宝くじ当選を願って氏神様にお百度参りしていたら、異世界に行き来できるようになったので、交易してみた。
克全
第1話:お百度参りから異世界に
金が欲しかった、働かずにアニメ鑑賞と読書だけをして一生を終えたかった。
人間の愚かさや汚さを眼にするのが嫌で、誰とも接触したくなかった。
食べていくため、見栄と体裁のために仕方なく働いた。
働くのが嫌で嫌で、バクチと宝くじに走った。
だが日頃の行いが悪いせいか、バクチには勝てず宝くじもかすりもしなかった。
嫌々働いて貯めた金を、両親や弟に無心される苦しみで心のバランスを崩した。
宝くじに当選するように、氏神神社で丑の刻にお百度参りをして、ギリギリ正気を保っていた心算だったのだが……
「ちょっと貴男、もう二百回を超えているわよ、もう明日にしなさい」
俺の気がふれたのか、本殿の方から声がする。
家に帰って、また金をせびりに来た弟と顔をあわせてしまうかもしれない、苦しみと恐怖から逃れるために、今日三度目のお百度を始めてしまっていた。
それを指摘する人間がこんな深夜に本殿にいるはずがない……
「貴男が思っている通り私は人間ではなく、この神社の主祭神、石姫皇女よ。
私には何の力もないけれど、力を貸してくれる配祀神に石長比売と熊野権現がいてくれるから、たいていの願いはかなえてあげられれるわ。
貴男の家は長年氏子としてここを支えてくれているし、今日目に留まったのも縁だから、願いをかなえてあげるわ。
貴男の願いは何なの、心の中に思い浮かべてみなさい」
そんな事を急に言われても、働きたくない、誰とも会いたくない、逃げたい、趣味三昧の生活がしたい、などと願いがまとまらない。
そんな願いを全てかなえてもらえるわけがないのは、自分が一番分かっている。
小説やアニメの世界のように、異世界に転生したり転移したりできる訳がない。
「やれるわよ、貴男が本当に願うのなら、私が治める異世界に行けるようにしてあげるわ、その代わり私もその旅に連れて行って。
最近の氏子は私の声が聞こえない者ばかりで、こうして氏子と話すのは四百年ぶりなの、ずっと退屈していたの。
どう、私を日本と異世界で愉しませてくれると約束するのなら、日本と異世界を飽きるまで行き来させてあげるわ。
今貴男が思い浮かべているような、日本と異世界を行き来して行う商売も、異世界で農園や牧場を始める事もできるわよ」
『氏神神社』
「主祭神」
石姫皇女:宣化天皇の皇女、欽明天皇の皇后
「配祀神」
石長比売:不老長生の神
熊野権現:熊野三山に祀られる神々
:伊邪那美尊・熊野牟須美大神・事解之男神・伊邪那岐大神・速玉之男神
:素戔嗚尊・家津美御子大神・天照大神・天忍穂耳命・瓊々杵尊命
:彦火々出見尊・鸕鶿草葺不合命・軻遇突智命・埴山姫命・彌都波能賣命
:稚産霊命
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