第4話:玄米購入

 深く考える必要など何もない、とういうよりは他に方法などない。

 ラノベやアニメで使い古された手法、異世界との交易だ。

 日本では安いが異世界では高価な物を、異世界で売って金銀を手に入れて日本で換金して利益を得る。

 問題はその手法が現実に使えるかだが、それは氏子衆に聞けばわかる。


「ただ神々の世界でも食糧を買うには対価が必要になる。

 この世界では胡椒は幾らくらいの値で取引されているのだ」


「はい、胡椒1オンス(30g)で小銀貨1枚でございます」


 俺はだいたいの重さを確認するために日本の小銭と比べてみた。

 そうする一円硬貨と同じくらいだった。

 更に詳しく話してみると、金と銀の交換比率は12対1だった。

 定番通り胡椒で大儲けできそうだが、問題はこの世界が戦乱の世だという事だ。

 下手に大儲けしてしまうと、近隣の村が襲ってくる可能性が高い。

 だからその点も確認しておかなければいかない。


「はっきりさせておきたいのだが、この村は強いのか、それとも弱いのか」


「女神様の教えを守って他人を襲った事はありませんが、そうでございますね、実際に戦うとなると、強い方かもしれません」


 よく話を聞いてみると、どうも石姫皇女は愛と豊穣の神と考えられているようで、近隣に弱い村があっても攻めて食糧を奪ったりはしなかったようだ。

 それに、水源に限りがある世界でもあるようで、大きな村でも養える人口は500人程度、都市でも極小の所は200人以下の場合もあるようだ。

 そしてこの村の人口は比較的多めの300人もいて、村内に竹藪があるので、竹槍という武器も豊富にあるという。


 だがここ数年は寒さが厳しく収穫量が減っているため、葛粉を食べたり行商人まがいの事をして食いつないでいるという。

 少人数で行商すると村人や盗賊に襲われるので、村の男衆が50人程度の集団を作り、竹槍で武装して木工細工を売り歩いているという。

 流石に襲ってきた盗賊を返り討ちにするのは許されるらしい。

 

「分かった、交易は今後考えるとして、とりあえず食糧を神の世界で買ってくるから、ちょっと待っていてくれ」


「生ケーキとアイスクリームケーキを忘れるでないぞ」


 俺は石姫皇女の言葉にイラっとしながら日本に戻った。

 面白い事に時間が止まっていたし、誰も何も気がついていなかった。

 俺は急いで幼馴染がやっている米屋に向かった。

 あの異世界の状況だと、美味しい事よりも栄養価と量が大切だと思ったのだ。

 俺がウェブ小説を書くときに調べた範囲では、中世の日本では美味しい新米よりも炊いた時に量が増える古米の方が2割ほど高かったのだ。


 俺は30kg入りの玄米を10袋買って神社にまで運んでもらった。

 1人で300kgもの玄米を神社まで運ぶのはとても無理だ。

 時間が止まって誰にも気がつかれないのなら、人に頼った方がいい。

 江戸時代の男が1日に食べていた米の量が5合で750gだった。

 300人が1日に食べる量を確保するには、225kgも必要なのだ。

 これだけで8万7000円も使ってしまった。

 更にイチゴをふんだんに使った5号サイズの生ケーキが4644円

 ストロベリー、クッキーバニラ、チョコレートチョコチップの3種を使った、というか3種6個を合わせたアイスクリームケーキが2500円。

 早く交易で儲けなくては俺が破産してしまう。

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