃないかと思って。それを伝えに来たのさ」

「……どういうことですか?」


 それは純粋な疑問だ。エロを知らない、なんてことはないはずだ。なんせエロ本もエロ漫画も散々読んだし、そもそも今作っている物がエロゲなんだから。

 それに僕とていい歳した男だ。エロなど当たり前のように触れてきている。


「エロを知っていても、自分の心の中の欲望を知らないことは多い。無意識のうちに汚い物として目を背けているんだ」

「そんなことは……」

「では聞こう。君は何に興奮を覚える?」

「ちょっ! 結局それですか! だから――」

「ボクは真剣だ。この上なく」


 いつものふざけたトーンではなく、聞いた事が無いような真面目な眼差しだ。誤魔化すことは許さないと僕を見つめている。


「君には文章にあらん限りの欲望と心情を込める義務がある。そこに歪みがあってはいけないんだ。自らの欲望、下心、エロに素直でなくてはならない。でなければ、真のエロを捉えることは不可能だ」

「僕にとってエロとは、エロいこととは――」


 僕が興奮する物。大きな胸、お尻。そりゃ可愛い女の子が裸でいれば興奮するだろうし、それをエロいと思うだろう。そんなのは当たり前だ。

 じゃあそれが僕にとってのエロの象徴かと言われれば、どう返すべきなのだろう。胸や尻というのは誰しもが持っている下心のステレオタイプであって、僕にとっては別の何か、もっと深い何かがあるんじゃないだろうか。

 一文字で表す、記号一つで表す。エロを知り、自覚し、表現するのがこんなに難しいとは思わなかった。

 僕は言葉に詰まらせた。体内にあるこれをどう表現すればいいか分からない。


「アガペーとエロースの違いなんて君には求めていないし、性を通して自分の心を見つめ直せと言っているわけでもない。ただ、君の書くべきことを再確認してほしいんだ」


 香苗先輩が僕の胸に手を置く。服を超え皮膚を超え肉を超え――そして奥深くにある僕の感情に触れようとしている。


「人間にはね、言葉にできるエロスとできないエロスがあるんだ。できるエロスとは、例えば友達と修学旅行の夜や居酒屋の席で口から漏らすことのことを言う。それこそ馬鹿話をして他人の性癖を笑ったり、自分の性癖を笑ったりだ。そしてできないエロスとは、誰も見ないパソコンの履歴にすら残すのが恥ずかしいような、自分自身にすら隠した欲望を言う。君はまず、心の奥にあるものを知るべきなんだ」


 心の奥、と僕は呟いた。部長は頷いて軽く僕の心臓の上を叩いた。


「恥とは、心に耳を傾けると書く。ならば自らの心を知らぬものに、恥ずかしい作品は作れない。己を知らぬ者に、エロに辿り着く権利は無い」


 心に耳を傾ける。部長が何度も言っている、僕の心の底の欲望。


「だから聞こう。君の答えを。君にとってのエロとは何かを。楽しみにしているよ」


 そして部長は「頑張れ」と激励の言葉を残して僕の前から去って行った。まるで台風の様で、それでいて鋭い矢のように僕の心を突き刺していった。

 とりあえず――。


「外でやる話じゃなかったなぁ」


 隣の女子大生らしき住民が僕の顔を見た瞬間に小さく悲鳴を上げたのは気のせいではないだろう。不審者として一階の掲示板にポスターが貼られないことを願う。

 





 夢を見た。誰かが僕のシナリオを見て嗤う夢だ。先輩たちのように茶化すわけでもアドバイスをするわけでもない。蔑み、踏み潰し、見下している。

 やめろ。嗤うな。馬鹿にするな。僕はもっとできるんだ。下手くその僕をあげつらい、踏みにじって行く。

 ゴミのように、クズのように。僕が紡ぎ出した文章には一片の価値もないと、へらへらと笑いながら何もかもを分かっているふりをして批評する。

 言い返したい。言葉が出ない。吐きそうだ。胃の中がひっくり返りそうで、頭がまるで荒波のようにぐちゃぐちゃに揺れる。

 だけど奴らはそれを見て尚更笑う。才能が無いくせに、無駄なあがきをして、みっともなく這いずり回っていると。

 喋るな。喉が詰まる。逃げようとするけれど足が絡まって動けない。耳を塞ごうとするけど頭の中に響いてくる。目を瞑っても瞼の裏側に貼り付いている。

 何より最悪なのは。

 こいつらの言葉に全て思い当たる節があることだ。

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