第3話:残念女神

「残念だが氏子衆、神々には役割や担当があるのだ。

 戦については戦の担当の神がいて、女神様や俺に勝手にはできないのだ。

 可哀想だが、この国から戦をなくすことはできない」


「「「「「あああああ」」」」」


 異世界の氏子衆から絶望の悲鳴が上がったが、俺にはどうしようもない。

 そもそも神々にこの世界の戦いを止めさせる気などないのだ。

 むしろ戦いを激化させて楽しんでいるのかもしれない。

 石姫皇女から伝わる波動や、他の配祀神の波動にはそんな雰囲気がある。

 だがその分、俺は何かしてやりたいという気持ちが強くなってしまう。

 このままでは、この世界の氏子衆が全員餓死してしまう。


「その代わりと言っては何だが、神の世界に戻って食糧を集めてやろう」


「おい、こら、何を言っているの広志。

 私はこの世界を見て歩きたいの、そんな余計な時間は使わないわよ」


 石姫皇女からは確かにこの世界を愉しみたいという気持ちが伝わってくる。

 だが同時に、氏子衆を哀れに思う気持ちも伝わってきている。

 神という巨大な存在だから、人間一人一人を大切にする気などない。

 だが同時に、ずっと自分を祀ってくれていた氏子衆に対する愛情も感じられる。

 ここは押しの一手で氏子衆を助ける承認を得るべきだと思う。


「心にもない事を申されますな、女神様。

 神々の御役目でこの世界を見なければいけないのは分かっておるます。

 ですがそれ以上に氏子衆を心配しておられる事、私は存じております。

 神々の御役目を蔑ろにできない事は、重々承知しております。

 ですからまずはこの村の様子をよく見て、それを報告したしましょう。

 大雑把に見て歩くよりも、その方が神々の御役目にかなう事でしょう」


 最初は少し機嫌を悪くしていた石姫皇女だったが、徐々に俺の言い分にも聞くべきことがあると思いだしてくれたようだ。

 特に一つの村に腰を据えて周囲を丁寧に見て歩くという点には、結構興味を惹かれたようだし、氏子衆を見捨てたくないという気持ちもあるのだ。

 だからこそ俺の言い分を認めてくれたのだと思う。


「しかたないのう、だったら私にも食べる物を寄こすのだ。

 いつも祭りの時に供えるようなありきたりの神饌ではなく、甘味を寄こすのだ。

 羊羹やおはぎはお供えされる事もあるが、生洋菓子がお供えされる事は滅多にないから、生洋菓子をお供えせよ。

 特にお供えされないのが生ケーキとアイスクリームケーキだ。

 今回は広志の言い分を聞いてやるのだ、生ケーキとアイスクリームケーキをお供えするのだ、分かったな」


 俺は腰が砕けてその場に座り込みそうになってしまった。

 まるっきりラノベやアニメに出てくる残念女神そのものだ。

 あきれ返っても何も言えなくなるが、異世界の氏子衆を助けらえるのなら文句はない、ないが、問題は俺が貧乏だという事だ。

 なんだかんだと言って誤魔化して、宝くじを当選させてくれない女神だ。

 金の調達は自分でやらなければいけないだろう。

 どうすれば金を調達して異世界の氏子衆を助けることができるかだが……

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