第8話

朝のやり取りを終え、制服に着替えてから家を出た。すると今日も家の前で小春が待っており


「おはよう!雫くん。あっ間違えた御主人様!」


「そこは普通に雫くんで正解だから安心して。むしろ御主人様が間違いだから。おはよ、小春」


このやり取りも慣れてきた。ま、なれたら良くはないんだけども。そんなやり取りをしたあと俺達は並んで学校に向かった。いつも一緒に行ってる乃愛を待とうとしたが


「大丈夫。先に行ってていいよ!わたしちょっと遅れるから」と言われたので今日は小春と二人だ。


最近は家に来たりとかしたから平気だと思っていたがいざ二人になるとなんだ普通に緊張してきた。それもそうか。言動こそアンポンタンだが見た目は120点の子だ。今も嬉しそうに隣を歩いている。くそ!可愛いな。俺が見てるのに気づいたのか


「うん?どうしたの?雫くん」と小首を傾げてみせた小春。これはわざとかな?いや、天然だな。


「いや、なんだか最近一緒にいる事が多かったけど妹とか姉がいたから、改めて二人になるとその緊張してきた」


かっこ悪いが思ったことをそのまま小春に話してみた。するとくすくすと笑いながら


「たしかにねーでも私は緊張よりも幸せが勝つかな〜少しでも一緒に居られて」


そんな恥ずかしげもなくよく言えるね……………あっ、やっぱり恥ずかしかったのね。顔がみるみる赤くなっておられる。こんなにもストレートに好意を向けられているのになぜ未だに恋人じゃないんだ!あ〜そこだけが悔やまれる。


まじで小春の周りの友達ふざけんなと言いたい!そんなすぐ別れんなや!だから小春が恋人関係に幻滅してわけわからんことをいったんだ。それがなけりゃ今頃とっくに付き合ってイチャイチャできたのに!


鬱憤を心の中で爆発させてから学校に着くまで小春とお話をしながら歩いた。小春の話の8割いやもはや10割が俺の事でそれを俺に聞かせるというなんだかこっぱずかしいやり取りをしているうちに学校に着いた。同じクラスなのでわざわざ別々に行くのもめんどくさいのでそのまま一緒に教室に入る。あ、ヤベ!忘れてた。


入るやいなや俺を射殺す勢いで睨みつける男子諸君。君たち将来殺し屋で食っていけるよ。だって俺もう死にそうだもの。俺は内心、メンタルを持ってかれたがそれを隠し平然と自分の席に座った。


「はぁ〜〜あ」席に座ると一気に脱力する。するとくすくすと笑いながら俺の席に近寄ってきた俺の幼馴染、美琴が


「朝から大変だね〜まー仕方ないね。相手はあの三森さんだもん。頑張れ雫」


と笑顔で慰めてくれる男の娘。こいつが女なら即落だったなと美琴の顔をみて思いそっとほっぺをつついた。美琴は「う〜?なんだなんだ?」と俺にほっぺを突かれながら楽しそうにじゃれてくる。そんな俺達をクラスの一部の女子たちからは大変好まれている。知りません!僕は何も知りません。


そんな視線とは異質な視線を放つ子が一人。もちろん小春だ。あちゃーやばい顔してますよ?美少女が剥がれそう。俺の視線が気になったのか美琴も小春の方をみて顔を引きつらせそっと俺から手を離した。さり際に


「……なんか、ごめんねって謝っといて。」と言って自分の席に戻る幼馴染。美琴が去ったことによって小春は美少女スマイルを俺に向けて机の下で小さく手を振ってきた。なんか怖いよ?


小春はもしかしたらだいぶ束縛がある系の方なのかしら。あの笑顔がとても魅力的なのになぜだか素直に可愛いと思えない俺。乃愛といい柚希といい小春といい俺の周りには普通の女の子はいないのかしら。俺は小春に返すように手を小さく振りながらそんなことを思った。

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