第58話 ファリの怒り

蒼白になり 怒りに満ちた震える声でファリが言う


冷静な顔で 静かな声でレーヴは話しだす 

だが瞳に涙が浮かんでいる


「落ち着いてファリ 確かに犠牲は大きかった

ファリの家族も先祖達も ナギも 大きな犠牲を支払わされた


他のファリ達と同じ立場の部族たちも・・数百年間ずっとだ

・・ナギの事 初めて聞いた 


生贄の儀式と酷い扱いの為に悪夢にうなされて

心のカウンセリングや薬の事はエルから聞いてたけど・・ナギにされた事

姉や兄がいて 犠牲になったのは 初めて聞いたよファリ


当然だよね 恋人のファリにやっと最近になって打ち明けた

僕も とても悲しいよ 僕にとっても大事な大好きな親友だよ

知らない事にするから」レーヴは勤めて優しく 怒りに震えるファリに言葉をかけた


「生贄の儀式の内容も変化して 美しい者達も対象になった

でも もう二度と生贄の儀式は起こらない


多分 喧嘩したのは ファリの先祖がそれを止めようとしたから

ファリの先祖は 正しい伝承を伝え


多分 血が交わる事で

子孫が適応出来ると考えた それに恋をしたから」


「あ、ほら 喧嘩の会話の記録もある

そう書かれてる・・彼・・船長はそう考えなかったけど


船長は 本来の原住民を護りたかった

当時の連邦の規約の一つでもある 友好を結んだ惑星の原住民を護る事

大事な記録だよ ファリ」


「とにかく 日記を見よう

それから この船のデータも併せて僕らの小型艇と僕のPCに移すからね」


「わかったレーヴ 有難う 俺が口留めを頼む前に

自分から 話さないと言った 感謝するよ」


まだ青い顔で 震え 涙が浮かんだ顔でファリが言う


「・・だが正直 耐えられないかも知れない」


「当然だよファリ・・被害者だもの・・

大事なナギ・ナジュアリも

辛くなったら 僕が作業をするよ 僕も辛くないと言えば嘘になるけど

科学者だから・・この担当は僕だもの なんなら 席を外すかい?


君の役目はサポートと僕を護る事 もう十分に果たした

生体センサーの方に集中すればいい

 

仕事が済んで帰れば 

皆の暖かい笑顔と食事が待ってる 大事なナギ・ナジュアリも待ってる」

レーヴ

レーヴはそっとファリの背中を撫でる


「まだ耐えられる・・まだ」


「それに此奴の儀式を始めた理由や経緯とやらを ぜひ知りたい!

俺の先祖ファリアスの話も・・・」震える手を握りしめるファリ

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