第2話:極貧の異世界氏子

「おお、おお、おお、我らの願いを聞き届けてくださり感謝いたします、女神様」


 俺は石姫皇女の提案を受け入れて、異世界に転移させてもらった。

 石長比売の神通力、不老長生の力で十八歳の若さを取り戻す事ができた。

 他にも多くの神々の力を貸し与えられたが、全ては石姫皇女を俺に護らせるためのモノで、俺や目の前にいる異世界人のためではない。

 氏子の俺達は神のために働くモノで、神と対等の立場で話せるモノではない。

 そんな事は最初から分かっていたが、それでも異世界の氏子達の姿は衝撃的に貧しかった。


「ありがたや、ありがたや、ありがたや」


 全然全くありがたくはないのだよ、氏子の衆。

 女神様は自分が異世界で遊び呆けるためにここに来ただけなのだよ

 氏子衆がこれほど飢えて痩せ細っている事など、気にも留めていないのだよ。

 なにを願ってもかなえてくれる事はないのだよ。

 自分の都合で利用するだけなのだよ、氏子衆。


「目の前の者達が邪魔だな、打ち払って旅に出ようではないか」


 本当に身勝手な奴だな、こんな奴の言いなりになるのは嫌だぞ。

 天罰を落とされることになろうと、絶対に言いなりにはなれない。

 だが表立って喧嘩を売るようなことはできない。

 神相手に心の内を隠せずに全て読み取られていたとしてもだ!


「同じ石姫皇女の氏子を打ち払う事なんてできません。

 まして石姫皇女に祈り願ってやっと降臨してもらえたと思っている相手にです。

 ここは願いをかなえてやるべきだと思います」


「しかたがないの、新たに配祀神となった広志がそう言うのならかなえてやるがいい、私はここで待っていてやる」


「ええ、と、俺はただの人間に過ぎないのですか……」


「何を言っている、他の配祀神から力を分けてもらっているから、ほぼすべての能力が使えるようになっているぞよ。

 なにもできない私より、広志の方がこの者達を助ける事ができるわ。

 さっさと助けてやって、旅に行けるようにしなさい」


 しかたない、見捨てる事などできないから、俺が助けるしかない。

 この神域には氏子衆は入ってこられないようだから、俺が出ていって事情と願いを聞くしかないな。


「ああ、氏子衆、よく聞いてくれ、私は女神様の配祀神だ。

 氏子衆が何か願いがあるというのは神の国にも伝わったが、正確な願いまでは聞き取れなかったから、私が改めて聞くことになった。

 この姿をとっている今なら、氏子衆の願いを正確に聞き取る事ができる。

 さあ、今一度願いを聞かせてくれ」


「おお、おお、おお、配祀神様がわざわざ願いを聞きに降臨して下さるなど、感謝に耐えません、ありがとうございます。

 我らの願いはただ一つでございます、どうかこの国の戦いを止めてください。

 このままでは民が死に絶えてしまいます。

 このように、女神様を祀る者達も喰うや喰わずの状態で、何時倒れるか分かりません、どうか戦を終わらせてください」

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