第26話 異界での死闘2
「馬鹿な・・・、なぜ、私の位置が・・・」
「空間転移といった瞬間移動の類は、遠くへの移動とか相手の攻撃を躱したり、距離を取る為に使う分には便利だが、攻撃を仕掛ける際には注意が必要になってくるんだよ。」
瞬間移動と言っても、その移動場所に姿を見せた瞬間に空気の流れがどうしても変わる。それを瞬時に捉えられる相手にはむしろ、ここに出現しますよ、と言っているようなものなので、逆に後の先、つまりカウンターをもらってしまう危険性があるのだ。
「さて、ここまでか?」
「馬鹿を言うな!!」
再び距離を詰めて肉弾戦に持ち込む魔威。しかし、やはり当たらない。移動速度も攻撃の速度も自分の方が上なのに当たらない。それに対し、ヴィステの左右のジャブがことごとく魔威の顔面を捉える。頭にきた魔威が力んだ拳を繰り出すと、即座にヴィステのカウンターが彼女の顔面に襲い掛かり、そこから怒涛の連打が始まってしまう。それでも堪えて攻撃に転じる魔威。
“それならば!!”
魔威は右手の爪を鋭く尖らせてヴィステに突き出した、と見せかけて、肘から先だけ空間転移をもってヴィステの頭部の後ろに移動させ、勢いを殺さずそのまま突き出した。
“ガシ!!”
しかし、ヴィステは瞬時に体を横に少し移動させてそれを躱しつつ、左手で力強く掴んでしまうと、愕然として無防備となっている魔威の上半身と顔面に怒涛のパンチを叩き込んだ。右ボディ、右ストレート、右アッパーと、腕を掴まれているので吹っ飛ばされないのでずっと殴られ続ける。そして、ヴィステは掴んだ腕を離し、よろけて後退した魔威の右側頭部に左ジャンプ蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした。遠くに飛ばされて熱泥に落とされる。
“バシャン!!”
直ぐに熱泥から飛び出して空中で止まった魔威だが、肉体こそ修復しているものの、精神的にダメージを負って肩で息をしている。部分的な空間転移をしても通用しない。まともに肉弾戦で挑んだところで勝てない。そんな焦りを隠し切れない彼女をじっと見上げるヴィステ。
「どうした?もう降参か?事務所の家賃滞納分を代わりに払ってくれるってんなら、半殺し程度で勘弁してやらんでもないぞ?」
「ふざけるな!!」
――デイサービスタイム!!――
魔威がそう強く念じつつ、両手を広げて全身から邪気を放出させて瞬時に空間全体を覆うと、彼女以外の空間全体の時間が停止した、が、次の瞬間には、ヴィステの右ストレートが彼女の胸にめり込んでいた。
――ドッゴン・・・!!!――
その強烈な衝撃に魔威の体が大きく吹っ飛ばされ、もの凄い勢いで壁に叩きつけられた。大きな衝撃音と共に彼女の体がめり込み、周囲の時間が再始動する。その直後に、魔威は大きく吐血した。オイルと化した紫色の血がボタボタと下の壁に垂れ落ちる。時間を止めたはずなのに、なぜ攻撃をされてしまったのか。肉体が修復しつつも愕然としている彼女を床に着地したヴィステがじっと見上げる。
「自分の力で時間を止めたのは正解だったな。システムを利用して止めてたら、私の拳はお前の胸を貫いて、コアを粉々に破壊していた。」
「馬鹿な・・・、私の力では、お前の動きを止める事は出来ないと言うのか。」
「いや、ちゃんと止まったぞ?一瞬だけな。」
「一瞬だけ、だと・・・?」
「本来、お前と私の気の圧の差なら2,3秒は止められる。ただ、その気を扱う技術力の差で無力化しただけだ。」
ヴィステは魔威に指摘をする。世界システムを利用して時間を止めるのなら、瞬時に、労せずに時間を止められるが、自らの力をもって止める場合は、空間全体に自身のエネルギーを充満させる必要がある。そして、圧力を掛けるようにして素粒子レベルで動きの流れ、つまり、電子の流れを完全に止めるのだが、それをこなすには相応の集中力と気を扱う技術力が必要となる。その集中力と技術力の差でヴィステの体に関しては魔威の能力が無力化してしまったのだ。
「それでも一瞬だけ私の動きを止められたのは、オリジンの優しさ、お前に与えた一瞬のサービスタイムってところだな。その一瞬を有効活用できなかったお前が悪い。」
ヴィステの言葉に何も言い返せない魔威。彼女とて、最初は世界システムを利用して時間を止める事を考えた。だが、ヴィステの能力制限を考えると、それをやってしまえば、ヴィステの能力が魔威ではなく神を基準にして大きく上昇し、手痛い反撃を喰らう恐れもあったから出来なかった。むしろ、命拾いをしたとすら思っている。
「お前の能力や技術は、総じて練度が未熟なんだよ。だから、時間を止める際にほぼ無防備になっちまう。そんなものは、似た能力を持つ相手との実戦では使えない。」
神々レベルの者同士の戦いにおいては、時空間操作能力はあまり意味を成さない。それは、お互いの能力が相殺し合って効果があまりないからである。
「もう打つ手なし、ってとこか?」
「まだだ!!こうなったら、この空間の力の全てをもって、ヴィステ!貴様を葬る!!」
魔威が胸の前で手を合わせて邪気を集中させると、空間の壁が蠢いて大きく歪み始めた。その異様な雰囲気に警戒するヴィステ。
――怨泥回転陣!!――
魔威がそう叫ぶと、闘技場と熱泥が地面に飲み込まれるようにして沈んでいき、咄嗟にジャンプしてそのまま空中で制止するヴィステ。その直後に空間のあちこちに大きめの岩が出現し、更に、周囲の壁が何層にも分かれ、それぞれが右回転、左回転、上回転、下回転とグルグル回転し始めた。
“これは・・・”
閻冥界の力を使って発動した特殊な空間術だ。ヴィステの周りを岩が、壁がグルグルと回り続ける。常人ならばここにいるだけで目が回ってしまいそうな空間と化した。そして、ヴィステが警戒をしながら身構えていると、壁のいたるところから黒く太い針が彼女目掛けてもの凄い速度で飛んできた。だが、ヴィステは特に動じず、それらを飛行移動で落ち着いて躱していく。そんな彼女を魔威は自信ありげに見つめる。
「これだけではないぞ!!」
――影鬼!!――
そう叫ぶと、空間全体が薄暗くなって、魔威の体が左右に分裂して5体となった。これは汰魔鬼が持つ異常繁殖をした動植物を効率良く間引く為の能力で、この空間に流れてくるエネルギーによって魔威も使えるようになっているのだ。本来は短時間しか発動していられないのだが、ここではほぼ無制限に発動していられる。
「さっきまでのはただの準備運動でしかない。ここからが本番だ!!」
「そうか?てっきり、準備投球で燃え尽きるタイプかと思ったよ。」
「へらず口を!八つ裂きにしてくれる!!」
そう叫んで再び霊気を全力で放出させると、左右にいた4体の魔威は超音速でヴィステに詰め寄り、怒涛の連打を繰り出し始めた。その凄まじい猛攻に対し、ヴィステは空中移動しながら4体の分断を試みる。移動速度が分裂前と比べて明らかに落ちていることから、恐らく、本来の影鬼と同じく、分裂した事で身体能力が大きく落ちているのだろう。そう推測して攻撃を躱し続けるヴィステ。
“ガッ!!”
しかし、移動した先に岩があって、それに背中をついて退路を塞がれてしまい、その直後に4体の猛攻が襲い掛かる。防戦一方となり、その全ての攻撃を捌き切れずにヴィステは反撃に転じた。彼女の拳が魔威の1体の顔面を捉える。
“バシュン・・・”
ヴィステが殴った瞬間に魔威の全身は砕け散った。そして、もう1体を攻撃しようとした時だった。頭上から殺気を感じたヴィステは咄嗟に後方へと飛び退いた。なんと、頭上から別の1体が姿を見せて降りてくるようにして爪を突き立ててきたのだ。
―――ザン!!――
辛うじて躱したヴィステだったが、胸の中心部分が切り刻まれて爪の跡が残った。その様子に奥にいる魔威がしたり顔を見せる。しかし、その直後にヴィステの体は修復されてしまった。
「ぬぅ・・・!!貴様も再生能力を!!」
「私の体は形状記憶能力を持つ液体金属で構成されている。この程度の攻撃じゃ殺れないぞ?」
「ぬかせ!!」
激怒した魔威は再び4体を使って連続攻撃を仕掛けてきた。2体がヴィステと接近戦を行い、もう2体が距離を取りつつ邪気玉を投げ飛ばして援護射撃を行う。
“ドガガガーン!!”
ヴィステが背後に浮いている邪魔な岩を破壊すべく、勢いよく飛んできた邪気玉を避けて衝突させて粉々に砕くも、即座に再生してしまう。
“本体にダメージを与えない事には何も変わらないか!!”
ヴィステは闘気で盾を作って自身の周囲に漂わせ、4体の攻撃を防ぎつつ左腕をバルカン形態にして、4体の隙をついて奥にいる本体らしき魔威に向けて発砲した。
“ドドドドドドドドド・・・!!!”
本体を捉えた。そうヴィステが思った瞬間、奥にいる魔威が銃撃を受けて全身が粉々に砕け散ったものの、その1秒後には別の場所にもう1体の魔威が姿を見せた。どうなっているのか。ヴィステが戸惑いを見せた一瞬、その一瞬を逃さず、4体による怒涛の攻撃が彼女の全身に叩きつけられた。
“ドガガガガン!!!”
その衝撃で後方へ大きく吹っ飛ばされるヴィステ。そして、背後にあった岩に激突し、尚も4体が追撃をせんとばかりに距離を詰めてきた。しかし、それを頭上に飛んで回避するヴィステ。奥に出現した魔威をじっと見つめる。
“どういう事だ!?確かに、さっき撃ったのは本体だった!なのに、なぜだ?”
再び距離を詰めてきた4体の猛攻の隙をついて銃撃をするも結果は同じ。粉々に砕けては別の場所に姿を見せるのみ。ならば、目の前にいる4体の内のどちらかが本体なのだろうか。最初の時点で1体を砕いたが、残りの3体のどれかが正解だったという事か。高速飛行移動をしながら打開策を考えるヴィステ。そんな彼女を魔威が不敵な笑みで見つめる。
「いつまでも逃げ続けられると思うなよ!」
魔威がそう言うと、前後左右上下から巨大な泥の蛇が飛び出してきた。全長30メートル近くある3対6つの巨大な蝙蝠の様な翼を持つ巨大で太い蛇だ。大きな口には鋭い歯が生えている。そして、ヴィステに狙いを定め、その大きな口から強力な酸を含んだ波動を次々と撃ち出してきた。
“ゴアァァ・・・!!!”
次々と迫りくる邪悪な波動。それらを次々と躱していくヴィステだったが、隙を伺っていた魔威の分身体の強烈な蹴りを腕で防いだものの、その勢いで後方へと吹っ飛ばされ、その直後に、2体の蛇の波動砲が襲い掛かってきた。流石に躱しきれずにまともに食らってしまう。
“ジュ~・・・”
闘気で威力を減らせたものの、強酸の影響で機体が溶けだした。だが、ヴィステはそれを気合で吹き飛ばすと同時に損傷した機体を修復させた。そして、その直後に、1体の蛇が大きな口を開けて噛みついてきたが、それを高速で上昇して躱しつつ、頭上からサイコバルカンで撃ちまくって粉々に砕いた。これで残りは5体か、と思いきや、やはり、すぐに壁から新しい1体が飛び出してきた。
“流石にキツイな・・・”
5体の魔威だけじゃなく、6体の巨大蛇を相手にしなくてはならず、尚且つ、倒しても、それらは何度も復活してしまう。やはり、本体を捉えない事にはどうしようもない。そう考えたヴィステは4体の猛攻をブロックしつつ、蛇の波動砲や噛みつき攻撃を躱し、攻勢に転じて分身体の1体を砕き、また1体を、更に1体を、そして、残り1体の顔面を左ハイキックで捉えた。
“バシュン・・・”
だが、この1体も砕け散っただけで、その直後に、背後に復活した3体が姿を見せて襲い掛かった。咄嗟に振り向いて3体の猛攻を凌ぐも、更に、遠くいるもう1体が右腕を大砲形態にして渾身のエネルギーを込めた波動砲をヴィステの背後から撃ち放ってきた。
――デイドリームバスター!!――
奥の1体はずっと溜めて隙を伺っていたのだ。そして、ヴィステは咄嗟に振り返ってそれを避けようとしたが、復活してきたもう1体と合わせた4体に背後から両腕と両足をそれぞれ掴まれて動きを封じられてしまい、一緒に直撃してしまった。
“ズオォォォォ・・・!!!”
空間が大きく歪むほどの波動がヴィステと4体の魔威を包み込み、4体は直ぐに消滅し、ダメージを抑えるべく闘気で全身を覆っていたヴィステも大きく吹っ飛ばされてしまった。その様子に、魔威は自信の笑みを浮かべている。しかし、ヴィステは生きていた。全身のあちこちに大きな亀裂が生じているが、何とか耐えたようだ。
「しぶとい奴だ。これを喰らってまだ生きているとは。」
「生憎・・・、タフさには自信があるんでね。」
そう言うと、ヴィステは全身を修復させた。だが、それと同時に胸のランプの光は淡い緑色から黄色に変わった。大きなダメージを負っているのは明らかだ。その様子を見て、魔威は同じ波動砲をあと一撃入れれば自分の勝ちだと確信する。霊気圧そのものは彼女の方が上だから当然の判断だ。
「私の勝利の瞬間が近づいてきたようだな。」
「それは、どうかな?」
「愚か者が。更に追い詰めてくれる!!」
そう言うと、魔威は邪気を集中させ、空間の壁から強力な引力を発生させ始めた。これは、魔威以外の者が引き寄せられるタイプのものだ。更に、大蛇の背中に泥に猫が出現した。
「さぁ、どこまで持つかな?」
再び姿を見せた4体の魔威が先程までと同じ様にして攻撃を仕掛けて始め、様子を伺っていた蛇達も攻撃を再開し、奥にいる1体が再び邪気を溜め始めた。そして、そうはさせまいとヴィステは奥にいる1体を銃撃して妨害する。しかし、そのすぐ後に復活されてしまう。これでは意味が無い。このまま同じことを繰り返せば、それこそジリ貧だ。先にこっちのエネルギーが尽きてしまう。逆に焦りを感じ始めるヴィステ。岩が邪魔するだけじゃなく、前後左右上下から不規則に発生する強力な引力のせいで思うように動けず、次々と4体の猛攻と受けてしまい、更に、蛇の背中に乗っていた猫が次々とヴィステに飛びかかってきた。
――こいつは、マズイ!!――
咄嗟の判断で、闘気をもって自身の周囲を旋回する6つの盾を作り出すヴィステ。そして、その直後に、それらの盾に猫達が次々としがみついた。すると、即座に自爆をし始めた。
“ドガガガガガガーン・・・!!”
大きな爆発音と衝撃波が周囲に広がった。その威力でヴィステの盾が粉々に砕け散ってしまい、機体にもあちこちに亀裂が生じている。だが、まだ猛威は終わらなかった。次の瞬間には、大きく口を開けて突っ込んできた蛇に思い切り噛みつかれてしまった。
“バキバキバキ・・・!!”
鋭い刃がヴィステの闘気を貫き、その凄まじい圧力に機体のあちこちに亀裂が生じていく。だが、ヴィステは闘気を全身に凝縮させ、蛇の拘束を振り解くかのように、気合の叫びと共にそれを一気に放出させると蛇は粉々に砕け散ってしまった。しかし、直ぐにおかわりが出現する。ヴィステも再び爆弾猫対策として盾を作る。
“何か、何か秘密があるはずだ!!”
もしかしたら、この空間のどこかに本体が身を潜めているのか。しかし、そうは思えない。彼女から感じる特有の邪気は、確かに5体からしか感じ取れない。本体は必ずこの5体の中にいるはず。そう考えたヴィステは、4体と6匹の猛攻を防ぎつつ、5体の邪気の動きにも意識を向け始めた。すると、僅かにだが、邪気の力の流れに差があるのが分かった。
“もしかしたら!!”
ヴィステは、最も強い邪気の流れを持つ奥にいる1体に向けて再び銃撃を繰り出した。すると、その1体が崩れ去る直前に、近くにいる右の1体の、その奥にいる1体の邪気の流れが加速した事を捉えた。
“そう言う事か!!”
ヴィステはようやく魔威が使う影鬼の秘密が見えてきた。恐らく、この術は本来のものとは違って、術者の意思一つで本体と分身体を入れ替えてしまえる効果があり、だから、それぞれを攻撃しても無駄だったのだ。
“基本的に、あの奥にいるのが本体で、狙われた時点で別の奴と入れ替わっているんだ!!”
からくりは分かった。だが、この状況を打破するには大きな問題があった。それは、この空間の力だ。仮にヴィステが全身から闘気を広範囲に放出させて5体をまとめて攻撃しても、その空間の力によって相殺されて大したダメージを負わせられない。閻冥界からのエネルギーを絶たない限り意味がない。だからといって、今の制限されたヴィステの能力では空間そのものの力を絶つ事は出来ない。その前にエネルギーが尽きてしまうのは必至。
“それに、邪気の動きを捉えてからじゃ遅すぎる!!”
魔威の本体から分身体への移動は空間転移能力によるものなのだが、接近戦に持ち込んできている分身体の猛攻を捌き、尚且つ、蛇の波動砲を躱しつつ本体の動きを捉えるのは至難の業だ。仮に捉えても、そいつを狙おうとした直後には別の1体へと移動されてしまう。5体を次々に銃撃しても躱されてしまう恐れもあるし、1秒後に復活してしまう事を考えると、勘で狙っても確率的に厳しいものがある。狙うなら移動した直後だ。
“この技は、汰魔鬼のものと本質的に変わらないはず!!”
空中移動していたヴィステは手を胸の前で合わせ、全身から七色のホログラムのような光を放った。すると、光は空間全体にまで広がり、その眩しさに5体の魔威と6匹の大蛇、6匹の猫は少し目を細めつつ警戒をして身構える。そして、光が収まったのだが、魔威はその周囲に広がっている光景に驚いてしまった。
「なんだ、これは・・・?」
なんと、周囲に液状化した七色のホログラムのような小さな粒がいくつも漂っているのだ。それは空間全体に及んでいるだけじゃなく、魔威達や大蛇達の体にも付着している。ただ、特に体への悪影響はなさそうに思える。
「ふざけた真似を。こんなもの!!」
5体の魔威は気合を入れて邪気を放出すると、その勢いで付着した液体を吹き飛ばしてしまった。大蛇達も同様にして吹き飛ばした。猫達はどうせ自爆するから、と、そのままだ。再び自信に満ちた表情を見せる魔威。無駄な悪あがきをしてくるあたり、もはや自分の勝利も時間の問題だろう。そう思って再び4体と12匹を使ってヴィステを襲撃させる。すると、ヴィステは先程までと同じ様に奥の本体に向けて銃口を向けてきた。
“ドドドドドドドドド・・・!!!”
そして、同じ様にして銃弾が発射され、その直後に、魔威は“無駄な事を!!”と嘲笑いながらヴィステの左前方にいる1体の奥にいる1体と入れ替えた。その瞬間、意識がそこに移ったその瞬間だった。魔威の腹にヴィステの強烈な右ボディがめり込んだ。
“ズッドン!!”
「うぐぉ!!」
そのあまりにも強い衝撃に吐血する魔威。術のからくりがバレたのか。いや、たまたまだ。そう思った魔威は腹を貫かれる前に、別の1体へと転移したが、その直後にヴィステの強烈な左アッパーが顎に叩き込まれた。あまりの衝撃に意識が飛びそうだ。まさかバレたのか。そう思った瞬間、ヴィステの追撃が来る前に、復活した奥の1体に視線を向けて移動する、と見せかけてヴィステの背後に復活した1体に意識を移した。
“ドガン!!”
だが、その直後にヴィステの強烈な回し蹴りをくらってしまった。更に、大きく仰け反ったところをヴィステの怒涛の連打が魔威の全身に叩き込まれ、最後に強烈な右アッパーをくらって大きく後方へと吹っ飛ばされてしまった。仰向けのまま宙に浮かぶ岩に大きな音と共に叩きつけられ、残り2体の分身体が消滅し、6匹の大蛇と猫達も崩落するようにして消滅した。
「ば、馬鹿な・・・、なぜ、バレたのだ・・・」
ヨロヨロと立ち上がるも、あまりにも大きなダメージを受けたせいで思わず岩の地面に片膝をついてしまう。呼吸を大きく乱し、ポタポタと汗が落ちていく。そんな魔威を全身に突き刺さった針を気合で吹き飛ばして機体を修復させつつ見据える。
「足元を見てみろ。それが答えだ。」
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