第2話 「冒険の香り」 中編
村長が余計なことを言い始めた。
「村の戦士はみんな強い。ほれ そこを見なされ。ラドンの骨があるじゃろう?
村の若いもんとライトが、こないだ森で ちょちょっと狩ってきたのじゃ。ほっほほ」
王女たちは驚いたようだけど、半信半疑だった。そりゃそうだろう。
共食いをしていて弱ったところを襲ったとか、トラップにうまく引っかかって狩れたとかじゃなくて
森までちょっと出かけて ラドンを狩ってこれるくらい強いですよ。
っといったのだから ウソもいいところだ。
村の人たちは 素直な人が多いけど「強さ」の話になると見栄を張る。
そして なぜかわからないけど、俺もその中に加えられていた。
でも 兵士の中で二人だけは関心をした態度でうなずいている。
自分も1対1でラドンを倒したことがあるといってきた。
「それは、不思議ではない」と、ニヤニヤしながら自慢げに話に乗っかってきた。
兵士の武勇伝はすごい、兵士の話は本当かもしれない。
あの体格だし、力自慢に自らラドンに挑んでいても不思議じゃないぞ。
どうするんだ村長?
ホントに 試合をすることになったら、村の物資を賭けることになるけど、
「王国の兵士は さすがに勇敢じゃ。
さぞ 勇ましい戦いぶりだったのでしょう。勇者ですな。
じゃが そう言えば・・こないだラドンを倒したときは、ライトが一人で倒しておりましたな。
あそこに見えますか?、頭のでかい、、でかいラドンじゃったか。
わしは目が悪くてよく見えないのじゃが・・
ライトが倒したのは、あの一番頭の大きなラドンじゃったかな、ほっほほ
ラドンは村々を襲うので困ったものですじゃ。ほっほほ」
そして、興奮した子供までが飛び出してきて「自分も戦士だ!勝負しろ」と叫んだ。
しかし さすがに それは、無理だろう。
みんなに笑われながら 後ろに引きづりこまれていった。
でも チャンスだぞ。村長!
みんな、気持ちだけはラドンに負けていませんな。
みんな仲間ですな。みたいなノリでいけるだろ。
・・・・
「あの 子供がよろしいかと」
「そうだな。魔道具の実験にはあれがよさそうだ。」
・・・・
「ライトよ、お前一人で十分であろう。こちらの代表は一人じゃ。
そちらの王女さまは何人出されるのじゃ?そちらも一人かのう。ほっほほ」
「いいえ 私たちに、あんな大きなラドンを倒せるものはいないわ。
だから ラドンを倒したことがある、自慢の兵士の二人で、お相手をさせてもらいますわ。
13番目の王女は無理をしないのよ。がははは」
さすが 王女さま。
俺も そっちに付きたかったわ。
そうして試練が始まった。
普段のような立ち姿勢で黒い剣を持っているライトと
対するは金属のプレートを鎧のように身に着けている、ガタイの大きな男の兵士二人だった。
試練が開始されて兵士たちが切りかかろうと 鉄の剣を頭上に持ち上げた。
だが、剣を振り下ろしても、ライトは剣を交わしながら兵士の中に回り込み、
二人は数発殴られると、そのまま倒れて起き上がれなくなった。
圧勝だ。
村人たちは 間違えて弱い兵士が出てきたのかと思ってしまうほどの力さだった。
村の食糧は守られたな。
俺は 兵士たちを起き上がらせると握手をした。
勝負がついてしまえば 清々しっく和解できる。
猫の戦いも、なん十分も威嚇し合って、結局、猫パンチ、一発で決着がついたりする。
そんな感じだった。
でも 同時に広場のほうで、違う事件が起きていた。
さっき 威勢の良かった少年が なぜか倒れていた。
生きてはいるのだが 眠っていて冷たさしか感じられない。
苦しそうな顔をして、何があったのか?
そして 地震か? 地面までもが ゴロゴロと歪みだす!
なぜか、不思議なことが続く、何が起きているのだろう。
「ゴゴゴゴロゴロゴロ!!」
土が盛り上がり、 人型のゴーレムが現れた。
土と石を練り上げたようなゴーレムは 手当たり次第に人や建物を襲い始めた。
「スパイス ショット!!」
母親と子供がゴーレムに襲われそうになった時、アーラルの攻撃がゴーレムの顔面を直撃した。
ゴーレムの顔が爆発して 体が後ろにのけぞった。
アーラルは リングにひし形のランタンのような小瓶を付けた武器を遠隔操作で操って攻撃している。
なんだ あの武器は?
でも 今はみんなを避難させるのが先だろうか。
アーラルの兵士たちも村の人たちも弱いものをかばいながら、なんとか避難できたようだ。
ゴーレムにライトが立ちはだかる。
愛刀のマターソードは切れ味抜群だ。
でも、土や石でできたゴーレムは切ってもすぐに再生してしまう。
ライトが 何度も攻撃しても、ゴーレムは再生されてしまう。
これでは、意味がない。
兵士や村の戦士たちなら、どうだろう?
大勢でかかればあるいは?
でも 兵士はさっきの戦いで、ライトにやられて戦えそうにないし、
大勢で一斉に襲い掛かれば ゴーレムを再生できないくらいに、粉々にできるかもしれない。
でも これは捨て身だ、最後の手段にするべきだろう。
そんなとき アーラルが
「王家に伝わるカカオドリンクよ!騙されたと思って飲んでみて!」
といい。遠隔操作で茶色い小瓶が飛んできた。
蓋を開けて 匂いを嗅ぐと瓶からは甘い香りが沸き上がってくる。
言われるがまま 「カカオドリンク」を一気に飲み干した。
ち っちからが、みなぎってくる。
ライトの体は 光輝いた。
そして マターソードに光を集めるとソードは太陽のように光り輝いた。
「これなら 奇跡が届くはず!!」
「エナジーソード!!」
ゴーレムに剣が届くと、閃光に辺りが包まれて真っ白になった。
・・・・・
「兄ちゃんは どうしてぼくを 子ども扱いするの?ぼくだって兄ちゃんみたいになりたいんだ!!うわぁぁぁん」
目の前に兄が現れた。
「俺が死んでしまったら妹と母さんのことを頼んだぞ。俺が一番頼りにしているのは・・・お前なんだからな」
・・・・・
エナジーソードがゴーレムを貫いたとき、ゴーレムから悲しい音が響いた。
お兄ちゃんのホントの気持ちが弟に届いた。
そしてゴーレムを撃破した!!
・・・・
木陰の奥で誰かが喋った。
「ゴーレムを倒すことが出来るだと!何者なのだ? まあいいさ 悲しみは集まったのだから」
・・・・
ゴーレムを倒すと重症だった子供の顔は少し落ち着きを取り戻したが
眠りから覚めることはなかった・・・。
時間が止まっているように眠っている。
「コーヒーよ」
子供の家族の悲しむ姿を見て 村中の人は泣き出した。
そんなとき 大国のアーラル王女様が 優秀な戦士にのみ与えられるというコーヒーという飲み物の話を始めた。
コーヒーは眠っている戦士の目を覚まし、三日三晩、眠らずに戦地を駆け抜けることが出来る力を授けてくれるのだという。
コーヒーだって??
ついさっきみんなで飲んでいたアレだ。
この世界の植物には多少の魔力があるので
コーヒーと一口に言っても、ただのコーヒーではないのかもしれない。
だけど 俺の入れたコーヒーはみんなで飲んでしまったし
畑のコーヒーが次に実のはずっと先の話だろう・・・。
このままでは 村の子供もどうなるかわからない。
祭壇を使わせてもらうか。この世界の神様に助けてもらうことにしよう。
話の分かる神様だといいけど・・。
「村長様 祭壇を。祭壇を使わせてっください・・」
ライトが村長に祭壇を使わせてほしいとお願いをすると 村の人たちも「祭壇 祭壇」と連呼を始めた。
しかし 村長と偉い人たちは話し合いを始めて長い時間が過ぎた。
そして 渋々と「ライト お前ならいいだろう」と言ったのだった。
ライトは子供を抱きかかえると 祭壇の階段を登ろうと足を進めた。
祭壇には通常は 「豊作」「繁栄」「無病」などが願われる。
でも たいていは 豊作の年は子供があまり生まれなかったりして
全部を同時に叶えることはできなかった。
そして みんなの願いを叶える祭壇で子供一人を助けたいなんて、
そんな私的なお願い事が通ったりするのだろうか?
神の怒りをかったりしないだろうか??
アーラルも部外者ではあるが 神の祭壇を預かる王族としては心配だった。
子供のころにおばばに、なぜ「骨付きお肉をいっぱい食べたい」って願ってはいけないのかと
聞いたことがあった。
そのとき おばばが言っていたのが、
「もし アーラルさまが民のために望みを叶えようと心に誓ったときに、
紅茶を一杯入れてほしいと、自分勝手なお願いをされたら、どう思いますかな?」
何も起こらなければいいのだけれど・・。
ライトは村人たちの歓声に後押しをされて 祈りをささげた。
すると祭壇は光を放ち 祭壇の頂上では子供が宙にプカプカと浮かんだ。
「ビカン!!」フラッシュが辺りを包む。
光が収まってみんなが気が付くと ライトと子供はいつの間にか 祭壇の下の広間に立っていた。
肝心の願いはかなったのだろうか?
村人たちが当たりをキョロキョロとし始めるが、特に変わったところはない。
けど、祭壇の上に半透明の丸い何かの存在が現れいた。
丸くて薄べったい何か? 透明だけど、いびつに歪んで見える何かがいる。
いつ?どこから現れたのだろう? これが神なのだろうか?
そして 神は、みんなの心に直接、語りかけてきた。
「険しき道を進みしものよ。わが力の片りんを受けるがよい」
すると 空の色が赤く紫に染まった。
そして大地は震え始めた。
「まずいわね」
まずいわ! やっぱり 神がお怒りになったのよ。。
「シュー パチン シュー パチン」
アーラルがつぶやくと さらに周辺の空気が圧縮し始めては 中央の祭壇の階段の下に集まった。
そして 祭壇の下に人が現れた。その姿は、怪しい不思議な、不思議なピエロさんだった。
顔の表情からは感情はよい取ることができず、だけど こちらの心はすべて見透かしているような、
そんな、笑みを浮かべていた 。
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