第7話
朝起きていつものように俺の布団に潜っている柚希を引きずり出そうと隣をみると、あれ?いない。うそ?こんなこと初めてだ。珍しい事もあるもんだと一階におり洗面所で顔を洗いリビングにいくと、これまた珍しい!すでに柚希がリビングに来ておりそれだけでなく朝食の用意もしているではないか。俺は少し感動し
「……柚希、熱か?」
ま、感動なんてしないわな。それよりもだ。こんなこと熱でもひいて頭が沸騰してないとありえないことだ。そんな意味を込めて俺がいうと柚希はまるで心外だと言わんばかりに頬を膨らませて
「私だってやるときはやるわ!今日は乃愛より早かったもんね!」
そういえば、乃愛はまだ寝てるのか?リビングにいなかった。いままでそんなことあり得なかった。あんな出来た妹。パーフェクトウーマンこと乃愛が寝坊?あっ!乃愛が熱を引いたんだ。俺は一人納得し乃愛の様子を見に二階に上がろうとすると乃愛がちょうど階段から降りてきて
「おはよーおにぃ。ごめんね?寝坊しちゃった」
あれ?普通だ。熱は?俺は自分のおでこと乃愛のおでこをひっつけて確認した。するとどんどん乃愛の体温が上がっていき顔も茹でだこ状態だった。やっぱりか
「乃愛、お前熱あるぞ。無理しなくていいぞ。朝は俺が作るから」
たまにはお兄ちゃんらしいところでも見せるか。とキッチンに向かおうとする俺の袖を乃愛がつかみ
「……ちがうから!熱じゃないから。いきなり顔近づけるのは……反則」
後半声が聞こえなくなるラノベのお約束があったがどうやら熱ではないらしい。ならなんでだ?なぜ柚希が朝早く起き朝食の用意を、乃愛が寝坊をしてる?ま、まさか
「……パラレルワールドか?ここは」
それなら納得がいく。そんな俺を冷めた目で見てくる二人。WHAT?どしたの二人とも。すると乃愛が
「わたしは昨日の事をいろいろ考えて今後の作戦を立ててたらいつの間にか朝方になってたから寝坊しただけなの。」
「わたしも昨日いろいろ考えて私も変わらなきゃって思ったから雫の部屋にも行かず朝食の用意をしたの!」
昨日のこと?あ〜小春の事か。てか乃愛?作戦ってなに?怖いわおにぃは。柚希、お前はもっと早く気づけ、バカちんが!
「なんだ、そういうことか。それは悪かったな柚希。乃愛はいつもありがとな」といって乃愛の頭を撫でてから柚希がどんな料理を作ってるのか楽しみだったので向かうと
「…………柚希?これ、なに?」
そこにはダークマターが顕現していた。すると柚希は
「初めてにしてはよくできてるとおもうよ?さぁ!朝ごはんにしよ?」
よくできてる?どこが?これが?俺は助けを求めて我がパーフェクトウーマン乃愛に目線を送った。するとやれやれといった具合にキッチンに向かいテキパキと朝食を完成させた。
俺はもう乃愛には頭が下がりません。いただきます!
「うん!美味しいわ〜やっぱり乃愛は最高の妹だ」
俺には出来過ぎた妹に改めて感謝をしていると横にいる汚物製造機もとい汚物あ、ごめん柚希は納得がいかないようで
「ねぇ!確かにご飯は失敗したけど私もがんばったんだけど!乃愛ばっかりずるい!私にも感謝してよー」
「柚希、逆に俺はお前のどこに感謝したらいいのか弟におしえてけろ?」
するとイキった顔で
「まずこんな可愛くてきれいな姉がいる事に感謝でしょ?それとナイスバディな姉とか最高に感謝でしょ?あとあとー」
俺は思わず頭痛がしたので頭を抑えて
「柚希、もういいよ。ごめんごめん。俺は本当幸せものです。はい。ありがとうございます」
これ以上は姉が哀れすぎて見てられなかった。こんな姉思いの弟がいて良かったな。乃愛もいたたまれなかったのかそっと朝食のウインナーを分けていた。俺達の気遣いに気づかない柚希は嬉しそうにウインナーを頬張り俺になでてーと言ってくる。幸せな奴だなと一周回って可愛くなったので俺は姉の頭を優しく撫でた。
今日も今日とて代わり映えのない家族の朝の光景であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます