第44話 予兆 宇宙通信 笑う 砂の魔人

夢のような場所で 俺は 卒業を迎えて

それから・・更に数年が過ぎて 

 

レーヴとエルの父親の団体(連邦)の仕事をして 

この惑星フォルトーナで暮らしていた


「半年後には 戻るよ」

途切れがちな宇宙回線を使ったネット電話で 画面に向かい

レーヴと妹のリリーシュに笑いかけた


「待ってるね! あ!お兄ちゃんが送ってくれた

冷凍茶づけセットと梅オニギリセット すごく美味しかった!

私達の星でも お米とかいう穀物育てられるかしら?」


「さあ・・大量の水が必要な植物らしいが

まあ 改良種もあるらしいから 今度詳しく調べて 可能なら種を送るよ」


「こっちも 砂魚サマクの干した分が大量に届いた 

久しぶりに焼いて食べたが上手かった・・・有難うな」

俺は昨日食べた あの砂魚サマクの味を思い出して笑みが浮かぶ


「砂魚サマクは 今度 他の星にも養殖が始まって 

岩だらけの星の住人がとっても喜んでいたよ 

なんでも泥の中で養殖してるらしい

品種改良に成功したレーヴのおかげだな・・。」


「ああ そうだ!・・リリーシュ お腹の赤ちゃんは 大丈夫か?」

「うん お兄ちゃん! 赤ちゃんが大きくなったら

そっちの惑星にも 旅行に行くから」


「ああ!

ナジュアナリさんの妹のアファアちゃんと弟のウインダムちゃんに

会った?

ナジュアナリさんは 惑星フォルトーナに移住するから

二人を先週呼び寄せたって」


「ああ 昨日会った・・ずいぶんと大きくなった・・。」

「それから リリーシュの腹も本当に大きくなった・・。」

声が低くなる


目が自分でも 釣りあがってゆくのが わかる


「 なあ・・レーヴ」

とチラんと画面ごしに軽く睨みながら 

レーヴの方を見る


「本来なら・・先月のフェスタ

惑星フォルトーナの空中都市での大きな祭りには 

二人でこっちに来るはずだっただよな


花火や 小型飛行機のショーは素晴らしかったよ

見せてやりたかったな・・


昼間は 青い空の中を

小型飛行機が空中で弧を描いたり 見事な技だった


夕暮れ・・・

濃紫の空に浮かぶ 二つの月・・

その中に浮かぶ 花火・・

花火は艶やかな花が 咲くように幻想的で 美しかった・・

まあ・・ビデオレターは送ったが・・

やはり ライブで見せたかったよ・・

それにエル達が ショッピングに連れて行き

リーシュの為のドレスやら宝飾品アクセサリーも

見立てる予定だったんだが・・

まあ・・こちらもエル達が 服やら何やら

せっかくだからと・・アリア祖母さまの分まで・・

先日見立てて 

つい昨日 その贈り物を郵送したが

こちらの荷物は 数日中に到着予定だ


それとは別に部族の女性用に頼まれていた 

大量の生地とか

服とか・・刺繍用と織物用の糸とか・・

ああ服の型紙の資料も同封して・・


それから 部族の子供らには

大量の珍しい御菓子に 親父殿たちには酒が20ケース

かなりの大荷物になったよ


その辺の詳しい事は 本当ならリリーシュでないと分からないだが・・

本人が来れなかったから・・仕方ない


・・・・・・

今回来れなかったのは まあ・・レーヴのせい・・かな?」

「本当に・・リーシュの腹も大きくなった」


やぶ睨みがちに・・更に低い声で・・繰り返す・・


「・・う・・まあ・・勢いって事で・・あははは」

「おい・・レーヴ 

相手は俺の誰より可愛い妹なんだが?」


「はい! 絶対 幸せにします! まかせて下さい!」

赤くなりながら レーヴは高らかに宣言した


「あ~一応 こっちでも結婚式あげたけど

新婚旅行をかねて そっちに戻って それから

もう一度 式をあげる予定だけど」


「ウエデングドレスは 腹に負担がかからないように

作り直したって 聞いたぞ・・・レーヴ・・。」


・・天然だと油断してたら 手が早い


「いや・・その・・」

赤くなり照れながら そして 少々 バツが悪そうに 

レーヴは ひきつりながら笑って答えた


「まったく」

「しかし・・ファリが 

あの難しい学校を 僅かな時間で卒業出来るなんて

びっくりだよ! 

もう小型宇宙船なら簡単な修理と操縦も出来るだって!」


「まあね・・操縦とか 射撃に体術の方が面白かったけどね・・

それに 教え上手なナギ・ナジュアナリという家庭教師様のおかげ・・」

と俺ファリ


画面がまた 途切れがちになる


「回線の状態が悪いな・・」


「ああ・・予想されてる10年後の大規模な磁気嵐ではないが

小規模な磁気嵐が起こりつつある


二ヶ月前の磁気嵐と同じクラスらしいが

あの時は 一週間 地下都市に逃げ込んだよ」


「被害も出た 地上にまで影響があって大嵐だ」


「建設中の水の塔が1基 破損 

多くのけが人も出たけどね・・。

やっと着手しつつある 南半球の水の塔の計画も遅れる」

真顔で 彼は重く言う

「磁気嵐が発生しても 惑星の地上に影響があるなんて

大昔に一度 確かにあったし 今度の予想される10年後の磁気嵐でも

地上に影響があることは予想しているが

2ヶ月前の規模の磁気嵐で ここまで被害が出たとなると

10年後の磁気嵐の時には 一体何があるやら・・・」


「大昔の記録やら照らし合わせて

備えだけは しないと」レーヴは言う ため息まじりの声


「とりあえず 一部のオアシスにはドームで包む事になって

そっちの工事は急ピッチで進んでる 八割は完成したよファリ」


「今では 部族同士の対立もなく 人々は惑星の改造

テラ・ホーム計画に参加しているよ」

微笑むレーヴ


「東の塔も 先日 修理が完了して

あちらも 人工の湖が完成して それと新しい水路が引かれた

それから 磁気嵐対策のドームも一緒に設置して作った」


「そうか あの東の塔 通称エアリス」


「他の塔の方も進んでるよ ファリ 惑星中に 緑のオアシスが広がる」


「本当に 砂の魔人・・か

あの磁気嵐の事が心配であるけど」レーヴは呟く


不安・・不安感が頭をよぎる

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