第43話 エルとの食事

「あ! 次の会場に行かないと

演奏はまだ 次の会場であるから・・じゃあ ファリ また明後日 学校でね!」


「ああ!またな!」俺は手を振った


彼は白い人魚のように 優雅に泳ぎ去っていった


ナギ・ナジュアナリの兄や姉なら さぞや美しかったのだっただろう

彼や彼の弟や妹の美しい面立ち


犠牲になったのは 彼等だけでなく

俺の祖父達も


もし・・・もう少しだけ 俺達の惑星に水があったなら

生贄の儀式の習慣など 生まれなかったに違いない


あるいは もう少しだけ 早くレーヴ達の連邦の組織の星の箱舟が

惑星に戻ってこれたなら


せめて・・ナギ・ナジュアナリの兄や姉は助かったかも


エルが話しかける

「ずいぶんと長く話しこんでたけれど・・?」

「・・話せば 長い話だよ エル

それに ちょっと故郷での辛い話もあって 今は上手く話せない・・」


「エル・・君の話が聞きたいよ・・楽しい話がいい

今度の3D映画の話でも・・なんでもいい・・」


「うん わかったわファリ ますは食事しましょうね!」

そっと エルがささやくように 身体をよせて

近くで言う

「とても悲しそう・・ファリ・・。」


「そう? 」と俺


「・・・あの苛酷な砂漠の星の人々に 伝承の中の残酷な砂の魔人は

どれだけの犠牲を払わせるのか・・と思うと・・悲しくなったんだ」

「ファリ?」


「エル・・この楽園で君という天使に出会えて よかった」

「今は食事だ・・エル」

上の住人達の為に用意されている建物が幾つかある 

その中には ホテルやレストランなどの設備も


「今日は豪華な食事をして帰りましょうね!」彼女エルは笑う


建物に下から潜りこむように入る

階段を上がると そこは 水のない空間 ワインレッドのような深い色合いで

統一された内装 


「上の都市でも 見たことない内装だけど?」俺は水中服を脱ぎながら

問いかける


「ふふふ ここはね 連邦が始まった惑星の一つ 地球の欧州(ヨーロッパ)の

19世紀ごろのアール・ヌーボー?だったけ?

地球の大昔の風俗をテーマにしたレストランなの!」


「そうなのか よくわかないけど 綺麗だとは思うよ エル」


「ふふふ・・ファリ

あと 地球の東洋風の日本とか 他のアジアをテーマにした

レストランもあるのよ


日本のレストランは 畳とか障子とかあって 

円筒形の竹という植物の中で ご飯を食べるの」とエル


「へえ~」

「ここは 娯楽都市でもあるから 他にも沢山楽しい施設はあるわ!

今度 また来ましょうね ファリ」エルは ほがらかに笑う

俺は笑ってうなずいた


彼女エルは ダイエットにいいの!といいながら

ステーキ風のコンニャクと

ほうれん草とジャガイモのポタージュスープを頼み

(スープはダイエットには 少々不向きだが・・)


ダイエットという言葉に

絶対的に食料や水が不足していた惑星に育った俺としては

少々 複雑な思いもあったが・・

エルが綺麗で 幸せなら それでいいか・・とも思う事にした


ステーキ風のコンニャクは

ナイフとフォークで上手に切り分け小さくして 

その愛らしい口元に運ぶ

「ん!美味しいわ!」エルは嬉しそうだった


それから 俺は地球の日本風という

米と呼ばれる穀物の上に 

鮭(サケ)という魚が乗ったものを頼んだ


鮭の身は ピンク色で 

その魚と米という穀物が茶碗に盛られて 

ワサビという緑色の練ったムースを少しばかりをのせて 

更に その上に鮮やかな緑色の熱い液体が注がれる


緑色の液体は 緑茶と呼ばれるものらしい

料理の名前は お茶づけ・・と言った


本来は箸(はし)という二本の棒を使い食べるらしいが

最初は それはぎこちなくて上手く掴む事が出来ない


とりあえず 今回はスプーンで食べる事にした。


楽しい時間 俺達は 夜遅くに家に戻る

「じゃ お休み」エルは 俺の唇に軽くキスをした

「えええ!」 

彼女は笑い 自室に戻った

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