第2話:弟クリスティアンのお願い

 弟のクリスティアンがオズオズと話しかけてきました。

 前世では姉二人の三姉妹末っ子でしたから、今生で弟ができたのがとても新鮮で、ショタではないですがとても可愛がっています。

 クリスティアンのお願いなら何でもかなえてあげたいと思ってしまいます。

 今回も何か私の意に沿わない御願なのでしょう、とても言い難そうです。

 そんなに気にしなくてもいいのですよ、クリスティアン。

 貴男のためなら少々の無理無体なら聞いてあげます。


「何でも言ってごらんなさい、クリスティアン。

 父の願いは聞けなくても、クリスティアンのお願いならかなえてあげます」


「では姉上、私はこの国に残りたいです、他国に亡命するのは不安なのです。

 父上だけをこの国に残して逃げるというのは止めてください」


 先程父上を脅かした言葉を信じてしまったのですね。

 これは直ぐにクリスティアンの誤解を解いておいた方がいいですね。

 でも同時に父を脅かしたままにしておかないと、また気の弱さで大きな損を引き受けてしまうかもしれません。


「心配する事はありませんよ、亡命を考えている国は四つもあります。

 その全ての国で爵位と領地を購入してありますから、安心しなさい。

 どこに行こうと味方してくれる貴族は確保しています。

 でもクリスティアンがどうしてもこの国がいいと言うのなら、もうしばらくこの国にいますから、安心してください。

 ただ何時でもに亡命できるように、身の回りの品を纏めていなさい」


「ラニージャ、お願いだ、その時は私も連れて行ってくれ。

 この国に一人残されたら生きていけない。

 頑張るから、自分では話せないけれど、手紙を奏上するくらいはできるから。

 ラニージャが絶縁状を書いてくれたら、それをちゃんと届けるから。

 だからこの国から逃げだす時は一緒に連れて行ってくれ、ラニージャ」


 仕方ありませんね、見捨てないであげましょう。

 でも口約束すると途端に安心して根性なしになりますから、約束はしません。

 ですがさっきまで考えていたような、完全に見捨てるのは取りやめます。

 やるべき事をやってくれたなら、亡命する時は連れて行ってあげます。


「分かりました、婚約解消届を書きますから、それを国王陛下に奏上してください。

 ちゃんとやり届けてくれたら、亡命する時には連れて行ってあげます。

 ですが怖気づいて奏上しなかったら、帰って来た時には誰もいないですよ。

 チャーチル公爵家の家臣はもちろん、王家に仕える侍従や侍女の中にも、私に味方してくれる者はいるのですよ。

 その者から父上が帰ってくる前に情報が届きますからね」


 しっかりと脅かして、キリキリと働いてもらいます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る